今回は、多くの法人が活用する「少額固定資産」による法人税の節税対策について説明します。この方法は非常に有名で、節税手法として広く用いられていますが、実は注意すべきポイントも少なくありません。
特に、10万円以上20万円未満の資産をどのように処理するかによって、税金全体の負担が変わる可能性があります。本記事では、この資産の処理方法と、それに関連する税金「償却資産税」の問題点について詳しく解説します。
※この記事を文章で読むより動画で確認されたい方は、この記事の末尾にある動画をご覧下さい。
Contents
1.少額固定資産と一括償却資産の違い
まず、少額固定資産と一括償却資産の基本的な違いを整理します。
1-1. 少額固定資産とは?
30万円未満の固定資産は、税法上「少額固定資産」として扱うことができ、一括で損金に算入することが可能です。
この方法を活用することで、使用開始年度に資産を全額経費計上することができます。
1-2.一括償却資産とは?
一方、10万円以上20万円未満の資産は、一括償却資産という別のカテゴリーにも該当します。
一括償却資産の場合、使用開始後3年間で均等に償却する形で損金算入が可能です(厳密には36分の事業年度の月数で償却)。
1-3.結果の違い
3年間のトータルで見れば、少額固定資産として処理しても、一括償却資産として処理しても、損金に計上される金額は同じです。ただし、損金になるタイミングが異なるため、資金繰りや節税効果に違いが生じます。
図にまとめると下記のとおりです。
金額 |
原則処理 |
特例処理 |
損金期間 |
30万円以上 |
資産 |
資産 |
法定耐用年数 |
30万円未満 |
少額固定資産 |
法定or100% |
|
20万円未満 |
一括償却費 |
3年or100% |
|
10万円未満 |
消耗品費 |
100% |
2.少額固定資産処理のメリットと落とし穴
多くの経営者は、少額固定資産として一括損金処理を選択します。その理由は、損金計上のタイミングが早い方が、法人税の節税になり、資金繰りが良くなるからです。しかし、これには思わぬ課税リスクも潜んでいます。
2-1.繰越欠損金がある場合
例えば、過去に赤字を抱えており繰越欠損金がある会社の場合、少額固定資産として処理することは必ずしも最善策ではありません。繰越欠損金には9年間の繰越期間があるため、早く損金処理をしてしまうと、欠損金が無駄に消えてしまうリスクがあります。
早く損金を作るといっても自社の状況に照らして判断する必要があるということは覚えておく必要があります。
2-2.償却資産税の課税リスク
10万円以上20万円未満の資産を少額固定資産として処理すると、「償却資産税」という新たな税金の課税対象になります。
一方で、一括償却資産として処理する場合、償却資産税は課されません。
償却資産税について多くの社長が知らされていません。少額固定資産で処理した場合、償却資産税が課税されることを知ると、ほぼ全てのお客様が、償却資産税処理を避ける為に一括償却資産処理を選択されます。3年待てば全額損金になり、少額資産との差異は解消されるからです。
ですから、わたしからこの話を聞いた後に、社長から「それを知っていれば少額資産にはしなかった」と言われることはことが多いです。
金額 |
原則処理 |
特例処理 |
損金期間 |
30万円以上 |
資産 |
資産 |
法定耐用年数 |
30万円未満 |
少額固定資産 |
法定or100% |
|
20万円未満 |
一括償却費 |
3年or100% |
|
10万円未満 |
消耗品費 |
100% |
※上図で赤字の処理を選択すれば償却資産税は課税されない。
3.償却資産税の具体的な影響
償却資産税は、課税対象となる資産の累計額が150万円を超えると課税されます。これを超えないような小さな会社には関係ない税金です。逆に、少額固定資産の処理を続けていくと、簡単に、課税対象になってしまいます。知らないうちに脱税になっている会社も多い税金です。
一括償却資産で処理出来るものは、そちらを選択しておけば、150万円を超えない範囲で推移させることが出来るケースもありえますので、慎重に会計処理の判断を行うようにしてください。
4.適切な資産処理のためのポイント
では、どのように資産処理を進めればよいのでしょうか?以下のポイントを押さえることで、最適な節税対策を講じることができます。
ポイント1.会社の状況に応じた選択
会社の収益状況や繰越欠損金の有無を考慮し、少額固定資産と一括償却資産のどちらを選ぶかを慎重に検討する必要があります。累計の償却資産税対象資産額についても、把握しておくこと必要があります。
ポイント2.法人税以外の税金も考慮
節税対策は法人税だけでなく、償却資産税などの他の税金も含めて総合的にプランニングすることが重要です。どっちも節税出来る方法を選択出来るようにしましょう。
ポイント3.専門家のサポートを活用
ネットや書籍では節税の表面的な情報しか得られないことが多いため、税理士に相談して具体的なアドバイスを受けるのがおすすめです。
「法人税+節税対策」でGoogle検索すると、少額固定資産のことが、まず間違いなく出てくると想います。確かに法人税は節税になるので、ウソを書いてあるわけではありませんが、法人に課税される税金は法人税だけではありませんので、全体最適を目指すのであれば、顧問税理士に相談して、処理方法を決めていく必要があります。
5.まとめ
少額固定資産を活用した節税対策は非常に有効ですが、その裏には課税リスクも存在します。償却資産税の存在や、繰越欠損金への影響を理解した上で適切な処理方法を選択することが求められます。
税金全体の負担を最小限に抑えるためには、会社の状況や目標に応じた柔軟なプランニングが必要です。ぜひ、ビズ部の他のページもご覧頂けたらと思います。
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山口 真導

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