起業家が知っておくと安心できる税務調査対応のすべて

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先頃発表された平成25事務年度(平成25年7月1日から平成26年6月30日まで)の税務調査実績によると、9万1千件の法人に税務調査が行われた結果、6万6千件で過少申告が発見され、そのうち2万1千件については不正計算による過少申告があったとされています。この中で注目すべきは、調査対象法人に対する不正計算の割合は23%にものぼるということです。

「法人の2割以上が納税を逃れるために不正を行っている」という、この統計について多くの真面目な税理士が疑問を持っています。なぜなら、お客様の2割以上が不正計算を行っているとは到底思えないからです。

一方で、思い当たるフシもあります。それは、税務調査に関する顧問税理士の関与が少ないのではないか?ということです。

法人の申告書に税理士の署名押印がある割合は国税庁の統計で86.4%と言われています。9割近くに顧問税理士が付いているにもかかわらず、税務調査の対応を、経営者自らがしているという話を良く聞きます。

税理士の手を借りずに税務調査に関する法律的知識も経験も乏しい経営者が自ら税務調査対応を行うことにより、税務調査のプロである調査官の思い通りの税務調査になっているのではないか?という仮説が成り立ちます。

もし、この仮説が真実なら2割以上発見される不正の一部については、税法上の不正には該当しないにも関わらず、不正計算と扱われて多額のペナルティーを支払わされていることになります。

そこで、この記事では、上記のような「冤罪」が発生しないように、税理士がどのように税務調査対応をしているかと、起業家のみなさんが税理士に対して、どのように対応してもらうようにすれば良いかをお伝えしようと思います。

なお、この記事は会社(法人)の税務調査を前提として書いていきます。

Contents

0.この記事に関するおことわり

今回、この記事を書かせて頂くに当たり、いくつか知っておいて頂きたい前提条件があります。

0−1.この記事は全て私見です。

これからご紹介する税務調査の流れや方法は、私がこれまでの経験と知識に基づき、通常実施している税務調査対応です。内容については、私個人のベストを尽くしたものではありますが、他の対応の方法もあり得るという風にお考え下さい。

私の会社は経理アウトソーシングをしており、そのお客様には他の税理士が顧問としてついていることがあります。その結果、私は、他の税理士の税務調査対応を間近で見ることが出来る数少ない税理士なのです。他の税理士の方の税務調査対応は、なるほど!と思う対応がある反面、えっつ!!と思うことも時々あります。このように、それぞれの先生が自己流でやっているのが税務調査の現状なのです。

是非、Googleで「税務調査」と検索して確認して頂きたいのですが、これからお伝えするような、税務調査の中身を無料で公開しているコンテンツはほとんどありません。それもそのはずです。確立された税務調査の正しい受け方というものは存在しないのです。

自分で書くのもなんですが、私がこの記事を公開するのは、かなり勇気がいることです。(この記事は、すぐ削除されるかもしれません。読めたあなたはラッキーです。)

この記事を公開する狙いは、私の公開する税務調査対応の内容がレベルの低いものであったとしても、税理士ではないあなたが税務調査対応の巧拙を判断する一つの基準にはなるというところにあります。また、他の税理士が、自分の税務調査対応の方がレベルが高い!とこの記事をみて思えば、新しい情報が公開される可能性もあると考えています。

この記事は、同業者の方からご批判を受ける部分も多々あろうかと思いますが、私としてはそれを前向きに捉えて、自分自身の税務調査対応を更に進化させるために活用させて頂きたいと思います。それをまとめて【2015年版】に更新出来たら、再びあなたにフィードバックするつもりです。

どうぞ、温かい目で見守って頂けますよう、よろしくお願いします。

0−2.税務調査は勉強出来ない?

税理士は税務調査に強い。と考えるのは早計過ぎます。

というのも、税理士試験の試験科目に税務調査という科目(税務調査について定めた国税通則法という科目)はありません。また、公認会計士の実務補習所のような制度もありませんので(但し、公認会計士と同様に実務要件はあります)、税務調査について学ぶ決まった機会があるわけではないのです。

したがって、これまでは、勤務税理士時代に先輩税理士の税務調査対応を背中から学ぶしか税務調査を勉強する方法はありませんでした。

試験日程 試験科目について|税理士試験に関するQ A|国税庁
しかし、国税OBで税務調査専門のコンサルタントの久保優希也氏が株式会社インスパイアコンサルティングを設立されて、セミナーやメールマガジン、メーリングリストを通じて積極的に税務調査に関する情報を提供をなされるようになり、氏の成功を見てか、最近では、何人かの国税OBの税務調査コンサルタントが出現しています。また、税務訴訟の第一人者である鳥飼重和先生が、税務調査士という資格認定講座を開始されて、体系的に税務調査対応を学ぶことが出来る環境が出来てきつつあります。また、こうした環境を下支えするのが、TAINS(日税連税法データーベース)という素晴らしいデータベースです。情報公開法が制定され国税庁内部の研修資料も入手出来るようになったことで、「調査をする側」がどのような考え方・ルールに基づき、税務調査を行っているかが判るようになりました。

これらの機会を利用することで、私達税理士は税務調査を勉強できる環境を得ることが出来るようになりました。

私がこの記事に書く内容には、こうしたセミナー等に参加することで得られた知見が含まれます。本記事においても、根拠となる法令、通達等についてできる限りご照会させて頂きますが、こうした根拠のある税務調査対応の記事が書けるのは、これらのセミナー等への参加の成果です。

更に深い知識が得たいという方は、是非、上記のセミナーにご自身で参加されたり、メルマガ登録などをして、より深く勉強して頂けたらと思います。強くオススメします。

0−3.「税務調査がコワイはおかしい」という前提

「税務調査がコワイ」と仰る経営者がいます。

これには二つ意味があると思います。

  1. 税務調査で沢山税金を「取られる」
  2. 税務調査で調査官に叱られる

0−3−1.税金を取られるなんてことがあるのか?

一点目については、憲法にまで遡る必要があります。

日本国憲法

第三十条 (納税の義務)
国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。

第八十四条 (課税の要件)
あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。

税金の計算方法は税法に定められています。したがって、残念ながら取られるという表現は適切ではありません。あなたが当初行った申告所得の額と元々税法に定められた計算通りに行った場合の所得の額を比べて、後者の方が大きいのであれば、あなたは税金を払う義務があるのです。

しかし、色々な経営者の方からお話を伺う限り、実際に「それは取られましたね」ということもあります。税法や税務調査に詳しければ防げた納税が本当にあるとすれば、それは憲法違反の税金の取り立てということになります。

税務調査が終わってから「取られた」というなら、税務調査の対応を顧問税理士に依頼するべきだと思います。

余談ですが、時々経営者の方から、「ウチの顧問税理士は払わなければならない税金を帳消しに出来る人だよ」という話を伺います。もし、その話が本当かどうか判断できるくらい税法に詳しいという経営者の方で、そんなことはないと仰る方がいたら、是非、その内容を詳しくお聞かせ頂きたいと思います。我が国の最高法規である憲法を合法的に逃れることが出来る方法があるならば、私もその方法を知りたいです。

0−3−2.調査官に叱る権利はあるのか?

二点目の「調査官に叱られる」ということはあり得ません。税務調査がコワイという経営者がいる以上、「あってはなならない」と言った方が良いかもしれません。というのも、税務調査の基本のキとして、次のような条文があるからです。

(権限の解釈)国税通則法第七十四条の八

第七十四条の二から前条まで(当該職員の質問検査権等)の規定による当該職員の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない

このように税務調査は犯罪捜査とは一線を画したものなのです。そこにはあなたを犯罪者扱いするようなことはあってはならないとハッキリと書いてあります。

しかし、税務調査は密室で行われます。実際に納税者がコワイ思いをしているかどうかはその場にいないと伺い知ることは出来ません。その点については、次の事例(「税務調査で『威圧と誘導』があった」とする国税不服審判所の裁決)でその可能性について確認することが出来ます。

川崎汽船事件 日本経済新聞

このような事件があるということは、調査官と言えども成果を急いで税法を逸脱する行為をしないとは限らないと思います。しかし、そのような行為がもしあった場合には、上記の条文に違反していることになりますので、ご照会した裁決のような結果になるのです。

この基本のキをご存じだったら、黙ってコワイ思いをすることもないでしょう。

ご注意頂きたいのは、あなたが一人で税務調査に対応した場合は、調査終了後にこのように税務調査の結果を覆すのは難しいということです。なぜなら、コワイ思いをしたという証言をするのはあなた一人しかおらず、調査官が後からそれを認めることはありませんから、それを立証することが出来ないからです。

川崎汽船さんの場合、調査官の声が大きかったのか壁が薄かったのかは判りませんが、税務調査の対応をしていない社員にまで聞こえていたという複数の証言があれば大きな証拠になり得ます。もしかしたら、調査対応を録音されていたのかもしれません。

中小企業の場合は、「威圧と誘導」はその場で止めて頂くしかありません。それが調査に立ち会う税理士の仕事なのです。

現実には、税理士が立ち会っている場面で、調査官が納税者を叱りつけるということはまずありません。税理士が税務調査に立ち会っていたら、その行為は即問題視されて、税務調査が円滑に進まないからです。

あなたが調査官から犯罪捜査のごとき言葉を掛けられて、コワイと感じている姿を見せれば、調査官はうれしいはずです。税務調査のルールの基本を知らず、反論もせず怖がっているということは、多少強引に調査をしても大丈夫と思えるからです。

私達がビジネスを通じて自己実現を図るのと同じように、調査官の皆様も税務調査というビジネスを通じて自己実現を目指していらっしゃいます。なかでも経済的成功を収めるためには、税務調査で成果を出し国税庁内で昇進する必要があります。税務調査で成果といえば、増差所得(当初申告より税務調査により所得の金額が増えること)と不正の発見です。であるからこそ、税務調査に熱心に取り組んでいらっしゃるのです。

成果を出したいと思った時、もし相手が税法に詳しく無いのであれば後々問題になることもないので、強引に調査を進めることになるのかもしれません。そのリトマス試験紙として、あなたを叱りつけたりしてみて反応をみるということがあるのかもしれません。

この試験は付き添いを付けることも出来ますし、場合によっては代理で受験させることも出来ます(代理受験の場合は、無試験でパス出来ます)。あなたは、一人でその試験を受験するのか、税理士を付き添いに据えるのか、はたまた合法的に税理士に替え玉受験させるのかを選択出来るのです。

0−3.原則有料の税務調査対応の経済的効果

言うまでもないことかもしれませんが、税理士が税務調査対応を行う場合、有料になることが多いと思います。

経営者が自ら税務調査対応をする理由の一つとして、この税務調査の立会報酬が高いという認識があると思います。

「税務調査の対応に関する報酬を顧問税理士に払うくらいなら、税金を払った方が良い」という考え方も一利あると思います。私はあなたの考え方を尊重したいと思います。どうぞご自身で税務調査対応をお続け下さい。

しかし、「そもそも税務調査が来ても払う税金が少ないから」という考え方の場合、下記のような思わぬ見落としがある可能性がありますので、ご注意下さい。

  • 法人税は利益に対して課税されるが、消費税や源泉所得税など利益と無関係な税金もある
  • 税務調査で不正が一度発見されると税務調査の対象となる頻度が確実に上がる。払う税金がゼロで不正認定ということもある。
  • 税理士に税務調査対応を委任するとその時間を本業に使い利益を増やすことができる。
  • 税理士に税務調査対応を委任すれば税法を駆使してあなたを守ってくれる。 等

私に限らず税理士が、あなたから見たら高額な税務調査の立会報酬の見積もりを堂々と提示するのは、上記のようなメリットがあるからです。

この記事をご覧頂き、あなたの見えないところで、税理士が何をしているのかを知ることで、その価格の妥当性について知って頂けると幸いです。

0−4.税務調査対応は書き切れません。

前提条件の最後に、悲しいお知らせがあります。

この長い記事を全て読んで内容を暗記したとしても、それでベストな税務調査対応が出来るようになるというほど甘い話ではありません。

税務調査における税務調査対応は、あなた(経営者)とあなたの会社の状況に応じて組み立てていく必要がありますし、何より、調査官の調査の進め方に対しても臨機応変に対応する必要があります。

あなたは、この記事を読んで、税理士が、あなたが想像した以上にきめ細やかな税務調査対応をしていることに気づくでしょう。しかし、その記載内容以外にも、文章には出来ない駆け引きや交渉のレベル、トーンがあります。

書いてあるようにやったけど上手くいかなかったというクレームはお控え下さい。そんな単純なものではないのです。

だからこそ、税理士に税務調査対応させることに意味があるのです。

まだどうしようか迷っている方は、是非、続きの内容をご覧下さい。読了後、どうしようか決めて頂けたらと思います。

この記事では、一度も税務調査を受けたことのない経営者の方にも参考になるように、税務調査の実際の流れに沿って、税務調査における注意点をご紹介していきたいと思います。

それでは、内容に入っていくことにしましょう。

1.税務調査って何?

税務調査の定義を知らずに税務調査を語ってはいけません。ですが、実は税務調査の定義は税法のどこにも書いていません。「通達」といって国税庁内の内規のなかで最近(平成24年9月)やっと明確になったばかりです。

国税通則法第7章の2(国税の調査)関係通達 第一章1−1(「調査」の意義)
(1) 法第7章の2において、「調査」とは、国税(法第74条の2から法第74条の6までに掲げる税目に限る。)に関する法律の規定に基づき、特定の納税義務者の課税標準等又は税額等を認定する目的その他国税に関する法律に基づく処分を行う目的で当該職員が行う一連の行為(証拠資料の収集、要件事実の認定、法令の解釈適用など)をいう。(注) 法第74条の3に規定する相続税・贈与税の徴収のために行う一連の行為は含まれない。

つまり、国税庁側からみた税務調査の目的は、

  1. 課税標準等又は税額等を認定する目的
  2. その他国税に関する法律に基づく処分を行う目的

であり、

その為に行われる税務調査の内容とは、

  1. 証拠資料の収集
  2. 要件事実の認定
  3. 法令の解釈適用  など

ということになります。

税務調査が来るということは、当然、当初の申告よりも税額を増やして「認定」をしたり、重加算税や青色申告取消などの「処分」を狙っています。それを行うために、あなたの会社まで訪問(臨場)し、証拠資料を収集したり、あなたに質問したりして、要件事実の認定を行い、税務のグレーゾーンについても「国税当局としての解釈をしたうえで」これを適用するのです。

2.税務調査は断れない

こうした税務調査の紹介記事を書く場合、税務調査の来る確率の話が冒頭に来るのが普通ですが、その議論は実は不毛な議論です。

税務調査の事前通知が来てしまったら税務調査は断れないからです。(とはいえ、皆さん、ご関心の高いところだとは思いますので、後ほど「13.あなたの会社に税務調査が来る確率」で簡単にご紹介しようとは思います。)

税務調査が嫌だ、コワイという経営者でも、税務調査が少ないという理由で業種を選んだり、税務調査が来ないように決算を操作したりする経営者は見たことがありません。

税務調査の通知が来たら税務調査は受けるのです。まずは、そこから覚悟を決めてスタートしましょう。

2−1.税務調査の受忍義務

よくご質問頂くのが、税務調査を拒否できないか?という話です。

結論から先にいうと、税務調査を受けるのは「義務」なので拒否は出来ません。納税者には税務調査を受けなければならない義務(受忍義務)が課せられているのです。

ご存じの方も多いかもしれませんが、広い意味での税務調査には、強制的な調査と任意の調査があります。

強制的な調査とは、裁判所の捜査令状をとって行われるものです。つまり、これは税務調査ではなく税務「捜査」なのです。あの有名な映画「マルサの女」では、納税者に対して捜査令状を見せるシーンがありました。つまり、あの映画のメインの舞台は強制調査の現場なのです。国税犯則取締法という法律に基づく調査で、あなたが受ける任意の調査とは事情が大きくことなります。「マルサの女」は税務調査の参考になる部分もありますが、あくまでもエンターテイメントとして楽しむものなのです。

あなたが受けることになる税務調査は国税通則法に基づく税務調査です。この税務調査のことが、一般的に任意調査と呼ばれるのは、強制捜査と対比する意味で任意といわれているだけです。なぜなら、国税通則法第127条によって、厳しい罰則が定められているからです。

国税通則法第百二十七条  次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
一  第二十三条第三項(更正の請求)に規定する更正請求書に偽りの記載をして税務署長に提出した者
二  第七十四条の二、第七十四条の三(第二項を除く。)、第七十四条の四(第三項を除く。)、第七十四条の五(第一号ニ、第二号ニ、第三号ニ及び第四号ニを除く。)若しくは第七十四条の六(当該職員の質問検査権)の規定による当該職員の質問に対して答弁せず、若しくは偽りの答弁をし、又はこれらの規定による検査、採取、移動の禁止若しくは封かんの実施を拒み、妨げ、若しくは忌避した者
三  第七十四条の二から第七十四条の六までの規定による物件の提示又は提出の要求に対し、正当な理由がなくこれに応じず、又は偽りの記載若しくは記録をした帳簿書類その他の物件(その写しを含む。)を提示し、若しくは提出した者

もし、あなたが税務調査を拒否した場合、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金を受けなければならないのです(上記の国税通則法第127条1項2号の下線部分)。

懲役まである罰則ですから、あなたが税務調査は断固拒否だとすると、そこまでの覚悟をもって挑む必要があります。普通は、そこまでの心意気をもった方はいらっしゃらないでしょう。

この任意調査の場合、強制調査と違い調査日程の調整が可能です。強制調査の場合は、捜査令状があるので国税局の指定する日に税務調査を受ける以外に選択はありませんが、任意調査の場合には、ごく限られた一定の要件を満たした場合以外は、税務署からあなたの元へ事前通知がなされます。この事前通知の後に日程調整を行ったうえで、「実地の調査」と呼ばれる、あなたの事業所での税務調査が行われることになっています。

任意調査における「任意」とは日程の調整が出来るという程度の意味しかないのです。

事前通知や日程の交渉(7−3)、事前通知が行われない場合の一定の要件(7−4)についての詳細は、のちほどそれぞれご紹介します。

2−2.税務署職員の質問検査権の意義と範囲

税務署の職員には、質問検査権という権利が認められています。税務調査は、この質問検査権の行使として行われます。

調査官が、法人の代表者であるあなたに質問し、事業に関する帳簿書類その他の物件を検査し、又は当該物件の提示若しくは提出を求めることができるのは、質問検査権という権利が認められているからなのです。

 (当該職員の所得税等に関する調査に係る質問検査権)国税通則法第七十四条の二

国税庁、国税局若しくは税務署(以下「国税庁等」という。)又は税関の当該職員(税関の当該職員にあつては、消費税に関する調査を行う場合に限る。)は、所得税、法人税又は消費税に関する調査について必要があるときは、次の各号に掲げる調査の区分に応じ、当該各号に定める者に質問し、その者の事業に関する帳簿書類その他の物件(省略)を検査し、又は当該物件(その写しを含む。次条から第七十四条の六まで(当該職員の質問検査権)において同じ。)の提示若しくは提出を求めることができる。 (以下省略)

先ほどご紹介した受忍義務は、この質問検査権の行使に対して課せられる義務です。つまり受忍義務の範囲は質問検査権の範囲と一致しているということです。したがって、税務調査を受ける側であるあなたは、質問検査権の範囲を正確にを理解しておく必要があります。

税務調査対応における良くある間違いは、法律に定められた質問検査権の範囲を逸脱した調査官の調査行為を受け容れてしまうことです。

質問検査権の範囲を知るうえで有用な情報が 「税務調査手続に関するFAQ」(一般納税者向け)に記載されているので、ご紹介しましょう。

「税務調査手続に関するFAQ」(一般納税者向け)

問7 法人税の調査の過程で帳簿書類等の提示・提出を求められることがありますが、対象となる帳簿書類等が私物である場合には求めを断ることができますか。
法令上、調査担当者は、調査について必要があるときは、帳簿書類等の提示・提出を求め、これを検査することができるものとされています。 この場合に、例えば、法人税の調査において、その法人の代表者名義の個人預金について事業関連性が疑われる場合にその通帳の提示・提出を求めることは、法令上認められた質問検査等の範囲に含まれるものと考えられます。 調査担当者は、その帳簿書類等の提示・提出が必要とされる趣旨を説明し、ご理解を得られるよう努めることとしていますので、調査へのご協力をお願いします 。

法人税の税務調査を受ける際に、代表者個人の通帳を提示するように求められるのはよくあることです。

このQ&Aをさらっと読んでしまうと、なにやら質問検査権の行使に対しては、例えそれが法人税の調査であっても代表者の個人的資料まで含めて何でも提出しなければいけないように読めてしまうでしょう。なので、私の方でアンダーラインを引かせて頂きました。その部分を良くご覧頂きたいのです。

まず、質問検査権の根拠条文(国税通則法第74条の2)をご覧頂くと、質問検査権といえども、行使の必要性がなければ行使出来ないということが明確に規定されています。また、Q&Aにおいても、その必要性の具体的事例として「事業関連性が疑われる場合」に代表者個人の通帳を提出する必要があると書かれています。

つまり、逆にいえば、法人の帳簿書類を確認している過程で、代表者個人預金について事業関連性が疑われるような事象が発見されなければ、代表者個人の預金通帳を提出する必要はないということです。

質問検査権の行使については、常に調査のための「必要性」が求められるということをしっかりと把握しておいて下さい。具体的には、法人以外の資料の提出を求められた際には、「なんの目的で必要なのか」を必ず確認して、その「必要性」が本当にあるのかどうかを検討したうえで提出するようにして下さい。

あなたが受忍義務を適切に果たさなければならないのは、適切に行使された質問検査権に対してだけということです。

3.税務調査における顧問税理士の役割

顧問税理士に毎月顧問料を払っていながら、顧問税理士の役割が何かについて知っている人が極めて少ないように思います。

あなたは、沢山いる税理士の中から(ほとんどの場合)1人を選んで、顧問契約を結んでいることと思います。その顧問契約の内容の中で委託する業務として税務代理を依頼していることと思います。この税務代理の仕事は、税理士資格を有するもののみに認められている独占業務です。税理士資格をもたない人が税務代理になることは出来ないのです。

税務代理を依頼するということは、あなたは税務申告や税務調査に関して、税務署に対してあなたの言い分を主張し答弁することを税理士に代わりにやらせることが出来るということです。したがって、税務調査における経営者の仕事というのは本来極めて小さく、基本的には顧問税理士があなたに代わって対応するというのが税理士法が想定した状況ということです。

極論すれば、顧問税理士に全部任せて、あなたは全く関与しなくても、法律的には問題ないのです。

(税理士の業務)第二条  税理士は、他人の求めに応じ、租税(省略)に関し、次に掲げる事務を行うことを業とする。
一  税務代理(税務官公署(省略)に対する租税に関する法令若しくは行政不服審査法 (昭和三十七年法律第百六十号)の規定に基づく申告、申請、請求若しくは不服申立て(省略)につき、又は当該申告等若しくは税務官公署の調査若しくは処分に関し税務官公署に対してする主張若しくは陳述につき、代理し、又は代行すること(次号の税務書類の作成にとどまるものを除く。)をいう。)
二  税務書類の作成(税務官公署に対する申告等に係る申告書、申請書、請求書、不服申立書その他租税に関する法令の規定に基づき、作成し、かつ、税務官公署に提出する書類(省略)を作成することをいう。)
三  税務相談(税務官公署に対する申告等、第一号に規定する主張若しくは陳述又は申告書等の作成に関し、租税の課税標準等(省略)の計算に関する事項について相談に応ずることをいう。)

しかし、異業種交流会などでお会いする複数の経営者の方達にお話を伺うと、税務調査の対応は経営者自身でしていて、顧問税理士はそれこそ数時間しか対応しないというお話を伺うことの方が多くて驚きます。

もちろん立会時間に応じて顧問税理士に報酬を支払う契約の場合、自分で税務調査の対応をした方が安上がりということはあるでしょう。しかし、自分で対応したことで、払う必要のない税金を払うことになっていたとしたら、その判断は経済合理性がないということになります。

かくいう私も税務調査の立会は時間制でご契約していますが、経営者の方にご登場願う時間は、初日の午前中と後は毎日夕方の1時間程度にしています。かといって私も終日調査の現場にいるわけではありません。調査の現場にいると課金されてしまうので、そこに居る必要がないときはお客様の会社の近くの喫茶店で別の仕事をして待機するようにしています。どうしても調査官が質問したいという場合に対応できる体制にしているのです。

税理士法の第2条に定められた税務代理の権限というものは、税務調査においては全範囲に及ぶものです。税理士は、税務調査の現場においては、経営者の代理人、つまり、経営者本人と同じ立場ということです。

既にお気づきかと思いますが、税務調査は国税通則法という法律に定められた法律行為なので、それを適正な形で受けるためには税法の知識が絶対に必要になります。経営者本人より税法に長けた税理士が税務調査に立ち会った方が、税法に従って理論整然と対応することが出来るに決まっています。

経営者の方は、税務処理の判断は顧問税理士に相談するのに、税務調査は自分が受けるというのでは、本当は意味がないのです。

調査官がもっともらしい税法解釈をすると経営者の方はそれを直ぐに信じてしまいますが、調査官は税務調査の結果で評価されています。あなたに得になる税法解釈をしても税務署内で出世は出来ません。税務調査もビジネスですので、そうした相手の事情を理解して、その見解の妥当性を判断する必要があります。

税務代理人の顧問税理士は、100%あなたの見方です。税務調査では顧問税理士を活躍させて乗り切るのが吉なのです。(100%見方でないとしたら、顧問料を支払うのを止めてしまいましょう。)

4.税務調査の目標

ここまでで、税務調査を受ける(受けなければならない)前提条件はご理解頂けたことでしょう。

実際の税務調査の流れに沿ってご説明を開始する前に、ブレない説明をするために税務調査における目標設定をしておきたいと思います。

4−1.税務調査の目標

この記事における税務調査対応の目標は、不正を行っていないのに不正と認定されてペナルティーを支払わないようにするという点におきます。ここでいう不正とは、「偽りその他不正の行為」と「仮装又は隠ぺい行為」に該当することをいいます。

したがって、申告納税制度の下で、納税者であるあなたが正しいと判断して提出した当初申告書があることが前提条件です。意図的に税額を減らすような申告をした場合に、税務調査でどう対応するか?という話ではありません。人間がやることですので法令解釈の誤解や税務処理のミスによって間違った申告をしてしまうことはありえます。それが故意によるものと誤解されないようにするということが目標です。

ペナルティーを回避するということは税務調査対応において、とても重要なことです。下図をご覧下さい。

税務調査のペナルティの概要と目標

「偽りその他不正の行為あり」と認定されると、追徴税額を対象期間は3年から7年に増えます。その結果、付随する過少申告加算税と延滞税も増加することになります。

「仮装又は隠ぺいあり」と認定されると、追徴税額の対象期間こそ変わらないものの、過少申告加算税に代わって重加算税が課されます。また、延滞税における計算期間の特例という軽減ルールが不適用になるため、延滞税の金額が多額になります。

本当にこうした不正の事実があるのであれば、このペナルティーは受けなければなりません。しかし、法令解釈の誤解や税務処理のミスの場合は、こうした不正には該当しません。そこを事実誤認されないようにやっていこうというのが、本記事における税務調査の目標になります。

なお、大手企業の申告漏れ報道で「見解の相違」という言葉を良く聞きます。見解の相違するところで負けないようにする方法は、基本的にはこの記事の対象外となりますが、ところどころ、そのエッセンスも織り込んであります。

5.税務申告における不正の意義とその効果

前項で概要を説明したとおり、不正と認定されると大きなペナルティーを受けることになります。

不正と認定されないためには、まずは不正の内容を理解する必要があります。あなたは税金を払いたくないという一心で、何が不正かも知らずに既に不正を働いている可能性があります。不正をしていないかどうかをよく読んで確認して下さい。

5−1.偽りその他不正の行為

偽りその他不正の行為について定まった定義はありません。

国税不服審判所の裁決の中で次の様な定義を見つけることが出来ます。

裁決事例集No.15−1頁

国税通則法第70条第2項第4号に規定する「偽りその他不正の行為」とは、正当な納税義務を免れる行為で社会通念上不正と認められる一切の行為を含むのであって、殊更に所得金額を過少に記載した内容虚偽の確定申告書を提出するいわゆる過少申告行為もこれに該当する。(以下、省略)昭和53年年3月27日裁決)

この定義は定義のようで定義になっていないように思いますが、ここから読み取ると、所得金額を少なくするために故意に行う一切の行為と解釈しても問題ないのではないかと思います。

偽りその他不正の行為が認定されると、通常3年分の追徴税額を支払うところが最大7年まで遡って追徴税額を払うことになります。実務ではいきなり3年から7年になるということはなく、その偽りその他不正の行為の度合に応じて5年になったり7年になったりします。なお、繰越欠損金の修正については最大9年まで遡ることになります。

また、度を超すと脱税行為として、10年以下の懲役又は1千万円以下の罰金の処分を受けることになります。

■偽りその他不正の行為

(国税の更正、決定等の期間制限)国税通則法第七十条

次の各号に掲げる更正決定等は、当該各号に定める期限又は日から五年(第二号に規定する課税標準申告書の提出を要する国税で当該申告書の提出があつたものに係る賦課決定(納付すべき税額を減少させるものを除く。)については、三年)を経過した日以後においては、することができない。
一  更正又は決定 その更正又は決定に係る国税の法定申告期限(還付請求申告書に係る更正については当該申告書を提出した日とし、還付請求申告書の提出がない場合にする決定又はその決定後にする更正については政令で定める日とする。)
二  課税標準申告書の提出を要する国税に係る賦課決定 当該申告書の提出期限
三  課税標準申告書の提出を要しない賦課課税方式による国税に係る賦課決定 その納税義務の成立の日

(2項から3項は省略)

4  偽りその他不正の行為によりその全部若しくは一部の税額を免れ、若しくはその全部若しくは一部の税額の還付を受けた国税(当該国税に係る加算税及び過怠税を含む。)についての更正決定等又は偽りその他不正の行為により当該課税期間において生じた純損失等の金額が過大にあるものとする納税申告書を提出していた場合における当該申告書に記載された当該純損失等の金額(当該金額に関し更正があつた場合には、当該更正後の金額)についての更正(前二項の規定の適用を受ける法人税に係る純損失等の金額に係るものを除く。)は、第一項又は前項の規定にかかわらず、第一項各号に掲げる更正決定等の区分に応じ、当該各号に定める期限又は日から七年を経過する日まで、することができる。

法人税第百五十九条

偽りその他不正の行為により、第七十四条第一項第二号(確定申告に係る法人税額)(省略)に規定する法人税の額(省略)に規定する法人税の額につき法人税を免れ、又は第八十条第六項(欠損金の繰戻しによる還付)(省略)の規定による法人税の還付を受けた場合には、法人の代表者(省略)、代理人、使用人その他の従業者(省略)でその違反行為をした者は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

5−2.重加算税

重加算税は仮装又は隠ぺいがあると認定された場合に課されるペナルティーです。

■仮装又は隠ぺい行為

(重加算税)国税通則法第六十八条  

第六十五条第一項(過少申告加算税)の規定に該当する場合(同条第五項の規定の適用がある場合を除く。)において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは、当該納税者に対し、政令で定めるところにより、過少申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額(その税額の計算の基礎となるべき事実で隠ぺいし、又は仮装されていないものに基づくことが明らかであるものがあるときは、当該隠ぺいし、又は仮装されていない事実に基づく税額として政令で定めるところにより計算した金額を控除した税額)に係る過少申告加算税に代え、当該基礎となるべき税額に百分の三十五の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する。(2項以下省略)

延滞税の計算期間の特例規定の取扱いについて(昭和51年6月10日)

国税通則法第61条(延滞税の額の計算の基礎となる期間の特例)の規定(以下「特例規定」という。)の取扱いを下記のとおり定めたから、今後処理するものからこれにより取扱われたい。(以下、省略)
(趣旨) 従来一部の税目について暫定的に定めていた特例規定の取扱いを、基本的な考え方は踏襲しながら、全税目を対象とした例規として整備を図るものである。


1 延滞税の計算の基礎となる国税が次のいずれかに該当するものである場合には、特例規定の適用はないものとして取扱う。
(1) 重加算税が課されたものである場合
(2) 国税犯則取締法第14条の規定による通告処分若しくは告発又は同法第13条若しくは第17条の規定による告発がされたものである場合
(注) 延滞税の計算の基礎となった国税について、当初過少申告加算税又は不納付加算税が課されていたところ、その後これらが取消しされ、重加算税が課された場合には、当初から特例規定の適用がないものとして、延滞税を徴収することになるのであるから留意する。
2 特例規定の適用に当っては、重加算税の計算の基礎となった部分の税額又は通告処分若しくは告発の原因となった部分の税額についてだけ適用がないものとして取扱う。

一般的には、偽りその他不正の行為の方が、仮装隠ぺい行為よりも広範囲の不正概念であるといわれています。したがって、偽りその他不正の行為に該当するけれども、仮装隠ぺいに当たらないということがあり得えます。

また、重加算税の場合には、必ず7年遡及するのかというと、出来ればそれも避けたいところではあります。税務調査に立ち会う我々税理士としては、重加算税のペナルティーと偽りその他不正の行為のペナルティーの両方をフルコースで受けることがないように税務調査対応をしていくことが重要なのです。

5−2−1.重加算税の経済的損失

重加算税の認定をうけない場合、非違事項が発見されたとしてもペナルティーは過少申告加算税(追徴税額の10%)で済みます。ところが、重加算税の認定を受けるとこれが35%に上がります。つまり、通常より25%増しでペナルティーを負うことになるのです。

また、延滞税の計算方法が変わってしまいます。重加算税でなければ「計算期間の特例」が適用され1年分のみの支払で許されるところ、重加算税が課されると支払期限日から実際の納付日までの分を全部支払わなければならなくなります。延滞税の率は、現在の低金利を前提としても公定歩合に7.3%を加算した率になりますので、延滞期間が長くなると、かなりの高利率(平成26年は9.2%)で長期間の利息を支払うことになるのです。

(延滞税)国税通則法第六十条

1 納税者は、次の各号の一に該当するときは、延滞税を納付しなければならない。
一  期限内申告書を提出した場合において、当該申告書の提出により納付すべき国税をその法定納期限までに完納しないとき。
二  期限後申告書若しくは修正申告書を提出し、又は更正若しくは第二十五条(決定)の規定による決定を受けた場合において、第三十五条第二項(期限後申告等による納付)の規定により納付すべき国税があるとき。
三  納税の告知を受けた場合において、当該告知により納付すべき国税(第五号に規定する国税、不納付加算税、重加算税及び過怠税を除く。)をその法定納期限後に納付するとき。
四  予定納税に係る所得税をその法定納期限までに完納しないとき。
五  源泉徴収による国税をその法定納期限までに完納しないとき。
2  延滞税の額は、前項各号に規定する国税の法定納期限(省略)の翌日からその国税を完納する日までの期間の日数に応じ、その未納の税額に年十四・六パーセントの割合を乗じて計算した額とする。ただし、納期限(省略)までの期間又は納期限の翌日から二月を経過する日までの期間については、その未納の税額に年七・三パーセントの割合を乗じて計算した額とする
(3項以下省略)

(延滞税の割合の特例)租税特別措置法第九十四条

国税通則法第六十条第二項 及び相続税法第五十一条の二第一項第三号 に規定する延滞税の年十四・六パーセントの割合及び年七・三パーセントの割合は、これらの規定にかかわらず、各年の特例基準割合が年七・三パーセントの割合に満たない場合には、その年(次項において「特例基準割合適用年」という。)中においては、年十四・六パーセントの割合にあつては当該特例基準割合に年七・三パーセントの割合を加算した割合とし、年七・三パーセントの割合にあつては当該特例基準割合に年一パーセントの割合を加算した割合(当該加算した割合が年七・三パーセントの割合を超える場合には、年七・三パーセントの割合)とする

(延滞税の額の計算の基礎となる期間の特例)国税通則法第六十一条

修正申告書(偽りその他不正の行為により国税を免れ、又は国税の還付を受けた納税者が当該国税についての調査があつたことにより当該国税について更正があるべきことを予知して提出した当該申告書を除く。)の提出又は更正(偽りその他不正の行為により国税を免れ、又は国税の還付を受けた納税者についてされた当該国税に係る更正を除く。)があつた場合において、次の各号の一に該当するときは、当該申告書の提出又は更正により納付すべき国税については、前条第二項に規定する期間から当該各号に掲げる期間を控除して、同項の規定を適用する。
一  その申告又は更正に係る国税について期限内申告書が提出されている場合において、その法定申告期限から一年を経過する日後に当該修正申告書が提出され、又は当該更正に係る更正通知書が発せられたとき。
その法定申告期限から一年を経過する日の翌日から当該修正申告書が提出され、又は当該更正に係る更正通知書が発せられた日までの期間
二  その申告又は更正に係る国税について期限後申告書(還付金の還付を受けるための納税申告書で政令で定めるもの(以下「還付請求申告書」という。)を含む。以下この号において同じ。)が提出されている場合において、その期限後申告書の提出があつた日の翌日から起算して一年を経過する日後に当該修正申告書が提出され、又は当該更正に係る更正通知書が発せられたとき。
その期限後申告書の提出があつた日の翌日から起算して一年を経過する日の翌日から当該修正申告書が提出され、又は当該更正に係る更正通知書が発せられた日までの期間

調査を受ければ73%が何らかの非違事項を発見されます。そして、そのうちの2割以上で不正が発見されています(こんなに高いはずがないのですが)。税務調査の負の連鎖を起こさないためにも、重加算税を取られない税務調査対応が重要ということです。

5−2−2.上場を目指している会社は要注意

重加算税を課されるということは、仮装又は隠ぺいをしたということです。

仮装又は隠ぺいが何かについての具体例は下記の国税庁の事務運営指針をご覧下さい。

(隠ぺい又は仮装に該当する場合)
1 通則法第68条第1項又は第2項に規定する「国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し」とは、例えば、次に掲げるような事実(以下「不正事実」という。)がある場合をいう。
(1) いわゆる二重帳簿を作成していること。
(2) 次に掲げる事実(以下「帳簿書類の隠匿、虚偽記載等」という。)があること。
1 帳簿、原始記録、証ひょう書類、貸借対照表、損益計算書、勘定科目内訳明細書、棚卸表その他決算に関係のある書類(以下「帳簿書類」という。)を、破棄又は隠匿していること
2 帳簿書類の改ざん(偽造及び変造を含む。以下同じ。)、帳簿書類への虚偽記載、相手方との通謀による虚偽の証ひょう書類の作成、帳簿書類の意図的な集計違算その他の方法により仮装の経理を行っていること
3 帳簿書類の作成又は帳簿書類への記録をせず、売上げその他の収入(営業外の収入を含む。)の脱ろう又は棚卸資産の除外をしていること
(3) 特定の損金算入又は税額控除の要件とされる証明書その他の書類を改ざんし、又は虚偽の申請に基づき当該書類の交付を受けていること。
(4) 簿外資産(確定した決算の基礎となった帳簿の資産勘定に計上されていない資産をいう。)に係る利息収入、賃貸料収入等の果実を計上していないこと。
(5) 簿外資金(確定した決算の基礎となった帳簿に計上していない収入金又は当該帳簿に費用を過大若しくは架空に計上することにより当該帳簿から除外した資金をいう。)をもって役員賞与その他の費用を支出していること。
(6) 同族会社であるにもかかわらず、その判定の基礎となる株主等の所有株式等を架空の者又は単なる名義人に分割する等により非同族会社としていること。

相当悪質な場合に、仮装又は隠ぺいとして認定されることがご理解頂けると思います。

したがって、税務の話と離れてしまいますが、上場を直前に控えている場合(上場直前期又は直前前期)に税務調査で重加算税を課されてしまうと、上場審査を通らない可能性が出てきてしまいます。現状の上場審査ルールに明確に書いてあることではありませんが、過去の審査基準にはハッキリと書いてあったことですので、絶対に上場出来ないということではないかもしれませが、審査上悪影響があることは避けられないでしょう。

5−2−3.単純ミスと重加算税

調査の現場で、本来交際費であるものをうっかり会議費として処理されているのを見逃していたところ、意図的な仮装経理であるとして重加算税の対象になると指摘を受けたことがあります。

これは重加算税の対象になりません。こうした単純ミスは仮装又は隠ぺいには該当しないのです。そのことは、さきほどご紹介した事務運営指針に明記されています。

(帳簿書類の隠匿、虚偽記載等に該当しない場合)
3 次に掲げる場合で、当該行為が相手方との通謀又は証ひょう書類等の破棄、隠匿若しくは改ざんによるもの等でないときは、帳簿書類の隠匿、虚偽記載等に該当しない。
(1) 売上げ等の収入の計上を繰り延べている場合において、その売上げ等の収入が翌事業年度(その事業年度が連結事業年度に該当する場合には、翌連結事業年度。(2)において同じ。)の収益に計上されていることが確認されたとき。
(2) 経費(原価に算入される費用を含む。)の繰上計上をしている場合において、その経費がその翌事業年度に支出されたことが確認されたとき。
(3) 棚卸資産の評価換えにより過少評価をしている場合。
(4) 確定した決算の基礎となった帳簿に、交際費等又は寄附金のように損金算入について制限のある費用を単に他の費用科目に計上している場合。

私の場合は、上記の事務運営指針を示して反論して事なきを得ましたが、不正発見割合の高さをみると、こうした本来重加算税の対象にならないものまで、重加算税になっているのではないかという懸念があります。

調査官は不正を発見すると人事考課が上がります。ですから、重加算税をとることを常に考えています。我々調査を受ける側はそれを前提にして準備をしておく必要があるのです。

なぜ、私がこれほどまでに重加算税と認定されることを避けるのかというと、重加算税を課されたという調査の履歴は、国税庁のデータベースに記録されるからです。そして、一度重加算税を課されたことが記録されると、この記録を覆すことは不可能に近いそうです。

赤字の法人の割合が7割を超えているということは、法人税を追徴するのはハードルが高い状態です。したがって、調査官は不正発見の「評点」を取りにきます。

例えば、大赤字の会社に税務調査にきて、否認事項が発見されたとします。この時、仮装、隠ぺいと認定されて重加算税が課されたとしても税額が発生しないということがあり得ます。これで調査官はOKなのです。追徴税額は取れなかったけれど不正は発見したという手柄はつくからです。納税者の側からみたら、どっちでも良いような否認事項を、必死に調査するのにはこうした理由があるのです。

国税のデータベースに重加算税の履歴が残るということは、そうした履歴のない優良法人に比べて高い頻度で税務調査が行われる先になるということです。

あなたが、税務調査が大好きで、毎年でも来て欲しいというならどうぞ重加算税を受けて下さい。顧問税理士は立会報酬が毎年貰えて儲かります。しかし、わたしはそんなことで売上を上げたいとは思いません。

それに、税務調査が来るということは、事前の準備から当日、そして調査終了後まで、あなたの貴重な時間を沢山奪います。税務調査が、あなたの会社の売上、利益にプラスになるということはありません。そんなことに時間を割くより、本業に注力して、利益を増やし、それに対して顧問料を増額して頂きたいのです。

重加算税を受けないことを税務調査の目的に据える理由はそこにあるのです。

税務調査対応の記事なのに、まだ税務調査が始まっていませんね。

次からは、税務調査に向かう流れをご紹介していきます。ここまで学んだ知識を活かす場面が出てきますので、どうぞ、ゆっくりじっくりご覧下さい。

6.税務調査の流れ

これから税務調査の流れに沿ってポイントをご説明していこうと思います。先にザックリ大きな流れを掴んで頂いた方が理解が深まると思いますので、流れだけ先にご説明しましょう。

税務調査の流れ

まず、税務調査は必ず税務署からの調査日程の通知から始まります。

次に、日程が決まったら、税務調査に立ち会う税理士とあなた(経営者)との作戦会議を行います。

その後、税理士の指示のもとで、社内に必要な書類があるかどうかなどの点検を実施します。

そのうえで、実地の調査を迎えます。初日と2日目以降は1日のスケジュールが違うので、分けてご説明します。

最終的に実地の調査が終わった後に、税理士があなたの代理人として調査官と交渉し着地点を見いだして、修正申告か更正決定(税務署側が税額を確定すること)が行われて税務調査が完了します。

7.税務調査の通知

税務調査は、原則として、事前の通知を行ったうえで行われます。

さきほどご紹介した強制捜査の件が、どれほど異例なことかは、下記の法律があることを確認頂ければご理解頂けると思います。

(納税義務者に対する調査の事前通知等)国税通則法第七十四条の九

税務署長等(国税庁長官、国税局長若しくは税務署長又は税関長をいう。以下第七十四条の十一(調査の終了の際の手続)までにおいて同じ。)は、国税庁等又は税関の当該職員(以下同条までにおいて「当該職員」という。)に納税義務者に対し実地の調査(省略)において第七十四条の二から第七十四条の六まで(当該職員の質問検査権)の規定による質問、検査又は提示若しくは提出の要求(以下「質問検査等」という。)を行わせる場合には、あらかじめ、当該納税義務者(当該納税義務者について税務代理人がある場合には、当該税務代理人を含む。)に対し、その旨及び次に掲げる事項を通知するものとする。

一  質問検査等を行う実地の調査(以下この条において単に「調査」という。)を開始する日時
二  調査を行う場所
三  調査の目的
四  調査の対象となる税目
五  調査の対象となる期間
六  調査の対象となる帳簿書類その他の物件
七  その他調査の適正かつ円滑な実施に必要なものとして政令で定める事項

7−1.税務調査の通知が顧問税理士にいく方法

「税務署から税務調査の電話がかかってくる。」というと、考えただけでもコワイという経営者の方が時々いらっしゃいます。大丈夫です。この通知は顧問税理士に行くようにすることが出来ます。

通知を顧問税理士の方にしてもらうには、税務代理権限証書という書類の「調査の通知に関する同意」にチェック(レ点)を入れるだけです。通常、この書類はあなた(会社側)ではなく、税理士が作成し、あなたが捺印して提出することになります。しかし、電子申告の場合には、税理士が税理士の電子署名を付与するだけで税務代理権限証書を送信することが出来るため、見たことがない書類かもしれません。顧問税理士に、税務調査の通知があなたの所に来ないようになっているかどうか、確認してみて下さい。

税務代理権限証書

もし、あなたのところに税務署から電話で通知が来たとします。

その場合には、「顧問税理士に任せているのでそちらに連絡して下さい」と伝えて頂けば大丈夫です。この手続については、「税務調査手続に関するFAQ(税理士向け)」にハッキリと記載されています。

「税務調査手続に関するFAQ(税理士向け)」

問10 これまでに提出した税務代理権限証書には「事前通知に関する同意」を記載していませんでした。このため、実地の調査があった場合には、顧客納税者の方にも事前通知が行われると思いますが、その際に、顧客納税者の方から事前通知は税務代理人を通じて行ってほしいという要望があった場合には、税務代理人を通じて行ってもらうことは可能ですか。

提出された税務代理権限証書に「事前通知に関する同意」が記載されていない場合には、納税者の方にも事前通知を行うこととなりますが、その際に、納税者の方から事前通知事項の詳細は税務代理人を通じて通知しても差し支えない旨の申立てがあったときには、納税者の方には実地の調査を行うことのみを通知し、その他の事前通知事項は税務代理人を通じて通知することとしています。

7−2.顧問税理士以外の税理士に税務調査の対応を依頼できる

ここまで読んで頂いて、少なからず税務調査の対応は税理士に任せた方が良いと思って頂けていると思います。

しかし、これまであなたが一人で税務調査対応をしているということは、「顧問税理士では不安だ、任せられない」という気持ちがあるのではないでしょうか。そういうことであれば、税務調査だけを別の税理士に依頼されてはどうでしょうか。場合によっては複数の税理士に委任することだって出来るのです。

というのも、税務署との関係においては、あなたと顧問税理士との関係性は、税務代理権限証書が提出されているかどうかでしかありません。税務代理人は一人でなければならないという法律はありませんので、税務調査の通知が来てから新たな税理士に顧問を依頼することも可能なのです。

先ほどの税務代理権限証書を税務調査を依頼する税理士に作成してもらい、貴方の印鑑を捺印して税務署に提出すれば、税務調査の間だけこの税理士に代理を任せることが出来てしまいます。

しかし、一番の適任者は顧問税理士であることは間違いありません。出来るだけ顧問税理士にやってもらえるようにしましょう。逆説的に言えば、税務調査対応をしっかり出来る税理士と顧問契約をするべきでしょう。

7−3.税務調査の日程は調整可能

税務調査の日程について、税務署の言うとおりにしないといけないと思っている経営者の方がいます。これは間違いです。税務調査の日程は調整することが出来ます。しかも、それは法律上認められていることですので、税理士ではないあなたでも普通に交渉して大丈夫なことなのです。

(納税義務者に対する調査の事前通知等)

国税通則法第七十四条の九
(1項省略)
2  税務署長等は、前項の規定による通知を受けた納税義務者から合理的な理由を付して同項第一号又は第二号に掲げる事項について変更するよう求めがあつた場合には、当該事項について協議するよう努めるものとする。

税理士は税務調査の日程を調整することに馴れていますから、この調整から税理士に任せた方が良いと思います。

単に、あなたの「この時期は忙しいから外して欲しい」という要望でも聞いて頂ける可能性はあります。国税庁内の扱いを定める通達の中では、下記のとおり、「納税義務者等の業務上やむを得ない事業がある場合」は日程変更の合理的な理由とされているからです。

(事前通知した日時等の変更に係る合理的な理由)国税通則法第7章の2(国税の調査)関係通達

4-6 法第74条の9第2項の規定の適用に当たり、調査を開始する日時又は調査を行う場所の変更を求める理由が合理的であるか否かは、個々の事案における事実関係に即して、当該納税義務者の私的利益と実地の調査の適正かつ円滑な実施の必要性という行政目的とを比較衡量の上判断するが、例えば、納税義務者等(税務代理人を含む。以下、4-6において同じ。)の病気・怪我等による一時的な入院や親族の葬儀等の一身上のやむを得ない事情、納税義務者等の業務上やむを得ない事情がある場合は、合理的な理由があるものとして取り扱うことに留意する。
(注) (省略)

【税務手続等に関するFAQ(職員用)】
問1-49 「多忙である」ことは合理的な理由になるのか。

(答)単に多忙であることをもって、合理的な理由に該当するとは判断できませんが、多忙であることの具体的内容を聴取し、個々の実情を斟酌した上で、「業務上やむを得ない事情」として調査日時等の変更が可能か否か検討することになります(手続通達4-6 )。

7−4.突然の訪問でも強制捜査以外は日程変更が可能

恐らく多くの方がご心配されているのが、朝、突然、税務署の職員が訪問してくるということでしょう。それが捜査令状を伴う強制捜査であれば、黙って受けるしかありません。しかし、そうでなければ「任意調査の範疇で行われた無予告調査」ということになります。

税務調査は、事前通知が原則ではありますが、一定の要件のもと、無予告の調査も法律で認められています(下記参照)。しかし、あなたの会社が、無予告調査の対象となる「一定の要件」を満たしていなければ、その無予告調査は「違法」ということになります。ですから、要件を知っておくことは重要なことなのです。

(事前通知を要しない場合)国税通則法第七十四条の十

前条第一項の規定にかかわらず、税務署長等が調査の相手方である同条第三項第一号に掲げる納税義務者の申告若しくは過去の調査結果の内容又はその営む事業内容に関する情報その他国税庁等若しくは税関が保有する情報に鑑み、違法又は不当な行為を容易にし、正確な課税標準等又は税額等の把握を困難にするおそれその他国税に関する調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認める場合には、同条第一項の規定による通知を要しない。

上記の条文を読むと、次のいずれかに該当する場合に無予告調査を受ける可能性があることとされています。

  • 違法又は不当な行為を容易にし、正確な課税標準等又は税額等の把握を困難にするおそれそがある場合
  • その他国税に関する調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある場合

この要件だと曖昧ですが、具体的な例が公開されています。

国税通則法第7章の2(国税の調査)関係通達の制定について(法令解釈通達)

(「違法又は不当な行為を容易にし、正確な課税標準等又は税額等の把握を困難にするおそれ」があると認める場合の例示)

4-9 法第74条の10に規定する「違法又は不当な行為を容易にし、正確な課税標準等又は税額等の把握を困難にするおそれ」があると認める場合とは、例えば、次の(1)から(5)までに掲げるような場合をいう。
(1) 事前通知をすることにより、納税義務者において、法第127条第2号又は同条第3号に掲げる行為(=税務署長の指示に従わない、仮装、隠ぺい行為が行われること(筆者加筆))を行うことを助長することが合理的に推認される場合。
(2) 事前通知をすることにより、納税義務者において、調査の実施を困難にすることを意図し逃亡することが合理的に推認される場合。
(3) 事前通知をすることにより、納税義務者において、調査に必要な帳簿書類その他の物件を破棄し、移動し、隠匿し、改ざんし、変造し、又は偽造することが合理的に推認される場合。
(4) 事前通知をすることにより、納税義務者において、過去の違法又は不当な行為の発見を困難にする目的で、質問検査等を行う時点において適正な記帳又は書類の適正な記載と保存を行っている状態を作出することが合理的に推認される場合。
(5) 事前通知をすることにより、納税義務者において、その使用人その他の従業者若しくは取引先又はその他の第三者に対し、上記(1)から(4)までに掲げる行為を行うよう、又は調査への協力を控えるよう要請する(強要し、買収し又は共謀することを含む。)ことが合理的に推認される場合。

(「その他国税に関する調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」があると認める場合の例示)
4-10 法第74条の10に規定する「その他国税に関する調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」があると認める場合とは、例えば、次の(1)から(3)までに掲げるような場合をいう。
(1) 事前通知をすることにより、税務代理人以外の第三者が調査立会いを求め、それにより調査の適正な遂行に支障を及ぼすことが合理的に推認される場合。
(2) 事前通知を行うため相応の努力をして電話等による連絡を行おうとしたものの、応答を拒否され、又は応答がなかった場合。
(3) 事業実態が不明であるため、実地に臨場した上で確認しないと事前通知先が判明しない等、事前通知を行うことが困難な場合。この場合も対応の仕方は変わりません。税務署の職員の方には出直してもらいます。

こちらをご覧頂くと、無予告調査は、そう易々と出来るモノではなくハードルが高いことがご理解頂けると思います。つまり、調査官が来たからといって全て受け容れる必要はなく、あなたの会社がこの要件に該当していなければ事前の通知が必要になるので、その日はお引き取り願っても問題ないということです。

したがって、無予告で調査官があなたの会社にやってきたら、まずは店舗や事務所の中で待たせるのではなく、調査官には大変申し訳ないのですが税理士に連絡が付くまで外で待ってもらうようにするのが正しい対応になります。そして、直ぐに顧問税理士の携帯電話に電話をして、その後の対応について指示をもらうようにしましょう。

税理士は、上記の例示のどれに該当することを理由として、無予告調査をすることになったのかを調査官に質問します。そして、そのおそれがない旨を説明し、税務代理人(=税理士)立会のもとで、あらためて税務調査を行うことを提案します。上記の要件に該当しなければ無予告調査は出来ないので調査官は税務署に帰るしかありません。税務調査は法律に基づいて行われているからです。そこには調査官の裁量の余地はありません。

無予告調査を受けやすいのは現金商売をしている方です。現金は預金と違って脱税がしやすいからです。事前通知をしてしまうと、その実際の状況を確認することが出来ません。したがって、税務調査する側からすると無予告調査の方が都合が良いのです。しかし、国税庁の内部でも、下記のように現金商売だからといって、無予告調査をして良いということにはなっていません。

(「その営む事業内容に関する情報」の範囲等)
4-7 法第74条の10に規定する「その営む事業内容に関する情報」には、事業の規模又は取引内容若しくは決済手段などの具体的な営業形態も含まれるが、単に不特定多数の取引先との間において現金決済による取引をしているということのみをもって事前通知を要しない場合に該当するとはいえないことに留意する。

調査官が、突然あなたのお店にやってきて「あなたの会社は現金商売だから無予告調査の対象です」と説明して税務調査を開始するということは良くあることです。あなたは国家公務員である調査官が、まさか法律や国税庁内のルールに従わずに税務調査を行うなどと疑うことはないでしょうから、その無予告調査を受け容れてしまうでしょう。

しかし、そこでお店の中に入れずに、すぐに顧問税理士に連絡をとることが出来れば、この規定を使ってあなたを守ってくれるはずです。法律を武器にして顧問先を守るのが税理士の仕事だからです。

無予告調査でやってきた調査官には、上記の例示に当てはまらない場合には、その日は税務署に帰ってもらいます。そして、あらためて税理士を介して日程調整を行ったうえで、しっかりと受忍義務を果たしましょう。

この時大事なことは税務調査を拒否するという態度を示さないことです。「税務調査は受けます。但し、今日は都合が悪いので別の日程でお願いします。」という前提でないと受忍義務違反となります。2−1でお伝えしたとおり、調整できるのは税務調査の日程だけであり税務調査は受けなければならないことを忘れないようにして下さい。

8.税理士との作戦会議

税務調査の日程が決まったら、顧問税理士となるべく早く作戦会議を開いて下さい。臨場調査の当日に向けて、この作戦会議でやるべきことが沢山出ることがあるからです。

8−1.調査税目の確認

まずは何の税金の調査に来るのかの確認をしましょう。

何の税金の調査かは、税理士が調査官と日程調整の連絡をする際に、あなたに変わって調査官からヒアリングしてくれます。

法人税、消費税、源泉所得税、印紙税というところが主な調査対象になるでしょう。

なお、書面による通知は、税務署側が必要と認めた時しかしてくれません。したがって、税理士としては、電話をよーく聞いておく必要があります。

税務署側がついうっかり源泉所得税と印紙税について伝え漏れてくれたのなら、もし、その調査のために資料の提出を要求してきた場合に、その点について指摘することが出来ます。その意味では、税務署と電話で話をする際には録音できる設備を用意してくことも税理士としての仕事のひとつになります。

本来は電話で通知した後に書面を送ってくれさえすれば、こんなことをしなくても良いのですが、どうしてこんなやり方なんでしょうか?

税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)
問12 希望すれば、事前通知を書面で行ってもらうことはできますか。
実地の調査の事前通知の方法は法令上は規定されておらず、原則として電話により口頭で行うこととしています。また、通知の際には、通知事項が正確に納税者の方に伝わるように丁寧に行うこととしています。 なお、電話による事前通知が困難と認められる場合は、税務当局の判断で書面によって事前通知を行う場合もありますが、納税者の方からの要望に応じて事前通知内容を記載した書面を交付することはありません。

8−2.調査対象期間の確認

どの期間を調査するのかを顧問税理士が確認してくれているので、それを教えてもらいましょう。

通常、一度の調査で直近3年分の調査を行います。この調査対象期間を特定することも実は重要です。

調査しても何も出ないということになった場合や、調査の結果、何か否認事項が出てしまった場合であっても、事前通知した対象期間より前の期間で非違が疑われない限り、調査対象期間を延長するということは出来ないこととされています。

調査しても何も出てこないからといって現場の調査官の独断で調査対象期間を拡大できるようになってしまうと、事前通知の意味がなくなってしまいます。調査対象期間よりも前の期間の資料の提出を求められた場合には、どんな非違事項が疑われているのかを調査官に確認しておく必要があるということです。

但し、その追加する理由については説明することはない、とも明言されています。理由を説明しないで、どうやって納税者に対して理解と協力を得るつもりなのか、正直ナゾの部分が残ります。

税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)
問30 調査の過程で、事前通知を受けた税目・課税期間以外にも調査が及ぶこととなった場合には、調査の対象を拡大する旨や理由は説明してもらえるのですか。また、調査の対象が拡大することに対して納得できない場合には、不服を申し立てられますか。
実地の調査を行う過程で、把握された非違と同様の誤りが事前通知をした調査対象期間より以前にも発生していることが疑われる場合のように、事前通知した事項以外の事項について非違が疑われた場合には、事前通知した事項以外の事項について調査を行うことがあります。 この場合には、納税者の方に対し、調査対象に追加する税目、課税期間等について説明し理解と協力を得た上で行いますが、当初の調査の場合と同様、追加する理由については説明することはありません。 
また、調査を行うこと自体は不服申立てを行うことのできる処分には当たりませんから、仮に事前通知事項以外の事項を調査することの必要性についてご納得いただけない場合でも、不服申立てを行うことはできません。

8−3.事前準備資料の確認

現況調査の際に用意すべき資料についても顧問税理士が確認してくれているので、教えてもらいましょう。

必要な書類は事前に印刷して用意しておきましょう。

税務署の職員は実地の調査の際にパソコンを持ってくることは基本的にありません。したがって、大量の紙資料を印刷するのが面倒な場合にデータで資料を用意しようとするならば、それを見るためのパソコンの用意も必要になります。パソコンは上手に利用すると効率的な税務調査を可能にします。しかし、それがあなたにとって有利かどうかというと考えどころだと思います。

事前準備を依頼される可能性の高い資料をいくつかリストアップします。

  1. 調査対象税目の税務申告書の控え
  2. 総勘定元帳
  3. 領収書、請求書等の証憑ファイル
  4. 株主総会、取締役会の議事録
  5. 各種社内規程

このうち3の「領収書、請求書等の証憑ファイル」の整備状況が、実地の調査の戦法に影響を与えます。

調査官があなたやあなたの会社のスタッフの手を借りずに、自分で証憑を見つけ出すことが出来る程度に領収書、請求書等が整理されている場合、税務調査の立会にほとんど時間を割く必要はありません。自分で証憑を見つけ出すことが出来る程度の整理とは、例えば、入金日順、支払日順などの秩序だった順序で整理されていることをいいます。

資料の整理が悪いことで、調査期間中、調査官の下働きをさせられている経営者や経理スタッフの方がいます。日頃の書類整理が良ければこうした作業をしなくても良くなるのです。下働きをさせられると、調査官との間で、心理的にも対等レベルを維持するのが難しいように感じます。つまり、交渉の時に負ける要因を一つ作ってしまうということです。

後からまとめて整理するのは大変ですので、この段階でバラバラのものを3年分整理しましょう、とは口が裂けても言い出せませんが、次回からは税務調査をオートメーション化させるために証憑の整理に気を付けるようにして下さい。

望ましいのは、以下の写真のような整理です。

証拠資料のファイリング例−1証拠資料のファイリング例−2証拠資料のファイリング例−3

宣伝みたいですいませんが、弊社の経理アウトソーシングをご利用頂くと、こうしたファイルの整備まで行わせて頂いております。会計事務所に単に帳簿を付けるということを依頼するだけではなく、こうしたファイリングまで依頼しておくと税務調査の時に調査官の下働きをしなくても済みますので、オススメしたいと思います。

8−4.実地の調査のスケジュールの確認

実地の調査は初日と2日目以降で少し流れが違います。詳細は、「10.実地の調査」のところで詳しくご説明しますので、ここでは全体の流れを経営者と顧問税理士とで確認します。

8−4−1.実地の調査の初日の流れ

初日の流れは次のような流れになります。

  1. 会社の事業概要の説明
  2. 調査対象期間の事業概況の説明
  3. 税務調査の時間割の説明
  4. 税務調査で調査官へのお願い事項の伝達
  5. 帳簿書類等の見方の説明
  6. 調査開始
  7. 初日の調査結果の確認と質疑応答
  8. 調査官からもらった宿題対応とその他指摘事項に対する対応方法の協議

初日は、まず会社の事業概要と調査対象期間における概況説明を求められます。ここだけは顧問税理士ではなく、あなた(経営者)にして頂いた方が良いと思います。

「3.税務調査における顧問税理士の役割」で税務代理権限の範囲を説明した際に、経営者は税務調査に全く関与しなくても問題ないと説明しましたが、ここであなたに登場頂くことで「税務調査に協力する」ということを態度を示したいと思います。

その後については、顧問税理士に一任しても問題ないと思います。調査官の方からあなたにお尋ねしたいということがあるかもしれませんので、その場合は、出来る範囲で時間を調整して対応すれば良いと思います。調査する側も、税務調査といえども、調査先の業務の邪魔をしないというのが原則ですので、了解して頂けるのが普通です。

8−4−2.実地の調査の2日目以降の流れ

2日目は次のような流れになります。

  1. 前日の宿題の回答(出来るものだけ)
  2. 調査開始
  3. その日の調査結果の確認と質疑応答(と結果の報告(最終日の場合)
  4. 調査官からもらった宿題対応とその他指摘事項に対する対応方法の協議

その日が最終日であれば、3のところで結果の報告がなされます。何も問題なければ良いのですが、調査官も仕事で調査に来ているので何らかの非違事項を指摘してくるのが普通です。その場合、修正申告の勧奨がなされます。調査終了後、あなたと顧問税理士との二人でその対応について協議することになります。

8−4−3.実地の調査終了後の流れ

まずは修正申告をする前提で、調査官との間で顧問税理士が折衝を行います。経営者が納得する形で交渉が成立したら修正申告書を提出することになります。

しかし、修正申告を行うと、提出後、異議申し立て→審査請求→税務訴訟という形で争う権利を失うことになります。

修正申告をしない場合、税務署はその対応を検討のうえ、更正決定の処分を下します。修正申告をしないと必ず更正決定の処分になるということではないのがポイントです。

更正処分が決まると更正通知書があなたの会社に届きます。更正通知書には「理由附記」がなされます。その更正処分決定の理由を読んで不服があったとしても1ヶ月以内に納税はしましょう。なぜなら、その期限を超えると、その納税にかかる延滞税が発生するからです。払ったうえで争うというのがセオリーなのです。争いに勝てば逆に延滞金がついて税金は戻ってきます。

更正処分について争うなら通知から2ヶ月以内に、税務署長に対して不服申し立てを行います。逆にいえば、修正申告はしないけれど更正処分を受けて納税をしてから放置しておけば、結局は修正申告をしたのと同じ状態に戻るということです。

8−5.調査官の職歴から税務調査の傾向と対策を練る

税理士は、税務調査の日程のやり取りする際に、実地の調査にやってくる調査官の氏名を聞き取ります。そして、その氏名に基づき「10年職歴」を使って、その調査官がこれまでどのような経歴で仕事をしてきた人なのかをチェックして、今回の税務調査の傾向と対策を練ります。その結果を教えてもらいましょう。

10年職歴

※3年分はウェブサイトで見ることが出来ます。

実地の調査の中身については、具体的にルールが定められているわけではないので、誰が調査官として実地の調査に来るかによって、税務調査の傾向と対策は代わってきます。

調査官は一人の時もありますが、二人一組で来社するのが一般的です。

通常は、ベテラン(上席)1名と新人(若手)1名という組み合わせが多いです。この時重要なのは、もちろんベテランの方の職歴です。

上席の職歴によって、実地の調査の傾向が変わってきます。例えば国税局出身の調査官の場合、修正申告をしなければ更正をすれば良いという考え方の人が多いので、修正申告をすることが交渉の材料になりにくいというような傾向があるのです。

また、より重要なのは、統括官と呼ばれる実地の調査に来る調査官の上司の職歴です。実は、実地の調査の主導権を握っているのは、実地の調査にやってくる上席ではなく統括官です。良くある話ですが、上席が問題ないと言っているのに、実地の調査が終わらないのは、統括官に「何か見つけてこい」と執拗に指示を出されているからです。

税務調査に関する決裁権は、統括官にあるので、統括官の職歴も、良く確認して対応方法を決めています。

ご興味のある方は、国税職員録の読み方を購入されることをお勧めします。

9.社内税務点検の実施

税理士と自社の取引・処理の中で、税務署から指摘を受けそうな部分についてお互いに意見交換をしておきましょう。

適正な納税・申告をしているとはいえ、税法上、明確な基準のない部分を自社の判断で処理している場合は、税務調査で否認されるかもしれないという心配があると思います。そういう処理については、調査官にその処理の背景を即答出来るかどうかが重要ですので、改めてあなたと税理士で確認をしておくと良いと思います。

こうした確認作業が、次の「社内点検」の段階での「重要な意思決定」に関係することになります。

税務調査がいつ来るか解っているのに、その準備をしないのは勿体ないです。(「勿体ない」という表現にも意味があります。)

どういう準備をするのかを具体的にお伝えしましょう。

9−1.実地の調査前の修正申告の検討

税務点検の実施の第一の目的は、実地の調査をスムーズに乗り切ることです。しかし、この目的も大事ですが、最も大事なのは、実地の調査の前に修正申告書を提出するかどうかの判断をするという第二の目的にあります。

無駄な税金を払わないということでいうと、現地調査直前での修正申告は強力な力を秘めています。税務調査の通知後、実地の調査が実施される前に修正申告を行った場合、その修正申告は自主申告の取扱となり、過少申告加算税(本税の10%)のペナルティーを回避することが出来るのです。(納税が遅れたことに伴う延滞税は発生しますが期間の特例の適用があります。)

(過少申告加算税)国税通則法第65条 期限内申告書(還付請求申告書を含む。第3項において同じ。)が提出された場合(期限後申告書が提出された場合において、次条第1項ただし書又は第6項の規定の適用があるときを含む。)において、修正申告書の提出又は更正があつたときは、当該納税者に対し、その修正申告又は更正に基づき第35条第2項(期限後申告等による納付)の規定により納付すべき税額に100分の10の割合を乗じて計算した金額に相当する過少申告加算税を課する。
(2項から4項省略)
5 第1項の規定は、修正申告書の提出があつた場合において、その提出が、その申告に係る国税についての調査があつたことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでないときは、適用しない。

法人税の過少申告加算税及び無申告加算税の取扱いについて(事務運営指針)
修正申告書の提出が更正があるべきことを予知してされたと認められる場合)

2 通則法第65条第5項の規定を適用する場合において、その法人に対する臨場調査、その法人の取引先の反面調査又はその法人の申告書の内容を検討した上での非違事項の指摘等により、当該法人が調査のあったことを了知したと認められた後に修正申告書が提出された場合の当該修正申告書の提出は、原則として、同項に規定する「更正があるべきことを予知してされたもの」に該当する。
(注) 臨場のための日時の連絡を行った段階で修正申告書が提出された場合には、原則として「更正があるべきことを予知してされたもの」に該当しない。

この提案を私がすると、やる気のある調査官が修正申告の部分以外のところに特化して調査をするかもしれないと心配される経営者の方もいらっしゃいます。しかし、続いて説明する9−2以降の税務点検も併せて実施し、その結果として修正申告するのであれば、大きな否認事項は見つからないはずです。

税務点検の結果、税務調査に入れば発見される可能性の高い否認事項を抱えたまま実地の調査を迎えるか、それとも、修正申告書を先に提出してペナルティーの支払いを回避した状態で実地の調査を迎えるかの判断を、実地の調査の前の段階でしておくことが後悔のない税務調査対応のために必要です。

実地の調査で容易に発見されてしまうような否認事項を、そのままの状態で税務調査を受けるのはムダにペナルティーを負担することになります。だから、実際に修正申告をするかどうかは別として、事前に修正申告の検討をしないのは「勿体ない」のです。

9−2.税務調査で良く見られるところの確認

税務調査で良く見られるところに共通の特長は二つあります。

  1. 仮装、隠ぺいが行われている可能性が高く重加算税がとれる可能性があるところ
  2. 法人税を追徴することで源泉所得税の追徴も可能になるような「一粒で二度おいしい」ところ

この二つの特長を、一つだけではなく両方含む項目もあります。これから税務調査で良く見られるところをリストアップしてご説明していきますが、上記の2つを常に意識しながら読み進めて下さい。

また、ここでは取り上げられなかった項目についても、自社の事業に照らして、上記の2点からリスクのありそうな部分について点検を行うようにして下さい。

9−2−1.売上の計上漏れ

売上に計上漏れがないかは必ず確認される項目です。

売上を抜く(除外するといいます)行為は、ミスで発生することがないとは言い切れませんが、大部分は意図的に行われているケースが多いものですので、仮装・隠ぺいに該当し重加算税の対象になることが多い項目です。したがって、調査官としては、見つけたい項目の1番目になり得るのです。

税理士は経営者に対して、売上除外の有無について質問して確認するというプロセスになります。

例えば売上を計上し忘れていても、正常な売上であれば、いずれ入金されてきますので、その時点で売上の計上がなされます。この場合、売上の計上漏れではなく、9−2−5の期ズレの問題となります。

あなたが巧妙に売上を抜いたつもりでも、色々なところで足がつくものです。

在庫が減っているのに売上が計上されていないとか、来店の予約が入っているのに売上が計上されていないという形で、入金記録以外の他の証拠によって売上除外は立証されていきます。最終的には、あなたの個人の預金通帳の提示を求められ、除外した売上代金の入金が確認されたらジ・エンドです。

税務調査前のタイミングでの、税理士の確認時点で正直に伝えるかどうかを良く考えておいて下さい。この段階で修正申告すれば、過少申告加算税(10%)だけではなく、重加算税(35%)の回避にもなるのです。

まさに「ファイナルアンサー」です。

9−2−2.役員による経費の私的流用

役員による経費の私的流用は、調査官にとっては「一粒で二度おいしい」否認項目になります。

私的経費を事業経費にみせるために操作を行っていれば仮装と認定され、重加算税の対象になり得ます。

また、役員の側からみれば、定時同額の役員報酬以外で会社から経済的利益を受けているので役員賞与に該当します。 役員賞与は損金不算入なうえに、役員には所得税がかかります。その所得税を源泉する義務は会社にありますので、源泉所得税の徴収・納付漏れということになります。

つまり、役員による経費の私的流用が一つ見つかると、下記の3つの否認を受ける可能性があるのです。

  • 損金不算入
  • 重加算税
  • 源泉所得税の徴収漏れ

これはうっかり勘違いということもあり得ます。そうなると重加算税という話はなくなりますが、意図的に行われているケースも少なくありません。したがって、顧問税理士の側が改めてがその有無について経営者に確認するというプロセスになります。

実態として、どこからが個人でどこまでが事業なのかを明確に判別することは簡単なことではありません。グレーな部分があるのは事実です。しかし、事業にまったく関係ないものが経費に含まれているのであれば、話は別です。その辺の見極めをこの段階でしておきたいものです。

9−2−3.外注費

外注費も、複数の論点で構成されていて複雑であり、かつ税法的に明確に規定しづらい部分なので、税務調査で良く指摘を受ける項目です。

税務調査では、外注費か給料かの判断が良く問われるところです。下記のように、外注費で処理した方が納税者としてはメリットがあるので、調査官は、その外注費が給料ではないか?と指摘をしてくるのです。

  • 外注費・・・消費税の課税取引(控除可能)&源泉徴収の必要なし
  • 給料・・・消費税の非課税取引(控除不能)&源泉徴収が必要

この論点だけで長文の記事が書けるところなので、詳細は別の記事をいずれ用意したいと思いますが、税務判例に照らすと、次の様な要素を総合的に判断すべきとされています。

【参考資料】大工、左官、とび職等の受ける報酬に係る所得税の取扱いに関する留意点について(情報)

※下記の要素の全てか一部を満たすと給料になります。

  1. 他人が代替して業務を遂行すること又は役務を提供することが認められる場合
  2. 時間的な拘束(業務の性質上当然に存在する拘束を除く。)を受ける場合
  3. 指揮監督(業務の性質上当然に存在する指揮監督を除く。)を受ける場合
  4. まだ引渡しを了しない完成品が不可抗力のため滅失するなどした場合において、自らの 権利として既に遂行した業務又は提供した役務に係る報酬の支払を請求できる場合
  5. 材料又は用具等(くぎ材等の軽微な材料や電動の手持ち工具程度の用具等を除く。) を報酬の支払者から供与されている場合

外注費の支払いが多い方は、是非、上記の参考資料をダウンロードしてご一読下さい。

9−2−4.仕入の水増し、棚卸の漏れ

仕入の水増しをすることで売上原価が増えて利益が減ります。棚卸資産の期末棚卸額を減らすことでも売上原価が増えて利益が減ります。

仕入の水増しは意図的に行われていることが多いので、現地調査が始まるまえに税理士としては経営者に確認しておきたいところです。

仕入の水増しは、仕入の出口(出庫の状況)で発覚しますし、(粗)利益率の急激な低下という形でアシが付いてしまうのが普通です。

期末棚卸額については、単に棚卸が出来ていないということもあり得ます。棚卸の状況について、棚卸表と期末付近の仕入の状況を照らしあわせて確認します。

9−2−5.売上、経費の期ズレ

現地調査の結果として、売上、経費のズレしか見つからないということはよくあることです。

これが意図的に売上を後ろにズラしているとしたら問題です。これは「仮装」に該当しますので重加算税の対象になります。こうした意図的な期ズレを起こしていないかを事前に確認する必要があります。

しかし、経営者の側に意図的にズラすインセンティブというのはそれほど高くないと思います。売上の計上を遅らせた結果として、当期の売上げは減りますが来期の売上は増えるからです。また、ミスによる期ズレの場合は、重加算税にはなりません(「5−2−3.単純ミスと重加算税」を参照)。

売上の計上時期のズレが、調査項目の1位としてあげられているサイトが他にいくつかありました。税務調査が、適正な納税を促すための制度であるならば、期ズレというプラスマイナスゼロのものではなく、根本的に所得の額を増加させる間違いを発見すべきだと思いますが、その期ズレが意図的であれば不正発見ということになる以上、その不正発見を狙いたいという調査官の気持ちは理解せざるを得ないことかもしれません。

さて、ここまで事前の税務点検を行いました。

実地の調査の日までの間に修正申告するかどうか、良く検討して結論を出すようにして下さい。

次から、いよいよ実地の調査のはじまりです。

10.実地の調査

実地の調査とは、国税の調査のうち、調査官が納税義務者の事業所等に訪問して質問検査権等を行使することです。

(「実地の調査」の意義)国税通則法第7章の2(国税の調査)関係通達

3-4 法第74条の9及び法第74条の11に規定する「実地の調査」とは、国税の調査のうち、当該職員が納税義務者の支配・管理する場所(事業所等)等に臨場して質問検査等を行うものをいう。

ここからは実地の調査の中身についてご説明していきましょう。

10−1.実地の調査・初日編

実地の調査は初日が一番重要だと思います。今回の実地の調査のフレームワークを決めることになるからです。

初日のスケジュールは、およそ次のような流れになります。

私は、初日の午前中は、経営者の方にも必ず同席頂くようにしています。但し、初日の午後以降は仕事の予定を入れて頂いて構いません。次の流れのうち、2は経営者の方からして頂くのが良いと思うからです。

なお、ここでいう経営者とは、従業員20名未満の会社を想定して書いています。ある程度大きな会社で財務担当役員、財務部長、経理課長というような役職がある場合には、出来れば財務部長、現実には経理課長(税務担当の課長)がすることが多いと思います。

  1. 調査官との挨拶
  2. 経営者から事業概要の説明と最近の概況説明
  3. 調査官と経営者・顧問税理士との質疑応答
  4. 顧問税理士から調査の進め方に関する依頼の伝達
  5. 事前に用意した資料の内容と見方の説明
  6. 調査官による帳簿閲覧開始
  7. 初日の調査内容に関する打ち合わせ
  8. 経営者(あなた)と顧問税理士の打ち合わせ

上記の流れに沿って説明していきます。

10−1−1.調査官との挨拶

通常、朝10時に調査官が来社します。当たり前ですが、あいさつと名刺交換をすることになります。

その際、先方は必ず身分証明書と国税質問検査章を提示します。これをジックリ見せてもらうようにして下さい。

この国税質問検査章には、その担当官が何の税目を調査する権限を有しているかが書いてあります。この辺を確認するのは税理士の仕事ではありますが、あなたも税務調査の機会でもないと見ることが出来ないので、是非ご覧頂けたらと思います。

この国税質問検査章には担当官が何の税目の調査をすることが出来るかが書いてあります。そこに記載のない税目については、その担当官が調査することは出来ないルールですので、確認する意味があるのです。

もう一つ、大事なことは、この国税質問検査章を調査官が忘れた場合には、税務調査が出来ないということです。

この国税質問検査章等の携帯は国税通則法に定められた行為です。したがって、国税質問検査章を実地の調査に忘れてきた場合、それは違法な税務調査ということになってしまうのです。

(身分証明書の携帯等)国税通則法第七十四条の十三

国税庁等又は税関の当該職員は、第七十四条の二から第七十四条の六まで(当該職員の質問検査権)の規定による質問、検査、提示若しくは提出の要求、閲覧の要求、採取、移動の禁止若しくは封かんの実施をする場合又は前条の職務を執行する場合には、その身分を示す証明書を携帯し、関係人の請求があつたときは、これを提示しなければならない。

なお、この時、顧問税理士の側も、普段あなたが見ることがない「税理士証票」というカードを提示します。こちらも普段見ることのないモノだと思いますので、税務調査の機会に税理士に見せてもらうと良いと思います。なんてことはない顔写真入りの税理士としての身分証明書です。しかし、これをもっていないとあなたの代理人をすることは出来ません。さすがに不携帯だからと言って税務調査が中止ということにはならないと思いますが、調査官の不携帯を指摘するなら、税理士の側も不携帯というわけにはいかないでしょう。

(税理士証票の提示)税理士法第三十二条

 税理士又は税理士法人が税務代理をする場合において、当該税務代理に係る税理士が税務官公署の職員と面接するときは、当該税理士は、税理士証票を提示しなければならない。

10−1−2.経営者から事業概要の説明と直近の事業の概況説明

挨拶が終わると、調査官から事業概要の説明を求められます。ここはあなたの出番です。会社のパンフレットなどをご用意頂き、事業内容について説明して下さい。

調査官は、この事業内容の説明を聞いて、売上と原価、経費の構造(いわうるビジネスモデル)について理解しようとします。事業概要を聞くことで、それがどのような会計処理になっているのか、どの勘定科目にどういう内容のものが含まれているのかということを把握して、効率的に税務調査を進めるのが目的です。

次に直近の事業概況の説明を求められます。これは経営者の方から、ざっくりとお話をして頂ければと思います。こちらから多くを語らなくても、調査官が知りたいことを色々と質問してくれますので、それに回答していけば良いでしょう。

概要説明も概況説明も大事なことは、必要以上に説明しないということです。不明点は調査官が質問してくれますので、その質問に答えていけば良いのです。

10−1−3.調査官と経営者・顧問税理士との質疑応答

調査官はあなたの説明を受けて、質問をしてきます。その回答もやはり必要以上に詳細に説明しないようにして下さい。

このような説明をすると、何もしゃべらなくなってしまう経営者の方もいらっしゃいますが、そうではありません。具体的には次の様な対応を取るように心がけて下さい。

  • イエスノーで答えられる質問には、イエス・ノーで回答する。
  • オープン質問には、端的に短く回答する。

あなたが、税務調査的に良くない回答を始めてしまった場合、税理士がコメントを差し込んで軌道修正します。

あなたが、区切りのない長い説明を始めると税理士が訂正のコメントを入れるタイミングが失われてしまいます。あまりに問題のある経営者のコメントを訂正するために、被せるようにコメントを入れると「先生は黙っていて下さい」と税理士は調査官に注意されることがあります。こうした事態が発生しないように短く、区切りを入れながら、端的に説明するようにして下さい。

「先生は黙っていて下さい」で、経営者の方は、「やばいことを言っちゃったんだな」と気が付いて頂けたら幸いです。

10−1−4.顧問税理士から調査の進め方に関する依頼の伝達

私が税務調査の立会をさせて頂く場合には、具体的な帳簿の確認に入るまえに、調査方法に関する依頼を行います。

依頼する事項は次のとおりです。

  1. 税務調査の対応は税務代理人である私がするということ
  2. 経営者(社長)は業務多忙のため、税務調査の立会が常時出来ないこと
  3. 反面調査に行く前に当方で必要な証拠資料が入手出来るかどうかを確認して頂くこと
  4. 社員に質問したいことがある場合には、社長か税務代理人の許可を得ること

私は、あなたには初日の午前中と、あとは可能であれば毎日夕方に行う定例の打ち合わせに参加して頂けたら充分であると考えています。それ以外は通常通りに営業活動に勤しんで頂いた方が、会社の業務にも税務調査にも支障がないと思います。

10−1−4−1.反面調査に一定の歯止めを掛ける

税務調査に際して、調査官は取引先に出向いて、事実認定のための証拠の収集を行うことが出来るとされています。この調査のことを反面調査といいます。

反面調査があったからといって、特に後ろめたい気持ちになる必要はありません。しかし、反面調査が来たということだけで、あなたが脱税をしているという発想になる取引先が少なからず存在することは念頭において対応する必要があります。

反面調査は、本調査先である、あなたの会社が必要充分な資料提供と質問対応をしている場合には、本来はする必要のないことです。したがって、反面調査が必要がある場合にのみ行われるように依頼をしておくことに意味があるのです。

実は、国税内部の規定でも同様の解釈がされていて、みだりに不必要な反面調査を行うことを禁じています。したがって、これらを遵守して税務調査を行って頂けるように依頼をするのです。

 「反面調査については、下記の通達等に従い、必要なものだけに限定して行って頂けますようお願いいたします。」

  • 昭和36年7月14日国税庁長官通達
  • 昭和51年4月1日税務運営方針の一部「調査方法等の改善」
  • 平成12年7月個人課税事務提要、平成13年7月法人課税事務提要
  • 調査事務の概要(東京国税局、平成18年7月)

これによって、反面調査を出来なくすることは出来ませんが、一定の抑止力にはなると思います。真面目な調査官なら、反面調査を実施する前にそのことを教えてくれる可能性もあります。

事前に反面調査があることが分かった場合、その取引先に事前に連絡しておいた方が良いと思います。取引先も突然調査に来られて驚くと思いますので、それを少しでも和らげておくべきでしょう。

取引先には、次のことを伝えておくと良いと思います。

  • 調査官があなたの会社以外の資料(=反面調査の範囲外の資料)を見る可能性があるので注意して欲しいこと
  • あくまでも任意の調査なので資料のコピーの提供や聴取書へのサインは強制されるものではないこと

反面調査から判明した事実に基づいて、取引先の調査をすることも出来るという風に、国税当局は考えています(下記FAQを参照)。あなたの会社の調査から端を発してこうしたことが行われることで取引先との関係悪化の可能性があるということです。これを事前に伝えて謝罪しておくのと、何も言わないで結果的にそうなるのとでは、取引先との信頼関係が変わってくると思います。

自社の調査対応だけでも大変なのに、、、。と思うかもしれませんが、こうした配慮も出来るだけした方が良いでしょう。

税務調査手続等に関するFAQ(職員用)

問1-7 納税義務者の取引先等に対して反面調査を行っていたところ、当該取引先等の申告内容について非違が認められた場合、どのような手続で調査に移行すべきか。

納税義務者の取引先等に対する反面調査の過程において、当該取引先等の申告内容に 非違が認められた場合は、当該取引先等の所轄署の調査担当者が改めて、当該取引先等に対し、法令上の事前通知を行った上で実地の調査を行うことになります。なお、この場合において、当該取引先等が、反面調査を実施している調査担当者の所掌であり、事前通知することにより違法又は不当な行為を容易にし、正確な課税標準等又は税額等の把握を困難にするおそれが認められる場合には、上記にかかわらず臨場先から統括官等に電話により承諾を得た上で、事前通知を行うことなく実地の調査を実施することになります。

後ほど、「10−2−2.質問応答記録書」で説明する内容は、反面調査先になった時にも活用できる内容です。他に適当な資料がなければ、この記事を教えてあげて、適切に対応してもらうようにしましょう。

税理士としては、こうした形で税務調査から生ずるマイナス効果を出来るだけ減らす対策まで、キチンとレクチャーしておきたいところです。

10−1−4−2.社内で社員・従業員に自由に声をかけるのを抑止する

社員・従業員に調査官が自由に声をかけるようなこともできるだけ抑止しておいた方が良いでしょう。

さきほど2−2でご紹介した質問検査権の条文(国税通則法第74条の2)で質問検査権の及ぶ範囲を再度確認してみましょう。

 (当該職員の所得税等に関する調査に係る質問検査権)国税通則法第七十四条の二

国税庁、国税局若しくは税務署(以下「国税庁等」という。)又は税関の当該職員(省略)は、所得税、法人税、地方法人税又は消費税に関する調査について必要があるときは、次の各号に掲げる調査の区分に応じ、当該各号に定める者に質問し、その者の事業に関する帳簿書類その他の物件(省略)を検査し、又は当該物件(省略)の提示若しくは提出を求めることができる。

一  所得税に関する調査 (省略)

二  法人税又は地方法人税に関する調査
次に掲げる者
イ 法人(法人税法第二条第二十九号の二 (定義)に規定する法人課税信託の引受けを行う個人を含む。第四項において同じ。)
ロ イに掲げる者に対し、金銭の支払若しくは物品の譲渡をする義務があると認められる者又は金銭の支払若しくは物品の譲渡を受ける権利があると認められる者

三  消費税に関する調査(次号に掲げるものを除く。) (省略)

この条文をみると、法人税の調査においては「法人」に質問できる権利が認められていることが確認出来ます。この「法人」の範囲に、経営者であるあなたとその代理人である顧問税理士が含まれるのは当然として、社員・従業員が含まれるのかどうかというところが問題です。

当然、国税当局は「含まれる」と解釈していますし、調査を受ける側としても実際に取引を行っているのが経営者ではなく、社員・従業員である以上、これを拒否できると考えるのは、無理があると思います。しかし、だからといって、むやみやたらに調査官が社内で社員・従業員を捕まえて税務調査のヒアリングをされても困ります。

税法の良く解っていない社員・従業員が調査官に話した内容を前提として税務調査が進行してしまうと、税務調査が長期化してしまいます。したがって、社員・従業員に対する質問検査権の行使は、あなたの代理人である税理士の管理下で行う必要があるのです。

実は、税務署内で職員向けに利用されている税務調査のマニュアル(調査における法律的知識(平成17年6月東京国税局課税第二部法人課税課))には、次のような記載があります。

従業員等へ質問する場舎には、調査を円滑に進めるため、あらかじめ代表者の了解を得た上、代表者から協力するよう指示してもらう。

これを根拠として、次の様に依頼をするようにしましょう。

当方の了解なく従業員等へ直接質問することはお控え下さい。当方にご相談頂けばご質問の内容に応じて、回答するのに最適な社員・従業員から回答させて頂きます。

反面調査の件も社員への質問の件も依頼をしたところで、現実には反故にされる可能性があります。しかし、やられてから止めて欲しいと依頼するのと、やられる前に依頼しておくのとでは、税務調査における心理的立場が違ってくるでしょう。

調査官には質問検査権があり、あなたには受忍義務があります。それを双方の信頼関係を基礎として円滑に実行していくための取り組みが、ここでご紹介した調査の進め方に関する依頼です。

こうして文章で書くと、調査官に対して要求するので横柄な対応と思う方もいるかもしれませんが、税務調査の妨害を目的としたものではないことが調査官に伝わるように顧問税理士が依頼をするのでご安心下さい。

10−1−5.事前に用意した資料の内容と見方の説明

次に、税務調査の為に用意した資料の内容と見方の説明をします。

調査官のいる会議室に常時居て、調査官の指示に従い資料を出したりコピーを取ったり、都度都度対応することが税務調査の対応だと考えている経営者もいるようですが、私は、その必要はないと思います。

しかし、それをしないためには、誰でも、ルールさえわかれば資料が探せるようにファイリングされているという条件を満たす必要があります。

「8−3.事前準備資料」でご説明したように整理されているのであれば、探し方を2,3の事例に沿って説明したら、あとは会議室から退室しても許されます。

私は退室する際に次のことを告げるようにしています。

  • 私の税務調査の立会報酬は時間変動性であること
  • 呼び出して頂ければすぐに会議室に来れるようにはしていること
  • 夕方16時の打ち合わせ時に、その日の質問をまとめてお伺いし回答すること
  • コピーは夕方の打ち合わせの時に依頼を受けて、まとめて対応すること

段ボールとかビニール袋に証憑類がどさっと入っているような状況で、調査官から必要な資料が探せないから探して欲しいと言われたら、断りにくいと思います。

しかし、秩序だって整理されている状況ならば、どうしても探して欲しいと言われたら断らないかもしれませんが、なんでこんな簡単なことも出来ないのかという雰囲気は出すと思います。ましてや、税務調査の立会報酬が時間変動性であることを伝えてありますので、経費が増えて納税額が減りますよ、という嫌味の一つも言ってしまうかもしれません。

それを言われても仕方がないなと調査官が思えるような資料のファイリングが出来ているのがベストだと思います。

税務調査の電話が来てから慌ててファイリングするというのは無理でありムダです。

日頃の経理業務の中で、いずれ受けるはずの税務調査に対して備えが出来ていることが肝心です。

10−1−5.調査官による帳簿閲覧の開始

ようやくここから調査の開始です。

実際は、ここまででお昼近くなっているので、資料の見方を確認すると調査官はお昼休みに出られることが多いです。

私もお昼に出て、そのままお客様のオフィスの近くで待機体制に入ります。その間、ビズ部の原稿をセッセと書くことになります。

ファイルの整理の仕方に問題がなければ、調査官は単独でどんどん調査を進めて下さいます。

夕方の打ち合わせの前に呼び出されることは、ほとんどありません。

10−1−6.初日の調査内容に関する打ち合わせ

16時になったら初日の調査内容に関する打ち合わせを行います。

もし、都合が付くか、興味があって参加したいということでしたら、あなたも参加されたら良いと思います。しかし、代理人である顧問税理士がいれば、不在でも問題はありません。

調査官の方から幾つか質問が出ると思います。即答できるものは即答し、調べる必要があるものは宿題にしてもらいます。

曖昧な記憶でいい加減な回答をするのは避けた方が良いと思います。確固たる証拠をもって回答するように心がけて下さい。

時々、特に若い調査官が1日2日では対応しきれないような途方もない宿題を出してくることがあります。その宿題が必要な理由を聞いて、できるだけ作業が増えないように交渉します。

ベテランの調査官の場合、初日の調査を経て、いきなり交渉してくることもあります。「これとこれを修正申告してくれたら、明日は調査に来ません」という内容の発言があるということです。

この時、代理人の顧問税理士の独断で受ける、受けないの判断は出来ません。あらかじめ、これくらいの金額なら終了にするという内諾を経営者と顧問税理士の間でとってあり、その範囲内であれば交渉成立です。

また、こうした取り決めが出来ていないのであれば、調査官に待ってもらって、調査官には聞こえない場所で経営者に連絡をとって了解を取り付けることになります。

10−2.実地の調査・2日目以降編

2日目以降は、基本的に毎日同じパターンです。

  1. 朝10時に調査官が来社
  2. 朝のミーティングとして、その前に出された宿題の提出、質問の回答の実施
  3. 終了後、調査開始
  4. 夕方16時にその日の調査内容に関する打ち合わせ
  5. 経営者(あなた)と顧問税理士の打ち合わせ

実地の調査が3日間以上予定されている場合、調査官が来社しないということは、反面調査に行っている可能性があります。反面調査が不要になるように出来る限り資料を提供すると約束したにも関わらず、調査官は反面調査にいくことがあります。

来社の予定に穴があく場合は、「その日は反面調査ですか?」と質問してみましょう。

その回答が反面調査ということならば、何が必要で反面調査にいくのかを聞いてみることです。その内容によっては、あなたの会社で用意できる資料によって反面調査を回避できることもあるでしょう。

調査官の側も、みだりに不必要な反面調査を行うことが禁じられていることは理解しているはずですので、それで反面調査を中止してくれるかもしれません。また、それでも反面調査を実施するということは、国税庁が定めたルールに逸脱する反面調査ではないかと抗議することも可能になります。こうした対応が取りやすいのも、初日に反面調査に無断でいかないように依頼してあるからです。

10−2−1.立証責任は調査官にあるのか、納税者にあるのか

税務調査をしている中で、調査官がいくつかの取引について処理に問題があるのではないかと指摘をしてきます。

調査官は税金を還すために来ているわけではありませんので、結果的に課税所得が増えるように益金を増やすか損金を減らす指摘をしてくることになります。

課税所得を増やす条件

指摘の結果として税額を増やすためには、決算書に計上されていない益金があることと決算書に計上されている損金の中に計上すべきものでないものがあることを立証することが必要になります。

この立証をする責任は調査官の側にあります。

なぜなら、「調査官が調査した結果」と「当初申告」との間に増差所得がある場合に、課税所得等又は税額等を更正することとされているからです。

(更正)国税通則法第二十四条

税務署長は、納税申告書の提出があつた場合において、その納税申告書に記載された課税標準等又は税額等の計算が国税に関する法律の規定に従つていなかつたとき、その他当該課税標準等又は税額等がその調査したところと異なるときは、その調査により、当該申告書に係る課税標準等又は税額等を更正する。

ここで間違えてはいけないのは、立証責任が調査官の側にあるからといって、あなたの側で当初申告の内容や根拠を説明する責任がなくなるわけではないということです。

受忍義務がありますので、当初申告における処理がどのような根拠で行われたものかを説明する責任を果たしたうえで、それを超えて、決算書に計上さていない益金があることと決算書に計上すべきでない損金を計上していないことまで立証する責任を負うものではないということです。

たとえば、取引先にリベートを支払ったとします。これを調査官が交際費として指摘をしてきました。この時、あなたは、その支払いをリベートとして処理した理由を説明する責任はありますが、交際費でないことまでを立証する責任はないということです。交際費になるという立証は調査官がする仕事なのです。

例外的に、立証責任が納税者側にあるといわれるケースがあります。それは、納税者にとって有利な主張をする場合です。

例えば、決算書に計上し忘れた経費があったとします。これが調査の際に発見されたとして、これを経費として認めてもらうには、納税者の側でそれが間違いなく経費として認められるものであることを立証する必要があります。

立証責任が納税者側にある場合の例示として、次のような条文があります。

(原告が行うべき証拠の申出)国税通則法第百十六条

国税に関する法律に基づく処分(更正決定等及び納税の告知に限る。以下この項において「課税処分」という。)に係る行政事件訴訟法第三条第二項 (処分の取消しの訴え)に規定する処分の取消しの訴えにおいては、その訴えを提起した者が必要経費又は損金の額の存在その他これに類する自己に有利な事実につき課税処分の基礎とされた事実と異なる旨を主張しようとするときは、相手方当事者である国が当該課税処分の基礎となつた事実を主張した日以後遅滞なくその異なる事実を具体的に主張し、併せてその事実を証明すべき証拠の申出をしなければならない。ただし、当該訴えを提起した者が、その責めに帰することができない理由によりその主張又は証拠の申出を遅滞なくすることができなかつたことを証明したときは、この限りでない。

(2項省略)

ここまで説明しても、調査官の側に立証責任があるという説明の条文はハッキリと書いていないので調査官に立証責任があると自信をもって主張できないという方のために、法律の条文ではありませんが、有力な根拠資料を一つご紹介したいと思います。下記の論文は国税庁のホームページ(タックスアンサー)に掲載されているものです。

「税務訴訟における立証責任−裁判例の検討を通じて−」小柳誠 税務大学校研究部教育官

1 研究の目的 司法制度改革の推進により、我が国もますます訴訟型社会の到来を迎えようとしていると思われる。税務訴訟に目を向けても、税務訴訟の発生件数は、近年増加する傾向にあり、税務訴訟においても訴訟型社会の到来を意識せざるを得ない状況にある。このような状況で、税務訴訟の判決の結果に着目してみると、国側敗訴の件数も増加傾向が認められる。このような状況が発生している要因の一つとして、税務訴訟における処分の取消訴訟においては、原則として、課税庁側に立証責任があることが考えられる。
ところで、税務訴訟における立証責任に関しては、従来から政府税制調査会でも取り上げられるなど重要な課題であるが、管見したところ、その議論の多くは、原則として、課税庁側に立証責任が分配されることを前提とした立証責任の分配に関するものが中心である。課税庁側に立証責任が分配されていることが、税務訴訟における裁判実務において、具体的にどのような影響を及ぼしているのかについての検討を踏まえた議論は、あまり行われていなかったと思われる。そこで、本研究においては、近時の具体的な裁判例について、立証責任の負担が判決の帰趨に対してどのような影響を及ぼしているのかについて分析、検討を行うことを通じて、税務訴訟における立証責任のあり方について考察することとした。(以下、省略)

まさか国税庁のホームページに書いてあることと、税務調査の現場で行われていることが矛盾しているということはないと思いますので、こちらを根拠として話をしてもらえたらと思います。

10−2−2.質問応答記録書への対応

立証責任が調査官の側にあるということになると、調査官は税務調査において本来は圧倒的不利な立場に立たされるはずです。

しかし、そんなことで腰が引けていては国税庁内での出世は出来ません。自分のため、家族のために知慧を絞って税務調査を進めます。その一つが質問応答記録書(平成24年度の改正前まで質問てん末書と呼ばれていたもの)の作成です。

質問応答記録書とは、例えが悪くてすいませんが、刑事事件における供述調書の税務調査版です。税務調査は、犯罪調査とは違いますが、最終的には裁判になることまで見据えて行われるものですので、刑事事件の場合と同様に納税者の供述を記録しておくことは、「調査官の側において」重要なのです。

調査官が立証責任を果たして増額更正をするための証拠をみつけることは簡単なことではありません。完全に黒と言い切れないグレーな状態になることも多いのです。その時、グレーなものを否認するために、この質問応答記録書を活用することになります。質問応答記録書を取ることで否認するための証拠固めを行うのです。

刑事事件の場合に、冤罪の発生を防止するためには被疑者の自白のみに頼らず客観的証拠を収集することが求められるのと同様に、税務調査においても、否認するためには客観的証拠が本来必要なのですが、それが見つからない場合や調査を効率的に実施するために質問応答記録書という納税者の「自白」を取るということです。

税理士がその重要性と怖さを充分に納税者に説明していないことにより、納税者にとって不利な質問応答記録書を取られてしまう可能性があります。

質問応答記録書について最も重要な点が、税務署内部の研修資料である「質問応答記録書作成の手引 平成25年6月 国税庁課税総括課」の前文に書いてありますのでご紹介します。

質問応答記録書作成の手引 平成25年6月 国税庁課税総括課

○はじめに

質問応答記録書は、調査関係事務において必要がある揚合に、質問検査等の一環として、調査担当者が納税義務者等に対し質問し、それに対し納税義務者等から回答を受けた事項のうち、課税要件の充足性を確認する上で重要と認められる事項について、その事実関係の正確性を期するため、その要旨を調査担当者と納税義務者等の質問応答形式等で作成する行政文書である。
事案によっては、この質問応答記録書は、課税処分のみならず、これに関わる不服申立て等においても証拠資料として用いられる揚合があることも踏まえ、第三者〈審判官や裁判官〉が読んでも分かるように、必要・十分な事項を簡潔明瞭に記載する必要がある。
また、質問応答記録書は、納税義務者等の理解と協力を得て行う調査の一環として作成するものであることから、納税義務者等に対し署名押印を求めるに当たっては、強要していると受け止められることがないよう留意する

(以下、省略)

質問応答記録書で大事なことは次の2つです。

  1. 裁判の証拠資料として用いられることを前提として作成されているということ
  2. 納税義務者等の署名押印は任意であること

裁判の証拠資料として用いられると解っていて、また、署名押印が任意であると解っていて、あなたは事実認識と違う質問応答記録書が作成された場合に署名押印するでしょうか?

刑事裁判でも自白に頼った冤罪事件があるように、税務調査でも質問応答記録書に絡んで不本意な課税を受けている経営者の方がいらっしゃいます。そうならないために、こうしたルールをしっかりと認識しておいて下さい。

私は調査官の側から署名押印が任意であることが説明されたケースに立ち会ったことがありません。彼らは、当然署名押印するものというスタンスで話をしてきます。その時、税理士にはその署名押印が任意であることを告げる義務があると思います。

また、質問応答記録書の最後に、彼らが書きたがる(納税者側にとって)NGワードについて列挙します。調査官は質問応答記録書を各書く際に、あなたが言っていないにも関わらず、下記のワードを無理矢理挿入してきます。下記のワードが質問応答記録書に記録されると、それを根拠として重加算税などのペナルティーになる場合があります。それが真実ならペナルティーは受ける必要がありますが、真実と異なるのであれば、正しく修正してもらうように主張して下さい。

【質問応答記録書NGワード集】

  • ・・・・を仮装して・・・・
  • ・・・を隠ぺいする目的で・・・・
  • 意図的に・・・
  • ・・・と通謀して・・・
  • 事実と異なることを知りながら・・・・
  • 不正の目的で・・・

署名押印するかどうかは任意ですので、あなたの判断にお任せします。しかし、任意の書類にあえて署名押印する意味を理解しておいて下さい。

なお、仮にあなたがこの記事で署名押印は任意であると知ったので署名押印をしないと調査官に回答した場合には、次の様に質問応答記録書に記載される可能性があります。

・・・

問○ 以上で質問を終えますが、例か訂正したい又は付け加えたいことはありますか。

答○ ありません。

回答者 あなた

以上のとおり、質問応答の要旨を記録して、回答者に対し読み上げ、かつ、提示したところ、回答者は、内容は間違いありませんが、「インターネットの情報で署名押印が任意であると書いてあったので署名押印したくありません。」 旨申し述べ署名押印を拒否し、確認印の押印も拒否した。

平成 25 年●月●日(又は「前同日」)

質問者  ××税務署  財務事務官 国税一郎

記録者  ××税務署  財務事務官 税務次郎

そんなことあるわけないだろう。と思ったかもしれませんが、これは私が質問応答記録書の手引の記載例を少しアレンジしたものに過ぎません。

下記の記載例は手引に掲載されているものです。

質問応答記録書の署名押印を拒否した場合の記載例

こういう記載例を出されてしまうと、我々調査を受ける側は、もはや税務調査のやり取りを録音する以外に、助かる方法がなくなってしまいます。

調査官との軋轢を避けるために、「誰かに言われた」というように婉曲表現で抗弁をするケースというのはあり得ると思いますが、そこをぼやかすと上記のように「内容に間違いはありませんが・・・」と記載をされてしまうおそれがあります。あくまでも署名押印しないのは、回答に関する記載に納得しないからということで、粘り強く、質問応答記録書の記載を事実と一致するように対応をして頂きたいと思います。あなたの主義主張を、一言一句間違いなく表現してくれた質問応答記録書が作成されたなら、署名押印すれば良いだけです(そんな内容の質問応答記録書は調査官にとっては何の意味もなさない可能性がありますが。)

質問応答記録書が調査官の意に沿わない場合、またはあなたの主義主張どおりに修正されない場合、長時間「にらみ合い」の状況になる場合があります。税理士は、あなたの精神的負担が増えないように、時々休憩を入れてもらうなどの対応をとることになります。また、調査官が納税者にプレッシャーを掛けすぎていると判断した場合には、一旦中止をして頂けるように申し入れをします。

調査官にとって、私のような税理士は厄介な存在になります。したがって、税理士抜きで話をしようという動きをする調査官も出てきます。

私がいないところで、あなたと交渉をして、質問応答記録書を作成して税務調査を終わらせようとするのです。「この質問応答記録書にサインすれば税務調査は終わりにします。」そう言われて、あなたが納得して署名押印するなら私も文句はありません。

しかし、その結果、重加算税になったことを、後々悔やまれても救済する方法はありません。ペナルティーを避けたいと考えるのであれば、税理士のいるところでしか、質問応答記録書の作成に応じないと決めて頂くのが良いと思います。

10−2−3.提出物件の留置

調査官が、あなたが提出した証拠書類を預かって税務署で調査を行いたいということがあります。このように証拠資料を預かることを提出物件の留置(とめおき)といいます。

(提出物件の留置き)国税通則法第七十四条の七

国税庁等又は税関の当該職員は、国税の調査について必要があるときは、当該調査において提出された物件を留め置くことができる。

国税通則法第7章の2(国税の調査)関係通達の制定について(法令解釈通達) (「留置き」の意義等)2-1

(1) 法第74条の7に規定する提出された物件の「留置き」とは、当該職員が提出を受けた物件について国税庁、国税局若しくは税務署又は税関の庁舎において占有する状態をいう。
ただし、提出される物件が、調査の過程で当該職員に提出するために納税義務者等が新たに作成した物件(提出するために新たに作成した写しを含む。)である場合は、当該物件の占有を継続することは法第74条の7に規定する「留置き」には当たらないことに留意する。
(注) 当該職員は、留め置いた物件について、善良な管理者の注意をもって管理しなければならないことに留意する。

(2) 当該職員は、令第30条の3第2項に基づき、留め置いた物件について、留め置く必要がなくなったときは、遅滞なく当該物件を返還しなければならず、また、提出した者から返還の求めがあったときは、特段の支障がない限り、速やかに返還しなければならないことに留意する。

留置できるのは、「国税の調査について必要があるとき」だけです。また、留置した物件の返却については、期間の定めがなく、「遅滞なく返還する」としか定められていません。つまり、調査官は心おきなくゆっくり調査をしていても、それによって法律的に問題になるということがないのです。したがって、やはり出来るだけ留置にならないように交渉するのが吉だと思います。

この「必要があるとき」がいつなのかについては、税務調査手続に関するFAQ(税務職員用)に記載があります。

税務調査手続に関するFAQ(税務職員用)

問3-3 「国税の調査について必要があるとき」とは、具体的にはどのような場合をいうのか。

(答)「国税の調査について必要があるとき」とは、
① 質問検査等の相手方の事務所等で調査を行うスペースがなく調査を効率的に行うことができない場合
② 帳簿書類等の写しの作成が必要であるが調査先にコピー機がない場合
③ 相当分量の帳簿書類等を検査する必要があるが、必ずしも質問検査等の相手方となる者の事業所等において当該相手方となる者に相応の負担をかけて説明等を求めなくとも、税務署や国税局内において当該帳簿書類等に基づく一定の検査が可能であり、質問検査等の相手方となる者の負担や迅速な調査の実施の観点から合理的であると認められる場合
④ 不納付となっている印紙税の課税文書等の物件等について、後日、課税上の紛争が生ずるおそれがあるなど証拠保全の必要が認められる場合
などが該当すると考えられますが、いずれにしても、質問検査等の相手方の理解と協力の下、その承諾を得た上で実施する必要があります。
また、留め置く必要がなくなったときには、遅滞なく、交付した預り証と引き換えに留め置いた物件を返還することに留意する必要があります。

これだけ読むと、留置しなければいけないケースというのは極めて限定的なように思います。今時、コピー機のない事務所というのも少ないからです。

資料のコピーを渡す場合には、必ず一枚余計にコピーを取るようにして下さい。そして、それを税務調査で提出した書類として別のファイルにファイリングしておきましょう。何の資料を渡したのかを管理しないと、その後の交渉でどの資料に基づいて指摘されているのかが判らなくなってしまって、手間がかかることが良くあります。こうしたムダを省くために自社の分のコピーも残しておくのです。

留置は強制ではなく、また、応じないからといって、即、罰則の適用ということはないと税務調査手続に関するFAQ(一般納税者用)にもハッキリと書かれています。

税務調査手続に関するFAQ(一般納税者用)

問10 調査担当者から、提出した帳簿書類等の留置き(預かり)を求められました。その必要性について納得ができなくても、強制的に留め置かれることはあるのですか。

(省略)
帳簿書類等の留置き(預かり)は、帳簿書類等を留め置く必要性を説明した上、留め置く必要性がなくなるまでの間、帳簿書類等を預かることについて納税者の方の理解と協力の下、その承諾を得て行うものですから、承諾なく強制的に留め置くことはありません。

問3 正当な理由がないのに帳簿書類等の提示・提出の求めに応じなければ罰則が科されるということですが、そうなると事実上は強制的に提示・提出が求められることにならないでしょうか。

帳簿書類等の提示・提出をお願いしたことに対し、正当な理由がないのに提示・提出を拒んだり、虚偽の記載をした帳簿書類等を提示・提出した場合には、罰則(1年以下の懲役又は50万円以下の罰金)が科されることがありますが、税務当局としては、罰則があることをもって強権的に権限を行使することは考えておらず、帳簿書類等の提示・提出をお願いする際には、提示・提出が必要とされる趣旨を説明し、納税者の方の理解と協力の下、その承諾を得て行うこととしています。

また、会計帳簿は電子的に作成されている場合がほとんどなので、調査官からデータでの提出を求められることが増えました。この場合についても、必ずしもデータを提供する必要はありません。画面で見せたり、プリントアウトして示すことで調査官の知りたいことが判れば問題ありません。

税務調査手続に関するFAQ(一般納税者用)から、そのことを間接的に知ることが出来ます。

税務調査手続に関するFAQ(一般納税者用)

問5 提示・提出を求められた帳簿書類等の物件が電磁的記録である場合には、どのような方法で提示・提出すればよいのでしょうか。
帳簿書類等の物件が電磁的記録である場合には、提示については、その内容をディスプレイの画面上で調査担当者が確認し得る状態にしてお示しいただくこととなります。
一方、提出については、通常は、電磁的記録を調査担当者が確認し得る状態でプリントアウトしたものをお渡しいただくこととなります。また、電磁的記録そのものを提出いただく必要がある場合には、調査担当者が持参した電磁的記録媒体への記録の保存(コピー)をお願いする場合もありますので、ご協力をお願いします。
(注) 提出いただいた電磁的記録については、調査終了後、確実に廃棄(消去)することとしています。

なお、提供した電子データは留置の対象とならない「コピー同等物」として取り扱われます。調査終了後、確実に廃棄するとFAQには書いてありますが、データを一度渡してしまうと、取引先の反面調査用データとして利用されてしまう可能性もありますので、出来るだけディスプレイで見て頂くか必要なところだけプリントアウトしたものを渡すようにした方が良いと思います。

10−3.実地の調査・最終日

実地の調査の最終日には、これまでの調査結果の報告が行われます。

所得の金額に誤りが無い場合は、その旨の報告があって最終日は終了ということになります。調査をしても修正するべきことがないことを申告是認(しんこくぜにん)といいます。

所得の金額に誤りがある場合には、調査官の事実認定、法令解釈に基づく、正しい所得の額の説明がなされ、修正申告の勧奨がなされます。

10−3−1.修正申告と更正決定の違い

調査官は更正決定という方法で税額を確定することが出来るにも関わらず、修正申告の勧奨を必ず行います。それは、修正申告してくれた方が更正をするより、調査官の側としては都合が良いからです。

更正決定をされた場合、あなたは税務署長に対して不服申し立てをすることが出来ます。国税不服審判所の審判から始まり法廷闘争に至る国税当局との戦う権利を得ることになるのです。一方で、修正申告をすると、それは間違いを認めて自ら申告内容を修正したということになるので、不服申し立てが出来ません。

したがって、調査官の指摘内容に納得がいかない場合には、更正を受けるという選択肢も考える必要があります。しかし、そうなると実地の調査終了後も税務調査がすぐに終了しないことになります。

どういう内容の修正申告を求められるかにもよるので一概には言えませんが、その修正申告を受け容れることのデメリットと税務調査後の交渉を継続するデメリットを比較して、結論を出すしかないでしょう。

実地の調査後、最短で税務調査を終わらせたいということなら、その場で調査官と出来るだけ交渉をして妥結点が見つけるのが理想です。その為には、実地の調査の最終日に至る過程で、あなたと顧問税理士との間で状況把握と分析を行い、今回の税務調査の望ましい結論をある程度決めておく必要があります。

11.実地の調査終了後

実地の調査が終了した後の手続は、申告是認の場合と指摘事項がある場合とで異なります。

(調査の終了の際の手続)国税通則法第七十四条の十一

税務署長等は、国税に関する実地の調査を行つた結果、更正決定等(省略)であつて当該調査において質問検査等の相手方となつた者に対し、その時点において更正決定等をすべきと認められない旨を書面により通知するものとする

2  国税に関する調査の結果、更正決定等をすべきと認める場合には、当該職員は、当該納税義務者に対し、その調査結果の内容(更正決定等をすべきと認めた額及びその理由を含む。)を説明するものとする。
3  前項の規定による説明をする場合において、当該職員は、当該納税義務者に対し修正申告又は期限後申告を勧奨することができる。この場合において、当該調査の結果に関し当該納税義務者が納税申告書を提出した場合には不服申立てをすることはできないが更正の請求をすることはできる旨を説明するとともに、その旨を記載した書面を交付しなければならない。
(4項省略)
5  実地の調査により質問検査等を行つた納税義務者について第七十四条の九第三項第二号に規定する税務代理人がある場合において、当該納税義務者の同意がある場合には、当該納税義務者への第一項から第三項までに規定する通知等に代えて、当該税務代理人への通知等を行うことができる。
6  第一項の通知をした後又は第二項の調査の結果につき納税義務者から修正申告書若しくは期限後申告書の提出若しくは源泉徴収による所得税の納付があつた後若しくは更正決定等をした後においても、当該職員は、新たに得られた情報に照らし非違があると認めるときは、第七十四条の二から第七十四条の六まで(当該職員の質問検査権)の規定に基づき、当該通知を受け、又は修正申告書若しくは期限後申告書の提出若しくは源泉徴収による所得税の納付をし、若しくは更正決定等を受けた納税義務者に対し、質問検査等を行うことができる。

11−1.申告是認の場合の実地の調査終了後の手続

申告是認の場合には、「更正決定等をすべきと認められない旨の通知」が書面により行われます。

書面の受領をもって、無事、税務調査が完了したということになります。

調査手続の実施に当たっての基本的な考え方等について(事務運営指針)
4 調査終了の際の手続

(1) 更正決定等をすべきと認められない旨の通知
実地の調査の結果、更正決定等をすべきと認められないと判断される税目、課税期間がある場合には、法第74条の11第1項に基づき、質問検査等の相手方となった納税義務者に対して、当該税目、課税期間について更正決定等をすべきと認められない旨の通知を書面により行う。
(注) 実地の調査以外の調査において納税義務者に対し質問検査等を行い、その結果、調査の対象となった全ての税目、課税期間について更正決定等をすべきと認められない場合には、更正決定等をすべきと認められない旨の通知は行わないが、調査が終了した際には、調査が終了した旨を口頭により当該納税義務者に連絡することに留意する。

11−2.指摘事項がある場合の手続

更正決定すべきという結論になった場合には、調査結果の内容の説明を受けることになります。ところが、こちらの説明は書面では行われません。

下記のFAQの最初の方を読むと資料などをご用意頂けるように読めるのですが、文末に「納税者の方からの要望に応じて調査結果の内容を記載した書面を交付することはありません。」とハッキリと書いてあります。法令上は説明の方法が明示されていないからです。

自分達で法令の作成に関わっているはずなのでズルい書き方ですね。国会議員の先生方にがんばってもらう必要がありそうです。

税務調査手続に関するFAQ(一般納税者用)

問22 更正決定等をすべきと認める場合は調査結果の内容が説明されることとなっていますが、その内容を記載した書面をもらうことはできますか。

調査の結果、更正決定等をすべきと認められる非違がある場合には、納税者の方に対し、更正決定等をすべきと認める額やその理由など非違の内容を説明します。
法令上は説明の方法は明示されておらず説明は原則として口頭で行いますが、必要に応じて、非違の項目や金額を整理した資料など参考となるものを示すなどして、納税者の方に正しく理解いただけるよう十分な説明を行うとともに、納税者の方から質問等があった場合には分かりやすい説明に努めます。
なお、調査が電話等によるもので、非違の内容が書面での説明でも十分にご理解いただけるような簡易なものである場合には、納税者の方にその内容を記載した書面を送付することにより調査結果の内容説明を行うこともありますが、納税者の方からの要望に応じて調査結果の内容を記載した書面を交付することはありません

この説明を受ける仕事を税理士に依頼することが出来ます。しかし、この説明は顧問税理士だけではなく、あなたも同席して説明を聞いておいた方が良いと思います。実は、国税庁もこの最後の説明だけは、原則として経営者にすることになっていて、経営者が同意する場合にだけ、税理士に依頼することが出来るという建付になっているのです。

(調査の終了の際の手続)国税通則法第七十四条の十一

(1項〜4項省略)
5  実地の調査により質問検査等を行つた納税義務者について第七十四条の九第三項第二号に規定する税務代理人がある場合において、当該納税義務者の同意がある場合には、当該納税義務者への第一項から第三項までに規定する通知等に代えて、当該税務代理人への通知等を行うことができる。

税理士にこの仕事を任せたあげくに、その結果について、ずっと後悔している経営者の方が沢山います。実地の調査の立会はしなくても、最後の結果はご自身で聞いて頂いた方が良いと思います。

税務調査手続に関するFAQ(一般納税者用)

問25 税務代理をお願いしている税理士がいるので、調査結果の内容の説明等はその税理士に対して行ってほしいのですが、何か手続は必要でしょうか。

 調査結果の内容の説明等は、納税者の方に税務代理人がいる場合でも、原則として、納税者の方に対して行いますが、納税者の方の同意があれば、税務代理人に対してのみ説明等を行うこともあります。 したがって、税務代理人のみへの説明等を希望する場合には、調査担当者に対し、電話又は対面によりその旨をお伝えいただくか、税務代理人を通じて税務代理人への説明を同意する書面を提出していただくことが必要になります。 なお、納税者の方に調査結果の内容の説明を行う場合でも、税務代理人の同席のもとに調査結果の内容の説明を行うことや、別途、税務代理人にも調査結果の内容の説明を行うことも可能です。 

この説明のうえで、修正申告の勧奨が行われます。しかし、修正申告の勧奨は熟考頂いたうえで拒否しても大丈夫です。同FAQにもハッキリと書いてありますので安心して下さい。

税務調査手続に関するFAQ(一般納税者用)

問23 調査結果の内容説明を受けた後、調査担当者から修正申告を行うよう勧奨されましたが、勧奨には応じなければいけませんか。また、勧奨に応じないために不利な取扱いを受けることはないのでしょうか。

調査の結果、更正決定等をすべきと認められる非違がある場合には、その内容を説明する際に、原則として、修正申告(又は期限後申告)を勧奨することとしています。これは、申告に問題がある場合には、納税者の方が自ら是正することが今後の適正申告に資することとなり、申告納税制度の趣旨に適うものと考えられるためです。
この修正申告の勧奨に応じるかどうかは、あくまでも納税者の方の任意の判断であり、修正申告の勧奨に応じていただけない場合には、調査結果に基づき更正等の処分を行うこととなりますが、修正申告の勧奨に応じなかったからといって、修正申告に応じた場合と比較して不利な取扱いを受けることは基本的にはありません。
なお、修正申告を行った場合には、更正の請求をすることはできますが、不服申立てをすることはできませんので、こうした点をご理解いただいた上で修正申告を行ってください。

この件については、ここに書いてあるとおりに理解して頂いて構いません。

しかし、あなたが修正申告をしないことによって、調査官は更正等の処分をしなければならなくなりますので、かなり熱意をもって勧奨が行われます。なぜなら、更正等の処分をするということは、その後、税務署長への不服申しててから始まる、あなたと国税庁との争訟の開始を意味するからです。あなたが不服申し立てを行っても更正処分の内容に関して負けないようにするために調査官の事務的な負担が大幅に増えます。ですから調査官は真剣になって修正申告を勧奨してくるのです。

その熱意が度を超しているようでしたら、税理士がこちらのFAQと実際の手続が違うことを指摘してくれると思います。調査官はあなたに修正申告をさせるために、ありもしない重加算税の嫌疑を掛け、修正申告するなら重加算税にはしない、などと交渉を仕掛けてくるかもしれません。どういう場合に重加算税になるかはこの記事でもご紹介しましたが、具体的事案について、税理士によく相談して、その交渉にのることが適切かどうかを判断するようにしましょう。

更正等の処分を受けても、それを受け容れて不服申立てをしないことも当然できます。つまり、あなたは修正申告を焦る必要はないのです。調査官の出方をじっくり見極めて、あなたの納得出来る形で税務調査を終わらせるようにして下さい。

12.更正通知書と理由附記

調査官が修正申告の勧奨をしたにも関わらず、あなたが応じなかった場合、税務署内で調査官と統括官が協議して、更正処分を行うかどうかを検討することになります。

更正処分を行う場合、国税局の決裁が必要になりますので、あなたが修正申告をする場合に比べて、煩雑な手続が必要になります。したがって、修正申告の勧奨があり、それをあなたが拒否したとしても必ず更正処分になるとは限りません。しかし、修正申告の勧奨を拒否する際には、更正処分を受ける覚悟をもって対応するようにしましょう。

更正処分が決定すると、更正通知書が届きます。更正通知書には、更正に至った理由が詳細に附記されることになっています。

税務調査手続等に関するFAQ(一般納税者向け)

問28 国税通則法の改正により処分の理由附記の対象が拡大されたとのことですが、具体的にはこれまでとどのような違いがありますか。
これまで処分の理由附記は、所得税及び法人税の青色申告者に対する更正処分など一定の処分が対象とされていましたが、今般の国税通則法の改正により、理由附記の対象が、国税に関する法律に基づく申請に対する拒否処分又は不利益処分全体に拡大されました。
したがって、今後は、例えば、白色申告者等に対する更正処分を行う場合(推計による更正の場合を含みます。)にも、理由が附記されることになります。また、加算税の賦課決定については、従来は青色申告者に対する場合でも理由附記の対象とはなっていませんでしたが、今後は白色申告者等に対する場合を含め理由が附記されることとなります。
( 以下、省略)

この理由附記については、更正処分の要件を構成しますので、仮に理由附記をせずに行った不利益処分は、直ちに違法として取り消されることになります。

税務調査手続等に関するFAQ(税務職員向け)

問5-4 理由附記をせずに行った不利益処分は、直ちに違法として取り消されるのか。
(答)平成25年1月1日以後に行う不利益処分には、法令に基づき、理由附記を行う必要があるため、理由附記をしていない処分は、違法なものとして取り消されることになります。

なお、仮に理由附記を欠く処分が行われた場合には、直ちに取り消す必要があります。

理由附記の内容が不充分な場合でも、更正処分の取消が狙える可能性があります。国税不服審判所の公開裁決事例の中に、理由附記の内容が不充分なことを理由に、構成処分を取り消している事案が掲載されていますし、税務職員向けQ&Aでも下記のとおり、具体的な記載をするように求められています。

税務調査手続等に関するFAQ(税務職員向け)

 問5-22 理由は、どの程度記載すればよいのか。
(答)改正通則法第74条の14第1項により、国税に関する法律に基づき行う処分について、行政手続法第8条又は行政手続法第14条に基づく理由の提示を行う場合には、行政庁の判断の慎重を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を相手方に知らせて不服の申立てに便宜を与えることにあるという趣旨を踏まえて、いかなる事実関係に基づき、いかなる法令(処分基準が公表されている場合にはその基準を含む)を適用して処分したのかを、納税義務者がその記載内容から了知し得る程度に記載する必要があります。また、処分の相手方が処分の理由となるべき事実を知っていたとしても、理由提示義務の程度が緩和されることはありません。

もし、具体性を欠く更正通知書が届いたら、それを理由に処分の取り消しを求めるようにしましょう。

通常の税務調査対応はココで終わります。

不服申し立て以降の手続についても、関心のある方が多いでしょうが、そこまで行ってしまうケースというのは非常にレアなケースです。

本業に時間を割いて利益を出して適正に納税するというのが本来の仕事だと思いますので、税務調査の結果、不服申し立てをしなくても良いように、ここまでの過程で納得出来る結果を出すことが税理士の仕事だと、私は考えています。

もちろん、あなたが納得出来ないということでしたら、とことんお付き合いすることになります。

13.あなたの会社に税務調査が来る確率

冒頭に書いたとおり、税務調査の事前通知がくれば、税務調査は受けないわけにはいきません。したがって、経営者にとっては、税務調査に来る確率や税務調査の対象となりやすい会社というのは、それほど重要なトピックではありません。

しかし、それは解っていても、税務調査にいつ来るのか?という話題は、経営者にとっては気になることのようです。

13−1.統計データによると

平成24年度(2012年度)国税庁の統計データによると、法人数2,977千社に対して、調査件数は93千社ですので、直近の税務調査を受ける確率は3.1%となります。

過去は長らく4%程度で推移していましたが、税務調査の手続が以前に比べて煩雑になって、直近は大幅に下落しました。この傾向が続くかどうかは解りませんが、いずれにしても4%であれ3%であれ、イメージより相当低く感じられたと思います。

4%だと25年に1回。3%だと33年に1回しか税務調査に来ない計算になります。

調査事績の概要|国税庁【出典】http://www.nta.go.jp/kohyo/press/press/2013/hojin_chosa/01.htm

法人数【出典】http://www.nta.go.jp/kohyo/press/press/2012/hojin_shinkoku/02.htm

13−2.実感として感じる調査が来る可能性の高い会社

税務調査は、税金を適正に納税させるための制度です。したがって、税金を本来よりも少なく納めている可能性の高いところを探して調査対象にすることになります。

13−2−1.継続的に黒字の会社

継続的に黒字の会社には税務調査が入りやすいと思います。

とはいえ、何回入っても、追徴税額が発生しない会社に頻繁に税務調査が入るということはありません。

過去に不正が発見されたことがあって、継続的に黒字の会社は、2〜3年に一回税務調査を受けると思って頂いて良いと思います。

13−2−2.売上高の大きい会社

業種にもよりますが、売上高の大きい会社というのは、それだけ沢山の取引が行われている可能性が高い会社ということになります。

こうした会社は赤字でも定期的に税務調査が入る場合があります。なぜなら、消費税を否認できる可能性が高いからです。

赤字の会社は調査に来ないだろう?という考え方は、法人税の場合には当てはまりますが、消費税のことも忘れないようにしましょう。今後、消費税率が上がることを考えると、それなりの規模の会社の場合には、常に税務調査に対する注意が必要ということになると思います。

13−2−3.財務数値の変動の大きい会社

売上、利益、役員報酬の額など、主要な科目に変動が大きい会社は、国税総合管理システム(KSK)上で機械的に税務調査先候補に挙がりやすいそうです。

税額を減らすために何か良からぬことをやっていそうだ、という評価をしているものと思われます。

13−2−4.調査重点業種

その時々において、調査重点業種というものを決めているようです。

「平成24事務年度における法人税・源泉所得税等の調査事績」によると、この年度においては、消費税還付申告法人や海外取引法人についての取り組みがあったようです。

また、同資料によると、不正発見割合が高い業種として、下記の資料が掲載されています。これらの業種は重点調査対象になっていると思います。

  1. バー・クラブ
  2. パチンコ
  3. 土木工事
  4. 自動車修理
  5. 廃棄物処理
  6. 構築用金属製品製造
  7. 一般土木建築工事
  8. 電気・通信工事
  9. 再生資源卸売

あなたの想像から、それほど外れていない業種ではないかと思います。

不正発見割合の高い業種

13−2−5.税務署へのタレコミ

退職した社員が、あることないことを税務署に垂れ込むということが時々あります。

タレコミがあると税務署は無視出来ない様で、税務調査が行われます。「ないこと」を垂れ込まれている場合は問題ないのですが、「あること」を垂れ込まれている場合に、かなり厄介です。

お金の情報は、従業員に見せないか、見せるのなら後ろめたいことはしないことが、あなたの身のためだと思います。しかし、これでは良い会社になれません。悩ましいところです。

14.まとめ

「国家公務員である調査官が、まさか法律や国税庁内のルールに従わずに税務調査を行うことはない」という思い込みが、調査官優位の税務調査の源泉となっています。私がこの記事を書くにあたって、沢山の根拠を示したのは、そうした思い込みによって、私自身が税務調査の現場で苦々しい思いをしてきたことによります。

普段は節税対策に熱心なあなたが、100%あなたの見方である私の意見ではなく、調査官の意見に賛同している姿を見せるとき、私は税理士としてではなく、一人の国民として悲しいのです。

私のオーナーであるあなたがそれで納得して納税するなら、税理士としては何も言うことはありません。調査官以上に信頼されるに足らない専門家としての自分を恥じるしかありません。しかし、一人の国民としては、法律以上に徴税される姿を見るのは釈然としない思いがあります。税金は「払うべきモノは払い、払う必要のないものは払う必要がないモノ」だと思うからです。

しかし、経営者に雇われている経理部長や経理部員が調査官に盲目的対応を取るのには、税理士としても一国民としても憤りを感じています。同じ主(あるじ)に仕える身として、「この調査の間だけ何とかなればいい。税金を払うのは自分ではない。」という考え方が許せないのです。

そういう意味では、あなた=経営者という風に考えて、この記事を書きましたが、是非、税務調査対応を行う経営者以外の方、特に税務調査対応を行う経理部員、財務部員の方々にもこの記事を読んで頂いて、適法な税務調査とは何なのかをご理解頂けたら幸いです。税務調査対応に不安があるのであれば、経営者に対して全面的に税理士に税務調査対応を依頼するように進言して欲しいと思います。税理士は皆、共に戦う準備は出来ていると思います。

以上で、この記事を終わりたいと思います。あなたの知っている税務調査対応が、この記事の内容より優れていたら、是非、教えて下さい。もっと勉強して、良い税理士を目指したいと思います。 全ての納税者が適正な税務調査を受ける権利を有し、義務を負います。税理士として、それを全力でサポートしていきたいのです。


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山口 真導

山口 真導

代表取締役株式会社起業ナビ
中堅・中小ベンチャー企業から上場企業まで幅広い顧客に対して主に経理アウトソーシング事業を提供している。同事業を通じて経営者目線で財務・会計・税務の問題解決ができるCFOの育成・輩出を目指している

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