全ての起業家に捧ぐ!オーナー社長の所得税の16の節税対策

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オーナー社長は多額の役員報酬を受け取り、その結果として多額の所得税を納税しています。

役員報酬を減らせば所得税は減ります。しかし、そんなの節税対策でも何でもありません。手取りのキャッシュが減るからです。

そこで、役員報酬からの手取り額を減らさずに節税する手法をご紹介させて頂きます。

この記事を読んで節税対策を実行して頂くことで、自分は税金払い過ぎなんじゃないか?という心配を無くすことが出来るでしょう。

1.所得税の節税対策の4大原則

所得税の計算は、大雑把にいうと、次の算式によって計算されます。

所得税額=(所得(総合or分離)−所得控除) ×税率−税額控除

つまり、所得税節税の4大原則とは、次の4つです。

  1. 所得を減らす。
  2. 所得控除の枠を目一杯活用する。
  3. 適用される税率を下げる
  4. 税額控除の枠を目一杯活用する

 

2.所得を減らす方法

所得を減らす節税には大きく2つの方法があります。

  1. 課税所得(給与所得(=役員報酬))を減らす
  2. 他の所得と損益通算する

2−1.給与所得を減らすことによる節税

あなたの手取りを増やして、かつ、所得税を減らす方法を4つご紹介します。

2−1−1.法人所有の社宅に住む

オーナー社長が法人所有の社宅に住むと自宅の経費の一部分を法人負担にすることができます。これにより該当する経費を役員報酬で受け取った中から支出する必要がないので、その分役員報酬を下げても実質的な手取金額が減らないということになります。

例えば、自宅の減価償却費、固定資産税、修繕費、借入金の利息、損害保険料などは、持ち家の状態では役員報酬の中から支払うだけで所得税の必要経費にはなりません。しかし、法人が所有するとこれらの経費の一部が損金として認められるようになります。

自宅を法人所有にする節税

2−1−2.法人に自宅を売却する

いま個人所有の住宅に住んでいる方は、法人に自宅を買い取ってもらうようにしましょう。

オーナー社長は、法人から自宅の代金を受け取ります。この代金のうち、一部は住宅ローンの返済に充てることになるでしょう。残りの受け取り方は、法人のキャッシュ・フローも考えつつ、行っていくことになります。この残りの代金の受け取り方を、一度にもらうのではなく、役員報酬の支払いと同時に一部ずつ受け取るとすると、役員報酬を減らしても手取り額は減らないことになります。役員報酬には所得税がかかりますが、自宅の代金を受け取る分については、所得税がかかりません。

自宅を法人所有にする節税2

2−1−3.法人の借り上げ社宅に住む

賃貸派のオーナー社長は、是非、法人の借り上げ社宅に引っ越しましょう。

例えば、家賃30万円のマンションを会社で借り上げて、ここにあなたが住むとします。あなたの社宅負担金を所得税法に定められた方法で計算したところ5万円だったとします。あなたは家賃30万円の部屋に5万円の自己負担で済むことが出来るということです。逆にいえば、残りの25万円は法人が負担しているということです。

この25万円を役員報酬として受け取った場合、当然、所得税がかかります。あなたは25万円分の役員報酬を所得税を払わずに手に入れるのと同じということです。年間に換算すると300万円です。

少し節税に詳しい人は、「あれ?社宅負担金は家賃の1/2じゃなかったっけ?」と思ったことでしょう。節税をそれほどしたくないというなら1/2でも構いません。確かに、税務署も1/2を超えていれば何もいってこないでしょう。

しかし、1/2で無くても良いということは、所得税の基本通達にハッキリと書いてあることです。ウソだと思う方は国税庁のホームページをご紹介しますのでコチラを読んで確認しておいて下さい。

2−1−4.出張日当をもらう

出張旅費の実費精算を止めて、出張日当の精算に切り替えることで法人税の節税と役員・社員の所得税の節税ができます。ここでいう出張日当とは、出張に伴う交通費、宿泊料と、現地での活動のための実費相当分となる厳密な意味での日当のことです。

その為には「出張旅費規程」を定める必要があります。

たとえば、出張旅費規程において、出張日当として、社長の場合は、新幹線のグリーン車の利用を認めた場合、実際には普通車指定席を利用したとしても、その該当する区間のグリーン車料金と普通車指定席券との差額を所得税を払わずに受け取ることが出来ます。また、同様に、宿泊料金について、社長の場合は、1泊15,000円と定めた場合、実際には1泊8,000円のビジネスホテルに宿泊したとしても、差額の7,000円は所得税を払わずに受け取ることが可能です。

このように非常に地味で、若干セコい話ではありますが、出張旅費規程を活用することで、法人から、所得税を課税されない形で、日当を受け取ることが出来るのです。

出張が多いオーナー社長は検討してみても良いと思います。

ご注意頂きたいのは、日当は日当でもらっておいて実費は実費で精算しているケースがあることです。これは二重取りなので日当には所得税が課税されます。自分に都合の良いように解釈して、税務調査で指摘を受けないようにご注意下さい。

2−2.損益通算による節税

損益通算というのは、黒字の所得と赤字の所得を合算することで、合計の所得を減らすことをいいます。

例えば、100の黒字の所得がある場合に、30の赤字の所得があれば、100の所得に対して税金を払うのではなく、両方を足し合わせて70の所得に対して税金を支払うというルールです。

損益通算

 

損益通算を利用した具体的な節税対策を4つご紹介しましょう。

2−2−1.100%即時償却できる事業を起ち上げる

グリーン投資促進税制というものがありました(過去形)。個人事業主の場合、事業的規模の太陽光発電設備を導入し事業を開始すると、その設備投資額の全額が即時償却(=いきなり全額損金になる)という制度がありました。しかし、2015年年3月31日で即時償却の制度は終了しています。

過去のものでも取り上げるのには理由があります。この施策は絶大な社会的インパクトがありました。地方都市に大量の太陽光発電設備が作られ、太陽光発電のシェアが3年程度の間に跳ね上がることとなったのです。将来的に、同じように社会構造の変革を狙った施策として同様の施策が表れるはずです。今回は諸事情でこの節税対策を採らなかった方にも、是非、存在を知って頂いて、次の同様の施策の際には採用頂きたいというのが、その理由です。

この即時償却にインパクトは大きかったので、オーナー社長に限らず、お金持ち達は挙って太陽光発電を開始しました。なにせ2億円の太陽光発電設備を導入すると、その年の所得から2億円を経費(=損金)として差引けます。太陽光発電を始めたばかりですので、売電収入は数百万円です。すると、太陽光事業自体は、2億円近い赤字になります。

この赤字は、役員報酬と通算することができます。つまり、役員報酬が太陽光事業の赤字を超えていなければ、給与所得もゼロになり、天引きされた役員報酬に係る源泉所得税は全額還付されることいなります。また、それでも余った太陽光事業の赤字は、青色申告をしていれば、翌年以降に繰り越されます。この赤字を3年間の期限内で使い切るまで節税効果は続きます。

3年で使い切れないとタダの損失になっていしまうという意味では、まさにオーナー社長のための節税手法に相応しいものでした。

太陽光発電の節税モデル

2015年8月現在、100%即時償却の制度というと設備投資促進税制というものがあります。しかし、設備投資促進税制の場合、太陽光発電の売電収入のようにリターンの保証がありません。

太陽光は固定価格買取制度がありますので、日照さえ確保されれば、予定された収入が得られます。設備投資促進税制は、こういう訳にはいきません。確かに数億円の設備投資をして節税になるかもしれませんが、その投資に見合ったリターンが得られなければ、ただ損をするだけということになります。

即時償却の制度は、節税効果をテコにした景気対策という意味で効果が大きいことは、太陽光発電の実績で明確になりました。今後、同様の効果を狙って、政府が新たな即時償却の制度を始めるかもしれません。オーナー社長の節税を考えるという点では、常にアンテナを高く上げて注視していく必要があります。

2−2−2.新規事業を個人事業として開業する

即時償却の制度を利用しなくても、事業所得が赤字になると役員報酬との損益通算を通じて節税効果は得られます。

赤字の事業を行うということは、節税以前にキャッシュ・アウトが過大になることを意味します。したがって、基本的には、一時的に赤字が発生するが、将来的にはキャッシュ・インが増加して、総合的に見たときにキャッシュが増加するものというのが基本になります。

上場会社では利益相反取引になるので難しいでしょうが、非上場の会社であれば、新規事業は社長の個人事業から始めるということにする方法もありえます。法人よりも社長の所得税率の方が高いのであれば、黒字化するまでは個人事業で、黒字化したら事業譲渡を行って資金を回収するという方法もあり得ると思います。上手くいった場合は、税金を払う時期がズレるだけといえばそうですが、新規事業は必ず上手くいくわけではないので、こうしたやり方はあり得ると思います。

但し、不動産事業をこのパターンで実施するのは止めた方が良いと思います。不動産事業(不動産所得)は収支(=キャッシュ・フロー)は初年度赤字になるケースが多いとは思いますが、所得の計算上、建設のための支出が全て損金になるということはありませんので、初年度から黒字になることが多く、仮に赤字になったとしても、赤字額は少ない事が多いです。したがって、損益通算を利用した節税対策としては、オススメしません。

2−2−3.【番外編】趣味で飲食店を開業する

それなりに成功した中小企業の社長が飲食店を経営する、なんてことを時折見かけますが、これは、損益通算を利用した節税になる可能性はあります。この場合、そもそも飲食業に興味があるかどうかというところが非常に重要になりますが、多少の赤字になっても、自分好みのお店を持ちたいという欲求が満たされたうえで、発生した赤字を給与所得と通算すれば、所得税の節税としては成立します。

職業病かもしれませんが、東京ですと、赤坂、六本木、銀座界隈に絶対に採算が取れてなさそうな飲食店に行くと、オーナーが節税目的もあって経営しているのかな?等と余計なことを考えてしまいます。

2−2−4.株式の譲渡損を発生させるタイミングを調整する節税

所得税の全体像の図で「損益通算」として表現されている部分は、他の所得区分との損益通算です。しかし、実は同一の所得の区分の中では、利益と損失を相殺出来るのが原則です。これを利用した節税対策として、オーナー社長が頭に入れておくべきは、株式の譲渡所得の損益通算です。株式の譲渡益から譲渡損失を控除する方法です。将来上場を目指しているオーナー社長は、会社が上場する際に発生する多額の譲渡益は株式の譲渡損としか相殺することが出来ないことを覚えておく必要があるということです。

株式譲渡損益と損益通算

上場するしないに関わらず、複数の会社を経営している方は、譲渡益が発生する会社の株式を売却する際には、同じ年度中に譲渡損が発生する会社の株式を売却するようにしてください。上場会社の株式の譲渡損とも通算することが出来ますので、上場、非上場に限らず保有株式の処分については、この考え方を覚えておくことをオススメします。

なお、上場会社の株式については、譲渡損がその年の譲渡益を超えなかった部分について、3年間の繰越控除が認められています。一方で、非上場会社の株式については、繰越控除は認められませんので、どの株式の譲渡損を活用するかについては、このルールを前提として上手に選択する必要があります。

上場直後のオーナー社長が、後身の育成と称してベンチャー投資に転ずることが多いですが、この手法は、投資先が上場又は売却できれば多額の譲渡益が見込まれる一方で、仮に倒産するようなことがあったとしても、自身の株式を売却して発生する譲渡益と相殺すれば納税額を減らす効果が見込まれます。私の性格が悪いのか、職業病か解りませんが、少なくとも、現在の税法が後身の育成に繋がっていることは間違いないようです。

3.所得控除枠を活用する方法

所得控除とは、所得に対して所得税率を掛ける前に所得から差し引くことが出来る項目のことです。つまり、所得控除の金額が大きければ大きいほど所得税を節税できます。

所得控除の特長は、所得の大きい人ほどメリットが大きいところです。税率が高い人ほど同額の所得控除から得られる節税額が大きいからです。

つまり、役員報酬を沢山もらっているオーナー社長は所得控除のメリットを誰よりも受けることが出来ます。

3−1.小規模企業共済等掛金控除

「小規模企業共済」という小規模事業者向けに、退職金(年金)を積み立てる制度があります。この制度は小規模事業者向けなので、加入に条件があります。

  1. 建設業、製造業、運輸業、サービス業(宿泊業・娯楽業に限る)、不動産業、農業などを営む場合は、常時使用する従業員の数が20人以下の個人事業主または会社の役員
  2. 商業(卸売業・小売業)、サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)を営む場合は、常時使用する従業員の数が5人以下の個人事業主または会社の役員
  3. 事業に従事する組合員の数が20人以下の企業組合の役員や常時使用する従業員の数が20人以下の協業組合の役員
  4. 常時使用する従業員の数が20人以下であって、農業の経営を主として行っている農事組合法人の役員
  5. 常時使用する従業員の数が5人以下の弁護士法人、税理士法人等の士業法人の社員
  6. 上記1、2に該当する個人事業主が営む事業の経営に携わる共同経営者(個人事業主1人につき2人まで)

この条件をクリアするオーナー経営者は、必ず加入するべき制度です。なぜなら、この掛金が所得税の計算上、全額所得控除になります。最大月額7万円で、年額84万円が所得控除される結果、所得税が最高税率の55%の方の場合、46万円の節税になります。掛金は現状1%で運用されます。そのうえ、この節税効果ですから、中小企業の社長は、これはやった方が良いと言うより、やらなければならない!と思います。

逆にいえば、会社が成長してしまうと、いくらオーナー社長と言えども小規模企業共済を使った所得税の節税は出来ないということです。

掛金は最少で月額1,000円からで500円単位で変更可能です。加入条件を満たしているのは、設立直後だけかもしれませんので、入れる時に少ない掛金でも入っておくことを強くオススメします。

3−2.確定拠出年金の保険料の控除

制度的には、5−1.小規模企業共済「等」掛金控除の「等」に含まれるものです。しかし、制度や支払先が異なるので別建てにしました。

確定拠出年金の控除を受けるための保険料の限度額は、オーナー社長の場合、厚生年金に加入しているので、月額23,000円(年額276,000円)が限度となります。

確定拠出年金は運用次第によって受け取れる年金の額が変わるという不確定要素があります。とはいえ、所得税的には、次の3つの大きなメリットがあります。

  1. 掛金が全額所得控除の対象になる
  2. 運用中の運用益は所得税が非課税
  3. 年金は退職所得扱いになり課税されない

こちらは小規模企業共済のような加入条件はありません。まだ加入していないオーナー社長は、是非、満額加入をして頂きたいと思います。

3−3.生命保険料控除

通常、生命保険は法人で入った方がお得です。なぜなら、契約者と保険料の受取人が法人であれば、保険料の全額が法人の経費になるからです。しかし、多くの経営者が、生命保険料控除の枠を超えて多額の個人保険に入っています。

生命保険料控除という所得控除の「枠」は存在するので、その枠を目一杯利用する上限の保険料を知っておくことは、節税を漏れなくするという意味では有効ですが、それ以上に、保険料のいくらまでが控除枠の範囲内かしっておくことが、キャッシュ・フロー的には重要になります。

その金額は、驚くほど低いのです。

「一般の生命保険料」の場合、1年間の払い込み保険料が8万円(旧制度は10万円)です。これを超えた金額を申告しても控除額は頭打ちです。節税効果は最大でも4万円強ということです。

一方で、介護保険料や年金保険料の枠を利用していない経営者の方もいます(経営者に限らず、枠が余っている方が多い)。

介護保険料と年金保険料も上限8万円の枠がありますので、一般の生命保険に偏ることなく、まんべんなく小さな保険に入っておくのが、個人の所得税の節税という意味では重要です。

(参考:タックスアンサー:生命保険料控除

3−4.地震保険料控除

地震保険料は長期損害保険料と合わせて、上限が5万円です。

考え方は生命保険料控除と同じです。

但し、個人の資産にかける損害保険を法人の経費にすることは出来ません。したがって、実際に地震や火災があった場合に、どのように自分の資産を守るか?も同時に考えて保険に加入する必要があります。節税だけで保険料を考えることは危険です。

(参考:タックスアンサー:地震保険料控除

3−5.ふるさと納税

最近流行の「ふるさと納税」は、住民税を自分が住んでいる自治体以外に支払った場合に、それを寄付金とみなして寄付金控除を受けられるようにした制度です。

最近、なにかと話題になっているので、耳にしたことがある方や、実際にやっている方も沢山いらっしゃると思います。

ふるさと納税は、それをすることで自己負担額の2,000円を除いて住民税や所得税が減るので、ふるさと納税自体が節税対策になるということではありません(ふるさと納税の額を支払っているので、この段階では、マイナス2,000円です。) 。また、寄付金控除には所得に応じた「枠」があるので、この枠を超えるふるさと納税をした場合は、その分、損することになります。

したがって、ふるさと納税で得をするためには、自分の所得に応じた枠内でふるさと納税を行ったうえで、年間2,000円を超えるメリットを受け取らなければなりません。

幸い、ふるさと納税をすると、その自治体から納税額に準じたプレゼントが貰えるようになっています。このプレゼントがふるさと納税をする実質的なメリットになります。

ふるさと納税の枠は、所得が大きいほど大きくなります。

年収300万円の独身だと31,000円ですが、年収1億円になると4,362,000円もふるさと納税することが出来ます。その分、プレゼントを貰うと、食費をゼロにすることも可能と言われています。ふるさと納税をクレジットカードでできるようにしているサイトもありますので、こうしたサイトを利用して、ふるさと納税をすれば手間もかかりません。

簡単にふるさと納税が出来ると、ふるさと納税をしたことを忘れる人が出ます。それが税理士の一番の心配事です。

(参考:ふるさと納税ポータルサイト

4.適用される税率を下げる

所得税では、所得毎に、所得に応じて税率が変わるものと、一律に税率が適用されるものとがあります。

所得の額に応じて税率が変わるものについては、先に説明した所得を減らす節税対策を実行すれば税率も下がります。一方で、一律に税率が定められているものについては、出来るだけ税率の低い所得区分で受け取るようにすることで納税額を減らすことが可能になります。

4−1.ストックオプションではなく現物株式を取得して節税する

オーナー社長の場合、持株比率の関係で、ストックオプションから得られる利益の全てが株式譲渡所得として取り扱われる税制適格ストックオプションを取得することが出来ません。したがって、ストックオプションを受け取るとすると、必然的に、税制「非」適格ストックオプションを受け取ることになります。

給与所得で最高税率(住民税と合わせて55%)に達しているオーナー社長の場合、税制非適格のストックオプションを取得すると、権利行使時までの値上がり益は給与所得として最高税率で課税されてしまいます。一方で、ストックオプションではなく、その時点で現物株式を取得していれば、その後の値上がり益は全て株式譲渡所得となり、20%の税率しか課せられません。

ストックオプションと所得税

株式投資が100%値上がり益が狙えるわけではありませんので、上記の話は「たられば」になるかもしれませんが、値上がり益の期待出来ないストックオプションなら取得する必要自体がありません。将来の所得税を節税するという観点からは、オーナー社長の場合は、ストックオプションではなく現物株式を取得した方が良いのです。

4−2.役員報酬を抑えて退職金でもらう

役員報酬を不必要に多額にもらってしまうと、半分以上税金になってしまいます。

生涯手取り年収を最大化するという意味では、不必要に高額な役員報酬を避けて、最終的に退職金として受け取るというシナリオが効果的です。

しかし、オーナー社長の多くは、タンマリ退職金をもらうため、役員報酬も最高税率で退職金も最高税率ということが発生してしまいます。実は、それでも退職金でもらった方がお得です。なぜなら、退職金でもらう場合、分離課税で税率が下がるほか、退職所得控除という退職金独自の所得控除のしくみがあるからです。

【所得別税額の試算】

・給与所得の場合:(1億円−所得控除2,450千円)×55%=53,652千円

・退職所得の場合:(1億円−所得控除8,000千円)×1/2×55%=25,300千円

※所得税+住民税合わせて実効税率55%、役員勤続20年で計算

役員報酬で1億円もらう場合に比べて、退職金を1億円もらう場合には、いずれも税率は最高税率になりますが、手取り額は28,352千円も違います。これは退職所得控除の違いによるものです。

退職所得控除の計算は次のとおりです。

勤続年数(=A) 退職所得控除額
20年以下 40万円×A
(80万円に満たない場合には、80万円)
20年超 800万円+70万円×(A-20年)

(上記は、タックスアンサーより抜粋

退職所得控除だけでなく、さきほど税率のところでもお話したように課税所得の額が1/2になるなど、退職金は退職所得として優遇されるので、それなりに注意して受け取る必要はあります。その受け取り方については、コチラの記事に詳しく書いてありますのでご一読をオススメします。

なお、役員報酬を抑えて退職金でもらうということは、年々の法人の所得が増加してしまい法人税の支出により退職金の原資が溜まりにくくなるということがあります。そうしたデメリットを抑えるために、生命保険を活用して、簿外に退職金の減資を溜めておくということも重要な対策となります。その辺の積立については、コチラの記事に詳しく書いてあります。

5.税額控除を活用する

ここまでで一旦税金の額は計算されますが、そこから更に税額控除という形で税金を減らすことが出来ます。

5−1.(特定増改築等)住宅借入金等特別控除を活用した節税対策

なんといっても、「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除(以下、住宅ローン控除)」でしょう。

他の税額控除は、現実に個人事業で適用して節税するのは難しいと思います。(税金を払うくらいなら、NPOや政党に寄付した方が良いという方はそちらの税額控除もご検討下さい。)

住宅ローン控除とは、居住者が住宅を取得した場合に、ローン残高の一部( 年度によって異なりますが1%程度)を一定期間(こちらも年度によって異なりますが7年から15年程度)を所得税額から控除するという制度です。

いつ住宅を取得するかによって控除される金額と期間が異なりますので、その年毎の控除の制度を確認のうえで処理する必要があります。(確認はコチラで出来ます。)

5−1−1.オーナー社長が陥り易い住宅ローン控除のワナ

住宅ローン控除には、オーナー社長ならではの陥り易いワナが潜んでいます。

それは、課税所得の上限額というワナです。住宅ローン控除を受けることが出来るのは、その年の合計所得金額が3千万円以下であるという条件があります。役員報酬が多額過ぎてこの条件をクリア出来ないということが良くあります。

役員報酬の合計が月額250万円を超える場合には、他の所得と合わせてこの条件に抵触する確率が極めて高くなります。こうしたケースでは、この記事でご紹介したあらゆる節税対策を駆使して、合計所得金額を3千万円以下にする努力をしなければ、住宅ローン控除を適用することが出来ません。

逆に、合計所得金額が3千万円を下ることが絶対にないという場合には、この節税は使える可能性がゼロですので、諦めて頂くしかありません。

所得税の申告書を作って見たら、住宅ローン控除が適用出来なかった。しかも、それがそもそも適用出来る可能性などなかった、ということになると、悲しい思いをすることになりますので、充分にご注意下さい。

5−1−2.オーナー社長が注意すべき住宅ローン控除の上限額

オーナー社長の場合、かなり高額な住宅を建設することになると思います。 そうなると住宅ローンの借入金残高もかなりの高額となり、その1%が控除されるとなると、かなりの節税となります。しかし、こうした高額な住宅であればあるほど税額控除が大きいとなると、金持ち優遇と財務省が批判を浴びることになります。

そこで、住宅ローン控除の額には上限額が設定されています。平成26年4月1日から平成29年12月31日までに新築する場合の上限額は40万円です。例えば、1億円の住宅ローン残高がある場合、その1%は100万円ですが、住宅ローン控除出来るのは40万円までということです。

なんだ、40万円か。と思ったかと思います。この40万円を最高税率の55%で割り戻して、所得換算すると90万円(=40万円÷(100%−55%))の所得に相当します。そう思うと、多少はやる気になって頂けるのではないでしょうか。

5−1−3.オーナー社長が考えるべき住宅ローン控除の活用法

新築後10年程度は住宅ローン控除を受けることができますが、それ以降は住宅ローン控除を受けることは出来ません。

そこで、オススメなのは、10年ごとに新しい家を購入するということです。この方法はキャッシュ・フローが潤沢なオーナー社長にしか出来ない手法です。これまで住宅ローン控除を受けていた自宅は、他の人に賃貸に出します。つまり、不動産所得を産み出す源泉とするということです。

この方法を考えるのなら、最初から「貸せる住宅」を取得することを考えて下さい。戸建てより高級マンションが良いでしょう。例えば、都心やベイエリアのマンションであれば、100㎡を超えるようなマンションが外資系の会社の役員用社宅や大使館職員の社宅といった形で需要があります。こうした物件であれば、月額100万円〜200万円程度の賃料も夢ではありません。もちろん、ノーリスクというわけではありませんが、あらたな収益源を得ることが可能です。

一方で、オーナー社長は、住宅ローン控除があり続ける限り、新しい家に10年おきに住み替えをしてください。もし、住宅ローン控除が打ち切りになったら、賃貸派に鞍替えするか、空き家になった収益物件に戻る方法もあります。

6.まとめ

今回ご紹介した節税対策は、全て、この図に示された所得税の計算ロジックに基づいた合法的なものです。

 

所得税の計算体系

このフレームワークは、多少の微修正はありますが、大枠は何年も前から変わっていません。私がオーナー社長に節税対策を提案する際には、常に頭の中にこのフレームワークを思い浮かべて話をしているものです。政策的な減税策が、この中のどこにインパクトを与えるモノかを理解する手助けになると思います。

日経新聞で所得税の節税関連の記事を見かけたら、このフレームワークの中のどこに位置付けられるものかを確認すると効果的です。すぐに取り組むべき対策かどうかの判断が出来ることでしょう。

今回、将来新たに設けられるであろう節税対策への対応をご紹介したところで、この記事を終わりにしたいと思います。

長文にお付き合い頂き、ありがとうございました。

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山口 真導

山口 真導

過払い税金対策専門税理士株式会社アカウンタックス
中小企業の資金繰りを改善するソフトウェアの開発に失敗し、自社の資金繰りがつかなくなる。その時、利益より資金が大事だとようやく気づく。以来、資金繰りの悩みを節税対策と銀行対策で解決する専門家として活動。中小企業経営者のお金の問題を他人事ではなく自分事として捉え解決している。著書に、起業5年目までシリーズで「資金繰りのキホン」と「節税のキホン」がある。

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