役員報酬を決める時に必ず知っておくべき議事録の書き方

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役員報酬を決めたら、議事録を残す必要があります。株主総会の議事録を作成すれば良いとお思いの方も多いかと思いますが、本当にそれだけで大丈夫でしょうか?

実は役員報酬に関する議事録の書き方については、会社法の条文には書いていない書き方の方が一般的なのです。ではなぜ、そのような書き方になっているのでしょうか?

今回は、役員報酬に関する議事録の書き方を詳しく解説していきます。今後、役員報酬を決める際の議事録はこれからご紹介する書き方で進めて頂ければ大丈夫です。

 1.オススメは株主総会決議→取締役会で代表取締役一任

最初に出来上がりの結論をご説明したいと思います。理由は後ほど書きますので、そちらで確認して下さい。

1−1.株主総会で総額の枠をとる

株主総会では役員報酬の総額の枠取りを行います。

ここでは個別の役員に関する決定は一切行わないことがポイントです。

【タイトル】株主総会議事録
第○号議案 役員報酬改定に関する件
議長は、取締役の報酬総額を年額金●●●●万円以内とすることを述べ、なお、これには使用人兼務役員の使用人分の報酬を含めないこととし、その配分方法は取締役会に一任してもらいたい旨を述べ、その議決をはかったところ、一同これを承認可決した。

しかし、取締役会に一任することを株主総会で決めた場合でも取締役会で決めることはあまりなく、取締役会で代表取締役に一任する旨の決議がなされるのが一般的です。

1−2.代表取締役が個別の役員の報酬を決定する

株式会社の最高意思決定機関である株主総会で役員報酬の総額の枠を決定したうえで、個別の役員の報酬については株主総会から取締役会を経て代表取締役に一任する決議をとりました。

その決議にしたがって、代表取締役は「取締役の報酬金額に関する決定書」を作成し、これにて株主総会で定めた枠の範囲内で、各取締役の報酬の金額を決定します。

【タイトル】取締役の報酬金額に関する決定書
平成 年 月 日開催の株主総会において、取締役各個の受けるべき報酬金額については、これを代表取締役に一任すると決議されたことにより、その報酬金額を下記のとおり決定し、平成 年 月 日以降支給される報酬金額より適用する。

代表取締役 □□ □□ 月額 ***,***万円
取締役   □□ □□ 月額 ***,***万円
取締役   □□ □□ 月額 ***,***万円

 

以上が、役員報酬に関する議事録の結論になります。

次から、なぜ、そうなるかについて説明していきたいと思います。

2.株主総会議事録が必要な理由

株主総会の議事録が必要になるのは、会社法第361条で、役員報酬の金額は「定款か株主総会の決議によって定める」と規定されていることによります。

(取締役の報酬等)第三百六十一条
取締役の報酬、賞与その他の職務執行の対価として株式会社から受ける財産上の利益(以下この章において「報酬等」という。)についての次に掲げる事項は、定款に当該事項を定めていないときは、株主総会の決議によって定める。
一  報酬等のうち額が確定しているものについては、その額
二  報酬等のうち額が確定していないものについては、その具体的な算定方法
三  報酬等のうち金銭でないものについては、その具体的な内容
2  前項第二号又は第三号に掲げる事項を定め、又はこれを改定する議案を株主総会に提出した取締役は、当該株主総会において、当該事項を相当とする理由を説明しなければならない。

会社法361条の趣旨は、取締役が勝手に役員報酬を決めて会社財産を毀損することを防止するところにあります。これを「お手盛りの弊害防止」と呼びます。株式会社の最高意思決定機関で、少なくとも上限額を決めてしまえば、その範囲内で役員報酬を支払う限り、会社財産を守ることが出来るので、個別の役員の報酬までは決める必要がないと解されています。

もちろん、どうしても株主総会で決めたければ決めて頂いても構いません。

しかし、目的が枠取りである以上、あえて個々人の役員報酬の額をここで決めるメリットはありません。

したがって、先ほどのオススメのような形で「総額の枠」を決める決議を行うのが普通となるのです。

3.株主総会議事録の法人税法上の位置付け

株主総会議事録の内容は、法人税法における役員報酬の適正額の形式基準になります(下記、法人税法34条2項および法人税法施行令70条1項1号ロ)。

(役員給与の損金不算入)第三十四条
(1項省略)
2  内国法人がその役員に対して支給する給与(前項又は次項の規定の適用があるものを除く。)の額のうち不相当に高額な部分の金額として政令で定める金額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。

(過大な役員給与の額)法人税法施行令第七十条
法第三十四条第二項 (役員給与の損金不算入)に規定する政令で定める金額は、次に掲げる金額の合計額とする。
一  次に掲げる金額のうちいずれか多い金額
イ 内国法人が各事業年度においてその役員に対して支給した給与(省略)の額(省略)が、当該役員の職務の内容、その内国法人の収益及びその使用人に対する給与の支給の状況、その内国法人と同種の事業を営む法人でその事業規模が類似するものの役員に対する給与の支給の状況等に照らし、当該役員の職務に対する対価として相当であると認められる金額を超える場合におけるその超える部分の金額(その役員の数が二以上である場合には、これらの役員に係る当該超える部分の金額の合計額)
ロ 定款の規定又は株主総会、社員総会若しくはこれらに準ずるものの決議により役員に対する給与として支給することができる金銭の額の限度額若しくは算定方法又は金銭以外の資産(ロにおいて「支給対象資産」という。)の内容(ロにおいて「限度額等」という。)を定めている内国法人が、各事業年度においてその役員(当該限度額等が定められた給与の支給の対象となるものに限る。ロにおいて同じ。)に対して支給した給与の額(省略)の合計額が当該事業年度に係る当該限度額及び当該算定方法により算定された金額並びに当該支給対象資産(当該事業年度に支給されたものに限る。)の支給の時における価額に相当する金額の合計額を超える場合におけるその超える部分の金額(同号に掲げる金額がある場合には、当該超える部分の金額から同号に掲げる金額に相当する金額を控除した金額)
二  (省略)
三  (省略)

つまり、株主総会で定めた総枠を超える金額は「不相当に高額」な役員給与の額として、損金不算入になります。

形式基準にかからないようにするには、総枠を大きくすれば良いのですが、役員報酬そのものについては、形式基準以外に「実質基準」もあります。

実質基準は上記の法人税法施行令70条の1項1号イに書いてあります。

今回は議事録の話ですので、詳細は説明しませんが、税務調査対策や節税対策として考える場合には、コチラの方が重要です。

【役員報酬の実質基準】「不相当に高額」の意味

  1. 当該役員の職務の内容
  2. その内国法人の収益及びその使用人に対する給与の支給の状況
  3. その内国法人と同種の事業を営む法人でその事業規模が類似するものの役員に対する給与の支給の状況等に照らし、
  4. 当該役員の職務に対する対価として相当であると認められる金額を超える場合

他の会社の役員報酬なんて解るのは税務署だけですから、お気をつけ下さい。

4.取締役会議事録の所得税法上の位置付け

法人税法上は、「不相当に高額」な役員報酬に該当した場合には、損金不算入になります。

しかし、この場合であっても、所得税法上の給与であることに変わりはありません。「不相当に高額」だからとって、特別な所得税がかかるということはないのです。

逆に、法人税法上、役員報酬として処理していないという理由で、所得税の課税を免れることは出来ません。

しかし、所得税法上、特別な取扱として経済的利益として課税しないと定めたもので、かつ、法人税これを給与として処理しなかったものは給与として取り扱わないというルールになっています。

例えば、社宅負担金について、社宅の賃料の一部のみ負担している場合には、自分で直接賃借するよりも負担金が安い分については、その役員に対して経済的利益が付与されていることは明かなのですが、所得税法上定められた処理が行われていて、かつ、給与として処理されていなければ、不相当に高額という扱いを受けないというルールになっているということです。

(給与としない経済的な利益)
9-2-10 法人が役員等に対し9-2-9に掲げる経済的な利益の供与をした場合において、それが所得税法上経済的な利益として課税されないものであり、かつ、当該法人がその役員等に対する給与として経理しなかったものであるときは、給与として取り扱わないものとする。(平19年課法2-3「二十二」により追加)

税法ではなく法人税法基本通達9−2−10の定めですので、法的拘束力はありませんが、法人税法と所得税法で取扱が異なると現場が混乱するので、このような規定が置かれたものと思われます。

5.経済的利益について

さきほど、所得税との関係で「経済的利益」という言葉を突然使いましたが、これは先ほどご紹介した会社法第361条1項3号に対応した話です。

会社法上、「三  報酬等のうち金銭でないものについては、その具体的な内容」が、法人税法でいうところの経済的利益に該当します。

5−1.経済的利益の総枠を株主総会でとっておくべきか否か

この経済的利益について、株主総会の決議の中で、役員報酬の総額の枠を決めるのと同時に、経済的利益が発生し得る取引に関しても総枠をとっておくべき、という議論があります。

この考え方は、これをすることで、所得税法上、給与認定されて源泉所得税の納付漏れになったとしても、法人税法上は、総枠内に収まっているという意味で役員賞与にならない可能性を残すという意味があるものと思われます。

確かに、私どものような経理アウトソーシングをさせて頂いている場合には、給与計算にも支払業務にも関わっているので、私どもの認知しない経済的利益というものは基本的に存在しないのですが、税務顧問しかしていないお客様については、全部の取引を見ているわけではありませんので、未確認の経済的利益がないとはいえません。

したがって、顧問税理士が、税務リスクのヘッジ目的で、経済的利益を株主総会の議事録に記載することを提案してきた場合には、自社としても受け容れる意味があると思うのであれば、議事録に記載して見てはどうかと思います。

その際、経済的利益の具体的内容として、法人税法基本通達9−2−9の(1)から(12)までを議事録に記載すれば大丈夫です。

 (債務の免除による利益その他の経済的な利益)
9-2-9 法第34条第4項《役員給与》及び法第36条《過大な使用人給与の損金不算入》に規定する「債務の免除による利益その他の経済的な利益」とは、次に掲げるもののように、法人がこれらの行為をしたことにより実質的にその役員等(役員及び同条に規定する特殊の関係のある使用人をいう。以下9-2-10までにおいて同じ。)に対して給与を支給したと同様の経済的効果をもたらすもの(明らかに株主等の地位に基づいて取得したと認められるもの及び病気見舞、災害見舞等のような純然たる贈与と認められるものを除く。)をいう。(平19年課法2-3「二十二」により追加、平22年課法2-1「十八」により改正)

(1) 役員等に対して物品その他の資産を贈与した場合におけるその資産の価額に相当する金額
(2) 役員等に対して所有資産を低い価額で譲渡した場合におけるその資産の価額と譲渡価額との差額に相当する金額
(3) 役員等から高い価額で資産を買い入れた場合におけるその資産の価額と買入価額との差額に相当する金額
(4) 役員等に対して有する債権を放棄し又は免除した場合(貸倒れに該当する場合を除く。)におけるその放棄し又は免除した債権の額に相当する金額
(5) 役員等から債務を無償で引き受けた場合におけるその引き受けた債務の額に相当する金額
(6) 役員等に対してその居住の用に供する土地又は家屋を無償又は低い価額で提供した場合における通常取得すべき賃貸料の額と実際徴収した賃貸料の額との差額に相当する金額
(7) 役員等に対して金銭を無償又は通常の利率よりも低い利率で貸し付けた場合における通常取得すべき利率により計算した利息の額と実際徴収した利息の額との差額に相当する金額
(8) 役員等に対して無償又は低い対価で(6)及び(7)に掲げるもの以外の用役の提供をした場合における通常その用役の対価として収入すべき金額と実際に収入した対価の額との差額に相当する金額
(9) 役員等に対して機密費、接待費、交際費、旅費等の名義で支給したもののうち、その法人の業務のために使用したことが明らかでないもの
(10) 役員等のために個人的費用を負担した場合におけるその費用の額に相当する金額
(11) 役員等が社交団体等の会員となるため又は会員となっているために要する当該社交団体の入会金、経常会費その他当該社交団体の運営のために要する費用で当該役員等の負担すべきものを法人が負担した場合におけるその負担した費用の額に相当する金額
(12) 法人が役員等を被保険者及び保険金受取人とする生命保険契約を締結してその保険料の額の全部又は一部を負担した場合におけるその負担した保険料の額に相当する金額

5−2.外部株主がいる場合には経済的利益については記載しない

基本通達9−2−9の内容を見て、「これを株主総会の議案に入れるのか!?」と思った方も多いと思います。

具体例は役員が会社を私物化する内容のオンパレードです。

普通の人なら、こんな株主総会の招集通知を送ってきたら株主を辞めようと思うでしょう。つまり、経済的利益について記載すべきかどうかの議論になるのは、いわゆるオーナー経営者が経営する「同族会社」だけということです。私も経験的に、同族会社の場合であれば、ついうっかり、ここに書いてあるようなことをするケースがあり得るというのは理解できます。

外部株主がいたとしても、結果的に役員が経済的利益を受ける可能性は確かにあります。だからといって、上記の内容の経済的利益を受ける枠を設けることを認めるような寛大な株主の方が異常だと思います。

自社の株主構成を良く考えて対応するようにしてください。

6.役員報酬に関する議事録のまとめ

株主総会では「総額の枠」を決めましょう。そして、個々の取締役の報酬については最終的には「代表取締役に一任」しましょう。経済的利益に関する記載については、顧問税理士と良く相談して記載するかどうか決めましょう。


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山口 真導

山口 真導

代表取締役株式会社起業ナビ
中堅・中小ベンチャー企業から上場企業まで幅広い顧客に対して主に経理アウトソーシング事業を提供している。同事業を通じて経営者目線で財務・会計・税務の問題解決ができるCFOの育成・輩出を目指している

皆様からのコメント

  1. >オススメは株主総会議事録+代表取締役一任
    >代表取締役ではなく、取締役会に一任する会社もあります。
    取締役会設置会社において、取締役報酬の決定は、株主総会から代表取締役に直接に一任することはできず、取締役会に一任した後、取締役会決議において代表取締役に一任する必要があるというのが、判例通説です。
    この点、明らかに誤りですので、記事を訂正すべきです。

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