退職金相当額を毎年の損金にする所得税・法人税節税手法

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とにかく役員報酬を取りたい!と考えられている社長は意外と多いものです。役員報酬を増やすのはとてもいいことだと思いますが、1つ問題があります。それは、「所得税の税率は高い」ということです。

法人税を減らすために役員報酬を上げたら所得税の方が高かった・・・ということはよくある話です。これはこれで悪いとは言いませんが、できれば税負担は少なくしたいですよね。そこで、今回は、退職金を使った節税について事例とともにお話していきます。

内容を一言で言いますと、必要以上の役員報酬は取らないで退職金に回す!です。

(出所:2-1-2 退職金による節税

0.所得税の仕組み

(1)最大45%も取られる所得税の税率

所得税の税率は以下の通りです。これに住民税10%をプラスしたものが、トータルの税率となります。

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所得税は累進課税制度を採用しており、所得が高くなればなるほど、税率も高くなっていきます。195万円以下の税率は5%ですが、4,000万円超の税率は45%と実に9倍にもなります。

※4,000万円超であっても、4,000万円以下部分の金額については上記の税率が適用されます。それを加味しているのが控除額であり、実際の計算は、所得金額×税率-控除額により算定します。

なお、上記税率に乗じる所得は、給与所得控除や社会保険料控除などの控除を差し引いた金額となります。

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給与所得控除の速算表 

(2)総合課税に含めない分離課税とは

所得税法では、所得を10個に分けています。10個の所得は別個に計算し、その後、合算するもの(「総合課税」と言います)と合算しないもの(「分離課税」と言います)に分けられます。

 メジャーなところで言いますと、給与所得と事業所得は総合課税であり、両方の所得がある場合は控除額等の計算をした後で合算をします。給与所得が500万円、事業所得が300万円あれば、合計800万円が所得金額となり、ここから社会保険料等の控除を差し引いて課税所得を算出します。

一方、分離課税のものは合算をしないで別個に扱います。代表的なものは、退職所得や譲渡所得になります。これらは、総合課税されるものがいくらあったとしても、別の税率が用意されていますので、総合課税における累進課税の適用を受けないというメリットがあります。

1.税金メリットをたくさん受けられる退職金の内容

さて、それではいよいよ退職金のお話に入りましょう。所得税法上、退職金は退職所得に分類されます。そして、退職金は老後の資金であることから、課税庁としましてもあまり税金を課すのは・・・という思いがあり、非常に優遇されています。

以下、退職所得のメリットを確認していきましょう。

(1)退職所得控除は給与所得控除よりも大きい場合がほとんど

給与所得控除と同じように、退職金にも退職所得控除があります。退職所得控除は以下となります。

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給与所得控除の最大額は245万円(年収1,500万円以上)ですが、退職所得の場合、6年と1日以上勤務していれば、280万円も控除することができます。通常、勤続年数は10年とか20年の単位になりますので、ほとんどの人は、給与所得控除よりも多く控除を受けられることになります。

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なんと、1,220万円までは所得税がかからないことになります。

 

(2)退職所得控除を引いてからさらに半分

退職金が退職所得控除を超えた場合、通常であれば控除後の金額に対して税率を乗じますが、退職所得の場合、そこからさらに1/2をすることができます。

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ただし、役員等で勤続年数が5年以下の場合、1/2の適用は受けられません。上記例であれば、1/2をする前の280万円が課税所得となります。

(3)退職所得は他の所得と合算する必要のない分離課税

退職所得は分離課税ですので、上記(1)(2)で計算した退職所得に対して、所得税率を乗じます。この際に使用する税率は前掲の税率になります。

再掲)所得税の税率

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退職金3,000万円に対する所得税額は1,008,500円となり、実効税率は僅か3.3%となりました。仮に3,000万円(所得控除は400万円とします)の給与所得だった場合の所得税額は7,604,000円(実効税率25%)ですので、その差は歴然かと思います。

2.退職金のデメリット

(1)退職金を手にする日までの期間が長い

退職金は退職時にもらうものですので、退職金を手にするまでは相当の期間がかかるのが一番大きなデメリットです。なお、その間に退職給付引当金等で引き当てていたとしても税務上は損金となりません。

(2)所得税・法人税の二重課税になる可能性

従業員の退職金については、基本的に払ったら払っただけ損金になります。しかし、役員の場合には不相当に高額な部分の金額は退職金ではなく役員給与として扱われます。こうなると最悪で、給与として所得税が発生するにも関わらず、法人の損金に算入されません。即ち、所得税・法人税の二重課税を課せられることになります。

そうならないよう、役員退職金は、以下の算式で適正(と思われる)額を算定しましょう。

最終月額報酬×勤続年数×功績倍率

 

最終月額報酬と勤続年数は簡単に出せますが、簡単ではないのが功績倍率です。功績倍率は類似会社の倍率を使用する方法などがありますが、一般には以下の倍率まででしたら安全と言われています。

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この位の金額まででしたら、不相当に高額と言われるリスクは少ないと考えられます。ただし、ケースバイケースになりますので、功績倍率が1を超える場合は税理士に相談するようにして下さい。

 

3.退職金シミュレーション

ということで、退職所得が如何にお得なのかがおわかり頂けたと思います。優遇されている制度がある訳ですから、これを節税に使わない手はありませんね。

役員報酬を決める際に、必要以上にらっていると考えられる金額があれば、それを退職金に回すことを検討してみましょう。具体的な事例と共に確認します。

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役員報酬のみの場合と比較して568万円もの節税になりました。退職所得が如何に優遇されているかがお分かり頂けたかと思います。

4.保険との合わせ技でさらに節税

上記3のように、役員報酬を減らしてその分を退職金に回すというのは、非常に有効な所得税の節税対策なります。しかし、この仕組では以下の問題があります。

 退職金の支払時まで費用処理ができない

 

つまり、退職金に回した分は費用とならないことから、その金額に対して法人税が課せられてしまうのです。これでは、実際の退職金支給時にお金が無い!という状況になりかねません。

そこで活用したいのが、保険になります。何%かが損金に入る逓増定期保険等に加入し、保険料を損金算入することで法人税の課税を回避することができまし、退職金用のお金をプールしておくこともできます。そして、退職金の支給時に保険を解約することによって、解約返戻金収入と退職金とを相殺することができるのです。

また、通常であれば退職金が出た年度はその分だけ赤字になる可能性が高いのですが、保険があれば解約返戻金収入を計上することができますので、赤字を回避できる可能性も上がります。

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※保険について、詳しくは以下の記事をご参照下さい。

保険で節税は本当か?事例を使って検討してみました

法人保険契約の必要性と法人税節税の3条件

5.さいごに

役員報酬ではなく退職金でもらうことができれば、何よりの節税をすることができます。しかも、給与所得と退職所得との課税上の問題ですので、将来的に取り戻されるというようなこともありません。単純に、支払う税金が減少することになります。

しかし、通常、退職の時期はずっと先ですので、役員報酬を減らしている間の法人税負担増がネックになります。そこで、取り入れるのが保険です。保険は、出口がある場合は非常に有効な節税対策になります。退職金の支払時までは保険によって法人税を節税し、退職金の発生時に解約返戻金を受け取ることができれば万々歳となります。

ココ!と決めた時期があるのであれば、役員報酬を減らしてその分を保険として積み立てることも検討してみてはいかがでしょうか。

 また、こちらの記事は読み易さを考慮して詳細は省いています。もっと詳しく知りたい!という勉強熱心な方は、こちらの記事も御覧下さい。

役員退職金で節税するための2つのポイント


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