会社の設立登記が完了したら、最初にやるべき手続が銀行口座の開設です。(並行して行う各種の届けについては、コチラの記事をどうぞ)
近年、銀行口座の開設はハードルの高い作業になっています。しかし、銀行口座が存在しなければ実質的に営業は出来ないので、絶対に超えなければならないハードルです。ハードルが高いからといって、設立後、しばらく銀行口座も作らずに放置しておくと口座開設が更に難しくなります。(わたしは経験者です)
そのハードルの高い口座開設を、最初に2つ済ませましょう!というのがこの記事の内容です。その必要性と手順について説明します。
Contents
1.口座開設の前提条件と所要日数について
冒頭にも書きましたが、銀行口座を開設するためには、設立登記が完了している必要があります。口座開設を行う場合には、登記簿謄本の提出が必ず必要になるからです。
設立登記申請をしてから、登記が完了し謄本が取得出来るようになるまでに1週間から10日必要です。この期間は登記申請をする管轄の法務局によって異なります。通常は、申請書を提出する際に、いつ登記が完了するかを教えてもらえます。この日付を聞いてから、銀行窓口に出向く予定を決めて下さい。
そして、法人口座の開設を申請してから、法人口座が実際に使えるようになるまでに1〜2週間かかります。
都合、法人の設立登記から法人口座が開設されて本格的に営業開始出来るようになるまで、だいたい1ヶ月かかると考えておくと良いと思います。
2.口座開設を断られるケースもある
法人の口座開設のハードルは年々高くなっています。不正送金、マネーロンダリング防止目的で審査が厳しくなっているからです。
こうした厳しい審査を通すために重要なことは、法人設立をしたら、なるべく早く口座開設をすることです。設立したばかりの会社は、みんな怪しい会社だからです(すいません)。口座開設をしなければ事業を開始出来ず怪しい会社をいつまでも卒業出来ません。したがって、設立直後の審査は、しばらく経ってからの審査に比べたら厳しくないのです。
設立後2年間休眠していた会社をわたしが引き取って事業を開始するために口座開設をしようとしたところ、ネット銀行でも店舗型銀行でも口座開設を断られました。理由は「設立して口座の一つも作っていないペーパー会社は怪しい」という理由でした。すぐに、知り合いの営業担当にお願いして口座開設は出来ましたが、仮にも国家資格を持つわたしが申し込んでも口座は作れないという意味で、そのハードルの高さはご理解頂けるのではないか?と思います。
わたしの経験したケース以外でも次のような理由で断れることがあるようです。
- 資本金の額が低すぎる(銀行ごとに基準が違う?)
- 事務所の実態が無い(実体が無い例、レンタルオフィスやバーチャルオフィス)
- 事業目的や事業内容が不明瞭及び不適切(対策:会社HPや事業内容のパンフレットなどを準備しておく)
ネットの情報で安易に会社を設立すると口座開設が出来ない、という結果です。小資本で会社設立して、住所がバーチャルオフィスというケースは少なくありません。実際に何行か口座開設を断られるということはありえますので、小さな会社を設立される方は覚悟しておいて下さい。
3.銀行口座は2つ開設しよう!
ビズ部では、りそな銀行と楽天銀行に口座を開設することを推奨しています(理由はリンク先の記事で確認して下さい)。以降は、この推奨口座の開設方法を説明をしていきます。
他行も基本的に同じですが、完全に同じわけではありません。他の銀行で口座を開設する場合には、直接、その銀行の支店に電話をして必要書類等を確認されることをオススメします。
3−1.2つの銀行口座開設を推奨する理由
わたしは創業時から銀行口座は2つ以上あった方が良いと考えています。入金専用口座と出金専用口座を用意すると資金繰りの把握がしやすいからです。
入金口座に貯まった資金を、毎月決まった日に出金口座に移します。そうすることで、キャッシュ・インの金額が毎月把握出来ます。出金専用口座にあるお金が使えるお金です(使って良いお金ではありません)。
このように非常にシンプルな形で、かつルーチンワークとしてキャッシュ・フローの状況把握出来ることが、2つの銀行口座を利用する場合のメリットです。
3−2.ネット専業銀行のメリットと店舗のある銀行とのメリットの両取りをする
法人ネットバンキング比較の記事にも書いたとおり、税金(ダイレクト納付)や社会保険(健康保険・厚生年金、労働保険料)の引落口座としてネット専業銀行の口座は指定出来ません
したがって、実務的に、手間を極力かけずに効率の良い資金管理を行うためには、ネット専業銀行と店舗型の銀行の両方に口座を持つことが必要になります。そうすることで双方の良いとこ取りをします。
3−3.ネット専業銀行は出金専用口座、店舗のある銀行は入金専用口座
楽天銀行をはじめとしてネット専業銀行は総じて手数料が安いです。ですから、こちらを出金専用口座としましょう。一方で店舗のある銀行の口座は、公金の引落口座として利用することも想定されるので、入金専用というわけにはいきませんが、こうしたどうしても利用しなければいけないものを除いて、入金のみを扱う口座として利用するのが良いでしょう。
4.口座開設に必要な書類
口座開設のために一般的に必要とされる書類等は次のとおりです。
- 履歴事項全部証明書
- 本人確認書類(運転免許証、パスポート、マイナンバーカード等、顔写真付きの身分証明書)
- 銀行印として使用する印鑑
- 事業内容がわかる資料(会社案内、ホームページを印刷したもの)
ビズ部が推奨する両行の口座開設のために必要な書類は次のとおりです。
少しでも経費を節約したいという方は、りそな銀行(店舗型銀行)で口座開設したうえで、最後にネット専業銀行で口座開設をしてください(理由は後述します)。
4−1.りそな銀行で法人口座開設する手続と必要書類
りそな銀行で口座開設する場合には、コチラのページで手続を確認してください。(原稿執筆時点(2017年7月末)では創業応援パックという創業支援のサービスを実施しており、当該サービスをご案内しています。)りそな銀行で口座を開設するためには、最寄りの支店の店舗に出向く必要があります。
下記の書類が必要ということになっていますが、小さく、最寄りの支店に問合せ下さいと書いてありますので、ご注意下さい。
上記には書いてありませんが、銀行印を持参しないと口座開設は出来ませんので、ご注意下さい。
なお、細かいことですが、店舗型の銀行で口座開設する際にも履歴事項全部証明書が必要なのですが、原本を持参すると返却してもらえます。したがって、ネット専業銀行で口座開設する前に店舗型銀行で口座開設手続を済ませると、2つ口座を開設するとしても必要な全部事項証明書はネット専業銀行の分だけということになります(ネット専業銀行の場合、返却はありません)。
4−2.楽天銀行で法人口座開設する手続と必要書類
楽天銀行に口座開設する場合は、こちらのページから手続を開始してください。ネット専業銀行だけに、ウェブで申し込んで必要書類のみ後から送るというやり方が出来ます。
必要書類は次のとおりです。
- 履歴事項全部証明書(コピー不可)
- 口座管理者(実務上の責任者)の本人確認資料(顔写真付き身分証明書のコピー)
その他、代表者が日本国籍で無い場合、レンタルオフィス、バーチャルオフィスなどを使用してる場合、許認可が必要なビジネスを行っている場合は、その許認可、もしくはその手続きが完了していることを証明する書類のコピーが必要です。
審査を通過すると、「Thank youレター」(簡易書留)「ご担当者様確認レター」(簡易書留)「ログインパスワード設定の依頼メール」(メール)が届きます。これらの通知にしたがって、初期設定をして口座開設完了となります。
楽天銀行の口座開設は書類に不備がなければ、最短で1週間程度で口座開設が出来ます。この口座開設の早さも魅力です。
5.まとめ
わたしからのアドバイスは、とにかく定款作成から銀行口座開設までは一気呵成にやってしまおう!ということです。会社設立することが目的ではなく、事業の成功が目的です。1日でも早く事業を軌道に乗せられるようにしていきましょう。
山口 真導
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