葬式代を終身保険で用意するのは間違いなのか?~インフレリスクが顕在化した実話~

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公認会計士・税理士の山口真導です。

就職したての若者に保険契約をさせる常套句が「社会人になったんだから葬式代くらい親に負担かけないようにしよう」です。わたしもマンマとその手にのって保険契約をしてしまったクチです。その時、どんな保険を選ぶのか?が問題ですが、絶対損をしないといわれている終身保険が悪さをすることがあります。

賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶ。というわけで、今回はインフレの歴史に学ぶということで、実際に発生した終身保険のインフレ事例についてお伝えます。

1.日常の中に潜むインフレーション

主人公は、2005年(平成17年)に95歳でお亡くなりになった私の友人のお爺さんです。年金で馬券を買うほどのギャンブラーで貯金はゼロでした。

そんなお爺さんが亡くなってから遺品の整理をしていると、タンスの中から生命保険の保険証書が見つかりました。どうせ掛け捨ての保険だろうと思って見てみると「終身保険」の文字が書いてあるではないですか!?終身保険といえば、お亡くなりになれば必ず保険金が出るタイプの保険です。

あのお爺さんでも葬式代は用意してたか!と保険証券を開いてみると、、、そこには、保険金の額が書いてありました。

1,000万円?いや、100万円?、まてまて、落ち着いて数えてみよう。
「いち、じゅう、ひゃく、せん、まん、10万円!! じゅうまんえん????」「たったの(笑)」ご家族みんなで肩を落としたそうです、、、、。しかし、お爺さん、どうして、わずか10万円の終身保険に入ったのでしょうか?

2.50年前と比べて物価は20倍上昇

ここで契約日まで時を戻してみましょう。

この保険に加入したのは1955年(昭和30年)なので遡ること50年です。この50年間で物価はどのくらい上がったのか?確認してみたところ、、、1995年の国家公務員の大卒初任給は8,700円で2005年は179,200円になっています。だいたい20倍です(興味のある方はコチラの資料を確認下さい)。つまり、50年前の10万円は、いまの200万円に相当するということです。

次に支払った保険料について検討してみましょう。終身保険なので、保険料は保険金額とほぼ同等と考えて良いでしょう。つまり支払った保険料は10万円。仮に50年分割で支払っていたとすると年間2,000円の保険料の負担になります。この年間2,000円の保険料負担は今の貨幣価値に引き直すと年間4万円の負担です。年間4万円ということは2年半払えば保険金額の10万円に到達します。つまり、お爺さんの50年間の保険料支払のうち47年半は無駄だったということです。

この50年間が、ちょうど高度成長期に当たるとはいえ、20倍のインフレのインパクトはこんなにも大きいのです。

3.若者の終身保険加入は“葬式代”にはなり難い

1955年当時で200万円の価値の終身保険に加入されたので、葬式代の準備としては極めて適正な保険加入だったと思います。しかし、必ず保険金が受け取れる終身保険といえども、受け取る時期のコントロールは出来ません。終身保険の保険金額は固定ですので、今回のケースのように、保険金を受け取るまでに長期間を要する場合には、インフレの影響をもろに受けてしまいます。
一方、途中で解約することも出来ますが、その時は支払った保険料より少ない解約返戻金しか回収出来ません。つまり、普通の終身保険は、一般的には加入から受取までの期間が短い、ある程度年齢が高い方が加入するには良い保険ですが、そうでない方にとっては、こうしたインフレリスクが顕在化する可能性が高い保険ということです(インフレリスクに対応した終身保険もあります)。

4.インフレリスクは放置のリスク

日本国内は長期間デフレ化にあり、インフレリスクといってもピンとこない方も多いでしょう。しかし、日本以外の国の経済はちゃんと成長しています。つまり我々日本国民は、相対的なインフレリスクに直面しているのです。この状況を隠れインフレリスクと勝手に命名します。

経済は循環しているので、いつか解りませんが、そのうち必ず我が国経済もインフレに移行すると私は考えています。その時からインフレリスクに気が付いて対応してももう手遅れです。なぜなら、隠れインフレリスクは今も着々とみなさんの資金を目減りさせているからです。

インフレリスクは、見方を変えれば放置のリスクです。自分が稼いだ大事なおカネですので、定期的に見直しをして最適な資産ポートフォリオを目指す努力が必要です。「リスクは管理すれば良い」ので、正しく認識して正しく対処するようにしましょう。

それでは、また。
キャッシュ・イズ・キング!!

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山口 真導

山口 真導

過払い税金対策専門税理士株式会社アカウンタックス
中小企業の資金繰りを改善するソフトウェアの開発に失敗し、自社の資金繰りがつかなくなる。その時、利益より資金が大事だとようやく気づく。以来、資金繰りの悩みを節税対策と銀行対策で解決する専門家として活動。中小企業経営者のお金の問題を他人事ではなく自分事として捉え解決している。著書に、起業5年目までシリーズで「資金繰りのキホン」と「節税のキホン」がある。

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