【永久保存版】出張日当(出張旅費規程)の金額設定から税務調査まで

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「出張日当は幾らに設定したら良いですか?」税理士の仕事を始めてから何回聞かれたか分かりません。それに加えて「税理士が教えてくれない出張日当」というタイトルの情報商材の広告が、わたしのSNSにも大量に流れてきます。

心のなかでは、いつも「知らんわ」って思ってますw。なぜなら、この質問の答えは真面目に答えると、凄く長くなるのです。だからと言って、この質問の答えを濁すわけにもいきません。なぜなら、この質問に即答しないと「節税に後ろ向きなダメ税理士」という烙印を押されてしまうからです。

そこで、この質問に対する正しい回答を書き残しておきたいと思います。

Contents

1.社長の出張日当の上限金額

結論から言います。社長の出張日当の上限は2万円でお願いします(丸1日出張する場合を想定しています)。

1-1.上限2万円の根拠は弱い

上限2万円の根拠は、税理士界では有名な伊藤俊一先生の著書「Q&A 課税実務における有利・不利判定」(ロギカ書房)を参考にさせて頂いています。同書において下記の記述があります。

日当10,000 円~最大20,000 円程度、別に宿泊費15,000 円、できるだけ細分化されたものがよい。

他にも、参考になるデータとしては、2年に一度調査・公表される「国内・海外出張旅費に関する調査結果」リンク先は原稿執筆時点の最新の2023年版)という資料がありますが、この調査結果では、社長の出張日当は上限5千円程度となっています。しかし、この調査結果は、調査対象が、大企業中心なので、中小オーナー企業の実態にはあっていないと思います(伊藤先生の書籍にもそのように記載されています)。

1-2.出張日当の上限は税務調査で明らかになるもの

このように根拠が弱くなってしまうのには事情があります。それは、出張日当が非課税になる根拠条文やその条文の税務署側の法解釈を示す通達にハッキリしたことが何もかいていないからです(条文も通達もこの記事の最後の方で紹介します)。皆さん、顧問税理士に「顧問料払ってんだから答えろよ!」と言わんばかりに質問してきますが、理屈が分かっている人であればあるほど、「知らんわ」となってしまうのです。

幾ら金を積まれても分からんものは分からんのです。このことはちゃんと理解しておいて下さい。

一方で、確かに顧問料を頂いていることは事実ですので、顧問先の社長のために何かしら回答しなければならないわけで、わたしの場合は、上記のとおり、上限2万円と回答させて頂いているということです。

こうした不確定な概念(金額)がハッキリするタイミングは、税務調査の時です。ですから、出張日当に関しては、金額を答える税理士より、税務調査でちゃんと顧問先の利益を守れる税理士の方が役に立ちます。出張日当の記事なのに税務調査の話を書いた理由がそこにあります。

「税理士が教えてくれない出張日当」というタイトルの情報商材を販売しているのは、わたしの知る限り全員税理士ではありません。税理士ではないということは税務調査の立会が出来ません。つまり、この情報商材は、出張日当の肝心要のタイミングには何の力も行使出来ないのに出張日当の専門家を名乗る人物が作った商品ということです。

ただ、安心して良いのは、わたしが見たことのある情報商材は、販売サイトのコピーのあおりが凄いだけで、書いてある内容は極めて保守的かつオーソドックスなものばかりでした。顧問税理士に顧問料を払っているのに、別途、非税理士の商材をおカネを払って買う必要があるか?という問題はおいといて、欲しければ購入して、顧問税理士に確認してもらうのはアリだと思います。

1-3.上限2万円は低すぎる?

上限2万円と聞いて、知り合いの社長の話と違う!とガッカリしている方もいるかもしれません。社長同士の飲み会で、自分の出張日当が2万円だと、オレは3万、いや5万、とイキって言ってくる回りの社長がいると思います。良く解らずに言ってるだけなので、無視しても大丈夫です。その理由は続きを読めば解ります。それが分かって、はじめて出張日当を脱税ではなく、節税対策として利用可能になります。

少し(だいぶ?)長い記事ですが、最後まで読んで下さい。

2.出張日当の範囲

そもそも、出張日当には「対象範囲」の設定が必要です。金額の大きさでイキってる社長連中は、それを知りはしません。

出張日当として認められる内訳は、「主に」次の3つです。

(1)出張先までの旅費
(2)出張先での宿泊費
(3)出張先での必要経費

このうち、上限2万円と先ほど説明したのは、(3)の金額です。

わたしは(1)と(2)は実費精算で(3)だけを日当として受け取ることを推奨していますが、(1)又は(2)を日当として受け取ることも可能です。後者の場合、後述する裏ワザを使うことが可能です。

(3)が2万円として、(1)又は(2)を加算していけば、金額が増えるのは当然です。これが、単純に3万、5万と日当の金額自慢をしても意味がない理由です。

ただ、中には(3)だけで5万円の社長もいるようです。伝言ゲームみたいな話で、どこまでを対象として設定された金額かも知らずに、あいつが5万円で大丈夫なら、オレも5万円というような理屈で設定しているパターンです。

しかも、そういう社長は、だいたい現地で使った経費(例えば、食事代やお土産代など)も実費で経費精算していたりします。これは、出張先での必要経費の日当と実費での二重計上です。当然、認められるものではありません。税務調査で二重計上が判明すれば、出張日当はたちまち役員賞与と認定され、節税メリットが無くなるだけでなく、過少申告加算税や延滞税を支払うことになり、かえって損をすることになります。

しかしながら、税金の否認・是認の話は、万引犯が捕まるか捕まらないかと同じなので、5万円でも否認されない万引犯が出るのは事実です。だからといって、万引の罪が消えるわけではありません。単に、万引しているところを見つからなかっただけです。イキっている社長の強運を祈る境地までいけたら上等ということです。

3.出張日当のメリット

中小企業の社長が、出張日当にご執心なのは、出張日当に大きなメリットがあるからです。そのメリットを4つ紹介します。

3-1.実費精算の手間が省ける

出張日当を受け取れば、実費精算は不要です(前述したとおり、二重計上は認められません)。

実費精算の手間が無くなってもメリットではない、と思った社長も多いと思います。領収書やレシートを経理の担当者や会計事務所に渡すだけで、自分は何もしない社長の方が多いでしょうから、そう思うのも無理がありません。

ですが、出張日当のメリットの一番手に、これを紹介するのには理由があります。それは、これこそが、出張日当の他の3つのメリットが発生する理由だからです。この事実を知らずに、出張日当を受け取っていると、税務調査で、とんだ失言をしてしまう可能性があります。このメリットだけは、税務調査対応のために、暗記して欲しいと思います。

3-2.所得税が課税されない

出張日当は、それが正当なものであれば、給与として所得税が課税されません。これは出張日当が実費精算の手間を省くために認められたものだからです。例えば、自分で立て替えた出張の際の交通費を精算しようとしたら、所得税が引かれて入金されてくるでしょうか?もし、所得税が引かれるのであれば、だれも立替払いを引き受けてくれなくなることでしょう。

出張日当を、出張のご苦労様代だと思っている社長が沢山います。肌感覚では、実費精算の代替と正しく認識している社長より圧倒的に多いと思います。仮に、出張日当がご苦労様代だったら所得税は課税されます。残業代と同じだからです。ですから、この認識を改めることはとても重要です。

3-3.社会保険料が増えない

出張日当は、社会保険料の算定基礎となる標準月額報酬に含まれることもありません。こちらも、実費精算の手間を省くために認められたものだからです。もし、出張日当がご苦労様代だったら、社会保険料の標準報酬月額に算入されることになります。社会保険料も年々着実に増加して負担が増えていますので、こちらも大きなメリットになります。

3-4.消費税が控除出来る

出張日当を支給すると、その分、消費税の納税額が減ります。役員報酬は消費税が非課税なので、いくら払っても消費税の納税額が減りません。出張日当は実費精算の代わりなので、領収書やレシートに基づいて払った場合と同じように、払った金額に対応した消費税相当額分の納税額を減らせます。つまり、支払う会社側にとってもメリットのある仕組です。

なお、海外出張の日当は、消費税の控除は出来ません。海外での経費は消費税は対象外だからです。

4.出張日当の金額設定のポイント(出張旅費規程の作り方)

これほどメリットのある出張日当をもらわない手はないでしょう。メリットが大きい分、やり方を間違えた場合の損害も大きくなります。出張日当は、予め出張旅費規程で適切な金額を定めておく必要があります。ここでは、出張旅費規程のポイントを紹介します。

4-1.出張を定義する

旅費規程を導入する上で最も重要なのは、「出張」の定義です 。

所得税法第9条第1項第四号では「給与所得を有する者が勤務する場所を離れてその職務を遂行するため旅行〜」と定めてありますが、時間や距離に関する具体的な法的定義は存在していません 。そのため、各会社が自社の実態に合わせて「出張」の定義(時間や距離)を定める必要があります。

例えば、出張を「勤務地の外部で業務を遂行すること」と定義すれば、近隣への外出でも、業務のため勤務地から外出するだけで、距離や宿泊の有無に関わらず日当を支給できます。具体的には、研修も職務上必要な研修であれば日当を支給できるし、運送業のように業務自体が移動となる場合でも、日当を支給できます。

但し、このように出張の範囲を広くすると、社長以外の従業員にも出張日当を支給するケースが増えます。例えば、事務員が銀行に通帳記帳をしに行ったのも「出張」に該当するので、日当の支給が必要になります。また、日当の精算業務が増えるので手間がかかります。当然ですが、すぐそこにいく場合の日当は2万円ということにはなりません。そのために、日当の申請と精算をするのは、相当な気力と根性が必要となります。実際に「出張」を定義するにあたっては、良い案配を見定めセンスがないと悲劇が起きる可能性があります。

4-2.役職間の適正なバランスが保たれている(垂直的公平)

役員と従業員の間で、役職に応じた適正なバランスで日当額が設定されている必要があります。例えば、社長の日当が非常に高く、一般社員が極端に低いといった急な格差は認められにくい です。

社長の日当額は、役員報酬が高いほど、設定できる日当額も高くできるます。役員報酬が低いにもかかわらず日当額が高すぎると、所得税を逃れるための規程とみなされ税務調査で指摘を受ける可能性が高まります 。裁決・判決で日当額が高額として争われた事案は少ないのですが、否認リスクは高まると考えておいた方が良いでしょう。

例えば、平均給与額の倍率に合わせて日当額を設定するとすると、
一般職: 給与400万円に対し、宿泊を伴わない出張1,000円、宿泊を伴う出張3,000円、海外出張6,000円 。
代表取締役: 給与1,200万円に対し(一般職の3倍)、宿泊を伴わない出張3,000円、宿泊を伴う出張9,000円、海外出張18,000円 
というような設定があり得ます。

4-3.全従業員が支給対象になっていること(水平的公平)

旅費規程は、社長だけでなく全社員を対象とする必要があります。実際に出張しない社員がいても、規程上は対象としなければなりません。また、実際に出張した際には、出張日当を支給する必要があります。この支給を怠ると、出張旅費規程全体が否定されて、社長が受け取った出張日当は、役員賞与として給与課税と消費税の控除を受けられません。

4-4.同業種・同規模の他社と比較して相当と認められる金額

同業種・同規模の他社が一般的に支給している金額と比較して、過度に高額でないことも求められています。4-1で、役員報酬の倍率で日当の金額を設定する例を出しましたが、社長の役員報酬が一般社員と比べて、かなり高額な場合は、日当の絶対額も高くなるので、他社比較の面で、出張日当として認められない可能性が高まる点に注意が必要です。

しかしながら、そもそも同業種・同規模の他社の出張旅費規程を入手すること自体が、現実的には不可能なので、出張日当に関して「絶対安全」を求めることの愚かさを知った方が良いと思います。わたしも「絶対安全」を求められたら、社長の日当の上限は2万円ではなく2千円と答えます。

5.出張旅費規程の作成から導入・運用の流れ

出張日当を導入するには出張旅費規程の作成が必要になります。出張旅費規程の作成から運用までの具体的な流れを説明したいと思います。

5-1.旅費規程の作成

自社の実態に合った旅費規程を明確に作成しましょう 。ネットで転がっているのを拾ってきて、前記のポイントを確認しながら作成してみて下さい。気前の良い規程を作れば、自分も出張日当を沢山貰えますが、社員にも沢山支給することになりますので、ご注意下さい。

5-2.規程通りの運用

規程を作成したら、その内容を厳守し、一貫して運用する必要があります。気分で運用を変えたり、規程外の支給を行ったりすると、規程そのものが無効と判断されてしまいます。注意深く運用するようにしてください。

5-3.株主総会での決定と議事録の保管

旅費規程の導入を株主総会で決定し、議事録として残しておく必要があります。これにより、税務署からの「お手盛り」という指摘を防ぐことができます 。

5-4.証拠となる帳票の作成と保管

スケジュール表や打ち合わせの議事録、交通経路のレポートなど、出張の業務性を証明できる書類をきちんと保管しておく必要があります。「空出張」は脱税行為です。税務署も摘発を狙っているので、ご注意下さい。

5-5.定期的な見直し

出張日当の範囲に交通費や宿泊費を含める場合には、航空運賃やホテルの価格変動などの社会情勢の変化に合わせて旅費規程の金額を年1回程度見直すことが推奨されます 。見直しの手間を減らしたければ、出張日当の範囲を、現地での必要経費に留めておきましょう。

5-6.期末にまとめて精算しない

原則として、月ごとに旅費精算を行うのが望ましいです。他の経費精算が月ごとに行われているのに、旅費だけを期末にまとめて精算すると、税務調査で出張日当に焦点を充てられやすいです。空出張や規程通りに運用していないことが見つかるのは、このパターンが多いことを心得ておいて下さい。

6.出張日当の効果を高める運用の仕方(裏ワザ)

ここまで、出張日当に交通費や宿泊費を含めることに否定的な見解で書いてきましたが、交通費や宿泊費を出張日当の対象とした方が、より大きなメリットが得られます。

6-1.手当と実費の差額を受け取る

旅費規程で、社長が新幹線を利用する場合はグリーン席と定めたとします。東京から名古屋への出張をすると、会社から出張手当(交通費部分)として支給される金額は14,340円になります(2025年6月現在、以下同じ)。しかし、実際には自由席を利用したとすると、社長がJR東海に支払う実費は10,680円なので、差額の3,660円は、所得税も社会保険料も引かれることなく、社長の手許に現金として残ります。

会社は交通費としてグリーン代を処理するので、実費より多くの損金が発生して、法人税が節税になり、かつ、消費税も実際に支払った消費税より大きく控除が出来ます。

6-2.マイル活用で差額を最大化させる

飛行機での出張であれば、この実費の部分をマイルで賄うことも可能となります。

例えば、旅費規程で社長の海外出張はビジネスクラス利用と定めたとします。会社から、ビジネスクラスの往復運賃として95万円が支給された場合、実際にはマイルを使ってエコノミークラスで移動し、税金や燃油サーチャージとして1万8千円しか支払わなければ、93万2千円が非課税で社長の手元に入ることになります。会社は交通費としてビジネスクラスの往復運賃を処理するので、実費より多くの損金が発生して、法人税が節税になります。

また、飛行機とホテルをセットで予約する場合には、セット割引が適用され、実際の宿泊費が旅費規程で定めた金額よりも大幅に安くなる場合があります 。ここで発生した差額も非課税の手取りになります 。

利用するマイルは、社長が個人カードの決済で貯めることも出来ますが、法人カードで法人経費や税金を決済することで貯めることも可能です。後者で貯めたマイルの活用は、社長にとっては、より大きなメリットになります。

現状、マイルやポイントに課税されたという話は聞かないものの、この差額が増えていくに連れて、出張日当が否認されるリスクが高まることになると思います。裏ワザを使うと、税務調査対応が更に重要になることを心得ておいて下さい。

税理士の税務調査対応が非常に大事です。

7.出張日当の法的根拠

税務調査の話をする前に、遅ればせながら、そもそも出頭日当が認められる税法根拠を確認しておくことにしましょう。

7-1.所得税法

日当が非課税となる法的根拠は、所得税法第9条第1項第四号です。

次に掲げる所得については、所得税を課さない。
四 給与所得を有する者が勤務する場所を離れてその職務を遂行するため旅行をし、若しくは転任に伴う転居のための旅行をした場合又は就職若しくは退職をした者若しくは死亡による退職をした者の遺族がこれらに伴う転居のための旅行をした場合に、その旅行に必要な支出に充てるため支給される金品で、その旅行について通常必要であると認められるもの

この規程により、出張などに伴う日当は、この法律規定に合致する限り非課税となります。

7-2.所得税法基本通達

また、所得税基本通達9-3では、非課税とされる旅費の範囲について、下記のとおり定めています。

法第9条第1項第4号の規定により非課税とされる金品は、同号に規定する旅行をした者に対して使用者等からその旅行に必要な運賃、宿泊料、移転料等の支出に充てるものとして支給される金品のうち、その旅行の目的、目的地、行路若しくは期間の長短、宿泊の要否、旅行者の職務内容及び地位等からみて、その旅行に通常必要とされる費用の支出に充てられると認められる範囲内の金品をいうのであるが、当該範囲内の金品に該当するかどうかの判定に当たっては、次に掲げる事項を勘案するものとする。
(1) その支給額が、その支給をする使用者等の役員及び使用人の全てを通じて適正なバランスが保たれている基準によって計算されたものであるかどうか。
(2) その支給額が、その支給をする使用者等と同業種、同規模の他の使用者等が一般的に支給している金額に照らして相当と認められるものであるかどうか。

この範囲を超える金額は給与所得として課税対象となります。

7-3.国家公務員等の旅費に関する法律

実は、税務署の調査官を含めて国家公務員にも、出張日当は支給されています。われわれ民間の出張日当が、この法律の影響を受ける場合があります。

例えば、海外出張に伴う支度金が非課税となる根拠が「国家公務員等の旅費に関する法律」の規定となっていて、「1年以内の再支給はしない」ことになっているため。年間何度も海外出張がある場合に毎回支給すると、非課税ではなく経済的利益と指摘される可能性が高いということがあったりします。

8.出張日当の税務調査対策

出張日当に関する採決・判例は非常に少ないです。だからといって、出張日当は否認されない、と考えるのは早計だと思います。出張日当を導入するということは、税務調査で争点になるという前提で考えておくことが必要です。

8-1.税務調査は税理士次第

税理士なら誰でも同じ、と思っている社長も多いですが、税理士は千差万別です。税理士の違いが、より大きく出る場面が税務調査です。一人の税理士としか付き合ったことがない、という社長の方が多いので、そう言われても解らないかもしれませんが、、、、。少なくとも、皆さん方の立場にたって、追加の納税額が少なくなるように対応してくれる税理士に税務調査対応を依頼するようにしましょう。

わたしの税務調査対応について詳しく書いた記事を紹介させて頂きます。こちらを基準に、ご自身の顧問税理士について、適切かどうかを判断下さい。

8-2.「前の調査では何も言われなかった」は絶対NG

出張日当が税務調査で議論の俎上に登ることは、現状、多くはありません(=ほとんどない)。したがって、以前の税務調査では、出張日当のことを何も言われなかったにも関わらず、それ以降の税務調査で、出張日当について、調査官から指摘を受けることがあり得ます。

この際、よく「前の調査では何も言われなかった」と反論する社長がいますが、それは止めて下さい。「では、前回調査対象の期間についても否認します」と言われてお終いです。さらに、「コイツ、なんにも知らない素人だな」と調査官から確実に舐められます。もし、税理士が、このセリフを言ったら論外です。

例えば、日当と実費の二重計上していても、税務調査で否認され無いことがあり得ます。税務調査というのは、すべてを正しくするというものではありません。かけた労力と得られる税金とを勘案して否認されるものです。そうした現実を受け止めて対応する必要があります。万引犯を全員捕まえるために、全ての商品棚に警備員を配置するお店がないのと同じことです。

8-3.「調査官も出張日当貰ってますよね」は素人考え

出張日当の金額が過激化する背景に、調査官も税務調査に出向けば出張日当が支給されることが広く知られてきたということがあります。これを逆手にとって、「自分も貰っているのに否認ですか?」と反論すれば良い、と思っている社長が増えたように思います。

国家公務員の旅費に関する法律は、我々納税者が選んだ国会議員が決めた法律により支給されているのであって、我々民間人が出張日当が欲しくて自分で設定した「お手盛り」の出張旅費規程とは違います。

調査官を刺激しても得をすることはありません。税務調査の結果、否認されない、あるいは、追徴税額が少なかったり、重加算税等のペナルティーの額が少ないのが、調査における成功です。無用に、調査官を刺激する行為は控えた方が良いというのが、わたしの考えです。

8-4.「ご苦労様代」にならないように注意

出張日当は実費精算の手間を減らすという趣旨で所得税の非課税や消費税の控除が認められています。しかし、この真実をちゃんと理解出来ている社長は極めて少ないです。ですから、社長が自分で、出張日当の妥当性を調査官と議論することは避けた方が良いです。

調査官の巧みな誘導質問に迂闊に回答して、「ご苦労様代認識」発言をしてしまえば、もはや出張日当ではなく、役員賞与です。所得税課税、消費税非課税への道を進むことになります。調査官との議論は、税理士に任せておいた方が無難です。

8-5.修正申告は良く考えてから提出する

調査官は、出張日当が高額過ぎると「修正申告」を促してきます 。修正申告をすると不服申し立てが出来ないので調査官にとって有利なのです。しかし、納税者が修正申告に応じない場合には、税務署側からの「更正処分」をしなければなりません。

更正処分をする場合には、税務署内及び国税局での稟議が必要となります。承認を得るには法律の裏付けが必要です。先ほど根拠条文や通達を紹介しましたが、具体的な金額基準が書いてあるわけではありません。旅費規程における日当額の妥当性は曖昧な部分が多いので、税務署が明確な証拠を提示して否認することが難しい論点であることは間違いありません。

現実の税務調査では、出張日当だけが問題になるわけでなく、様々な事項に対して否認指摘が行われます。その中で何を修正申告するのかを交渉により決めていくことにはなりますが、出張日当に関しては、否認が難しい事情を理解したうえで、修正申告に応じるかどうかの判断をする必要があります。

9.出張日当のまとめ

出張旅費規程を適切に運用して、出張日当を活用出来れば、会社と個人の双方に大きなメリットをもたらします。いまは(2025年6月現在)、根拠法の曖昧さもある状況で、税務調査を受けたとしても、出張日当を更正されたという話を聞くことは、ほぼありませんが、いつまでもこの状況が続く保証はありません。

現状のルールの下で、出来ることは実行していけば良いと思いますが、あまり調子に乗りすぎて、出張日当を活用することが出来なくなる未来がこなければ良いな、と思っています。

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山口 真導

山口 真導

過払い税金対策専門税理士株式会社アカウンタックス
中小企業の資金繰りを改善するソフトウェアの開発に失敗し、自社の資金繰りがつかなくなる。その時、利益より資金が大事だとようやく気づく。以来、資金繰りの悩みを節税対策と銀行対策で解決する専門家として活動。中小企業経営者のお金の問題を他人事ではなく自分事として捉え解決している。著書に、起業5年目までシリーズで「資金繰りのキホン」と「節税のキホン」がある。

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