社長の退職金の積立方法を考える:定期預金か生命保険か?

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退職金が最も所得税が低いお金の受け取り方だということは、多くの経営者がご存知でしょう。

しかし、「どのように退職金を積み立てるのがベストなのか?」については意見が分かれています。

この記事では、定期預金と生命保険という二つの方法について、それぞれのメリットとデメリットを比較し、私の見解をお伝えします。

※この記事を文章で読むより動画で確認されたい方は、この記事の末尾にある動画をご覧下さい。

1.定期預金での退職金積立

1-1.定期預金派の主張

定期預金を使って退職金を積み立てる方法はシンプルです。会社が得た利益から法人税を差し引いた後の金額を、毎年定期預金として積み立てるというものです。この方法のメリットは、積み立てたお金が目減りせず、確実に手元に残る点です。

例えば、過去に存在した全損保険を例に挙げると、保険料を全額損金計上して法人税を回避したとしても、保険の解約返戻金が100%戻らないケースがほとんどでした。そのため、「最初から法人税を支払って、残ったお金を定期預金にしておく方が合理的だ」と考えるのが定期預金派の意見です。

1-2.定期預金のリスク

しかし、この方法には大きなリスクがあります。それは、会社に現金があるとつい使ってしまうという経営者の性質です。特に新規事業の話が舞い込んできた場合、多くの社長が積み立てたお金を事業に投入したくなる傾向があります。結果として、退職時に十分な資金が残っていない可能性があります。

さらに、定期預金では死亡退職時に十分な退職金原資が得られない点も問題です。生存退職のみを想定した方法では、不測の事態に対応できません。

2.生命保険での退職金積立

2-1.生命保険派の主張

生命保険を使った退職金積立は、定期預金と比較して複数のメリットがあります。

生命保険を活用することで、法人税の一部を損金計上できるため、資金効率が向上します。例えば、現在では全損保険が廃止され、損金割合が4割程度に減少したものの、それでも定期預金にはない節税効果が得られます。

また、生命保険の最大の特徴は、死亡退職時に保険金として多額の資金が得られる点です。この保険金を退職金として家族に渡すことで、生活を支える資金を確保できます。

2-2.生命保険のリスクと対応策

生命保険のデメリットとして挙げられるのは、解約返戻率が8割程度である場合が多いことです。しかし、保険商品を適切に選べば、返戻率が100%を超える場合もあります。このような商品を選択することで、定期預金と同等のパフォーマンスを保ちながら節税効果も享受できます。

3.生存退職と死亡退職の違いを考慮する

退職には「生存退職」と「死亡退職」という二つのケースがあります。生存退職は、社長が一定の年齢まで働き続けた後に退職する場合です。一方、死亡退職は、不慮の事故や病気で亡くなった場合に退職せざるを得ない場合です。

定期預金は主に生存退職を想定していますが、生命保険は両方のケースに対応できます。特に死亡退職時には、支払った保険料に比べて、多額の保険金が支払われるものを選択することで、経営者の家族の生活を守る重要な手段となります。

4.生命保険を使うべき4つの理由

生命保険を活用することで、以下のようなメリットが得られます。

1:法人税の節税

一部損金計上が可能なため、税負担を軽減できます。

2:死亡退職時の保障

家族に多額の退職金を残せるため、経営者が突然亡くなった場合でも生活の安定を確保できます。

3:返戻率と配当

返戻率が高い保険商品を選べば、定期預金と同等の資金効率を達成できます。配当が受け取れる保険を選ぶと、更に資金効率が上がります。

4:資金の保全

定期預金のように事業投資で資金を使い込むリスクを回避できます。

5.顧問税理士としての責任

私が顧問税理士として最も恐れるのは、クライアントの経営者が亡くなった際、家族を支えるための資金が全く残っていない状況です。定期預金では十分な保障が得られないため、生命保険を活用することで、家族の生活を守りながら節税も実現する提案を行っています。

経営者に万が一のことがあった時に、残されたご家族に顔向け出来ない状況は是が非でも避けたいです。

6.まとめ

退職金の積立方法として、定期預金と生命保険にはそれぞれ一長一短があります。しかし、死亡退職のリスクを考慮した場合、生命保険の方が優れていると思います。加えて、法人税の節税効果や資金効率を考えると、生命保険の活用が最適解ではないでしょうか?

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山口 真導

山口 真導

過払い税金対策専門税理士株式会社アカウンタックス
中小企業の資金繰りを改善するソフトウェアの開発に失敗し、自社の資金繰りがつかなくなる。その時、利益より資金が大事だとようやく気づく。以来、資金繰りの悩みを節税対策と銀行対策で解決する専門家として活動。中小企業経営者のお金の問題を他人事ではなく自分事として捉え解決している。著書に、起業5年目までシリーズで「資金繰りのキホン」と「節税のキホン」がある。

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