法人税の「低税率」が実は落とし穴?:手取りを増やす節税対策を考える

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多くのオーナー社長が誤解している「法人税が低いから会社に利益を残すと得だ」という話について解説します。

この考え方には重大な落とし穴があります。節税対策を効果的に進めるためには、法人だけでなく、オーナー社長個人も含めた全体的な視点で物事を捉える必要があります。

※この記事を文章で読むより動画で確認されたい方は、この記事の末尾にある動画をご覧下さい。

1.法人税が低いから得だ、は間違い?

多くの方が「法人税の税率は低いから、会社に利益を残すと得だ」という話を耳にしたことがあるかと思います。しかし、この考え方は非常に短絡的です。

会社を設立する目的のひとつに「所得税の節税」をあげるオーナー社長は多いですが、法人税が低いことだけに注目してしまうと、最終的な手取り額が大幅に減ってしまう可能性があるからです。

例えば、100の利益があるとします。この場合、現在の法人税の実効税率は34%ですから、34の税金を支払うことになります。すると、会社に残るのは66です。この66はどうするつもりですか?

この66を、役員報酬としてオーナー社長が受け取ると、所得税と住民税が課税されます。最高税率で計算すると、66の55%にあたる36が課税されます。
法人税34としてあわせて、合計70が税金として引かれるということです。

最初の100の利益から70が税金として消えるのなら、最初から100を役員報酬として受け取り、55の税金を払って45受け取った方が得だと思いますが如何でしょうか?

2. 二重課税を避ける方法は?

「法人税を払った後の66を社長が受け取らず、借入金の返済に回せばいいのでは?」と考える方もいるでしょう。確かに、この場合、所得税はかかりません。しかし、オーナー社長の手元には1円もお金が入りません。それで節税出来たと満足出来ますか?

2-1. 法人と個人の全体で考える節税

法人税が低いという理由だけで利益を会社に残すことは、視野が狭すぎます。会社が稼いだ利益をオーナー社長が受け取らなければ、手取りが増えたことにはならないからです。

法人のおカネのことばかり考えても意味がありません。一方で、単純に役員報酬で利益の全額を受け取っても、多額の所得税と住民税の負担を強いられます。この両方を総合的に考えて最適化しなければ、オーナー社長の手取りを増やすことは出来ません。

2-2.本当に節税すべきは所得税

最終的に節税の本丸は、法人税ではなく所得税です。オーナー社長の手取りに直結するのは所得税だからです。所得税を避けておカネ持ちになる道はありません。このような状況下で、そもそも所得税対策で作った法人が、法人税を払うことで手取りを目減りさせているのでは、本末転倒と言わざるを得ません。

所得税のほうが税率が高い問題は、所得税を節税することでしか解決出来ません。法人税の低税率に惑わされず、最終的に社長の手元にいくら残るのかを考えないと大きな間違いを犯すことになります。

3.まとめ

法人税の低税率だけを理由に会社に利益を残す節税方法は短絡的な考えであり、最終的に社長の手取りを減らします。真の節税対策とは、法人税と所得税のバランスを考え、最終的にオーナー社長の手元にいくら残るかで判断されなければなりません。

例えば、退職金を活用したり、損金扱いの保険で退職金を積み立てたりすることで、法人税と所得税の双方を圧縮することが可能です。節税の本丸は、最初から最後まで、税率の高い所得税であり、そこに注力しない限り、いつまでも税金を払い続けることになります。

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山口 真導

山口 真導

過払い税金対策専門税理士株式会社アカウンタックス
中小企業の資金繰りを改善するソフトウェアの開発に失敗し、自社の資金繰りがつかなくなる。その時、利益より資金が大事だとようやく気づく。以来、資金繰りの悩みを節税対策と銀行対策で解決する専門家として活動。中小企業経営者のお金の問題を他人事ではなく自分事として捉え解決している。著書に、起業5年目までシリーズで「資金繰りのキホン」と「節税のキホン」がある。

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