法人保険契約の必要性と法人税節税の3条件

Pocket

2011年3月11日の東日本大震災直後に書かれた、被災地の税理士の方の手記には「津波の後に残ったのは、借金と預金と保険だけだった」とありました。

この手記が私に保険について深く考える機会を与えてくれました。

法人で生命保険に加入することは、最もポピュラーな節税対策として知られています。

しかし、最近では全額損金算入になる生命保険は極めて限定的になり、生命保険の節税効果は下がったというのが一般的な見方です。しかし、全額損金算入の保険がなくなったから生命保険はダメだと考えるのは間違いです。いまの状況は一から経営における生命保険の位置付けを考える機会なのです。

もっと賢く、経営の中に法人保険を位置付け、あなたの会社の安定的な成長と発展のために、どう活かしていくのかを、この記事を読むことを通じて検討して頂きたいと思います。

 

1.なぜ、法人保険に加入すると良いのか?

法人で生命保険に加入する目的は節税だけではありません。節税を期待している方には悲しいお知らせになるかもしれませんが、本当の話をしたいと思います。

1−1.生命保険の加入は保険会社を儲けさせるだけなのか?

生命保険への加入があなたの会社にもたらす効果は、端的にいうと、「現在の利益を圧縮し、将来の利益を増やす」ということです。

私どもがどの法人にも加入をオススメする鉄板の保険は、保険契約後、5年程度で単純返戻率が100%を超えるような生命保険です。

この保険(話を単純かするために全額損金算入の保険とお考え下さい)に加入した場合、保険料を100支払うと法人税等が40(実効税率40%と仮定)節税することが出来ます。そして、5年後に単純返戻率が100%だとすると、解約返戻金が500戻ってきます(=保険料を100×5年支払っているからです)。この500の解約返戻金にも税金がかかりますので、この時点で法人税等を200支払うことになります。

保険料を支払う時

保険金を受け取る時

そうなると、保険料を支払うことによる節税効果も解約返戻金をもらうことによる増税効果で打ち消されてしまい、払った保険料が戻ってきただけということになります。

そして法人保険を毛嫌いする経営者は言います。「保険会社が儲かっただけ」と。

1−2.預金で残すとどうなるか?

「保険会社が儲かっただけ」とあなたに言われて、反論してくる営業マンはいないでしょうから「やっぱりそうか」と思っているのかもしれないので、私がハッキリお伝えしましょう。

保険会社はあなたに保険料500をもらい保険金500を払ったので、あなたの保険料では1円も儲かっていません。その保険料を運用して利益を出したのであって、あなたを損させることで受け取った資金はありません。

あなたは保険会社に保険料を払うより自分で運用した方が良かったというかもしれませんが、その為に、生命保険契約を結ばなかったらどうなるかといえば、保険料100の分利益が増えるので、そこから40納税した後の60しかあなたは運用出来ないことになります。

キャッシュで残す場合

残った60の運用のために、貴重な時間が割けるのであれば、選択肢になるのかもしれません。

1−3.赤字の穴埋めとしての生命保険

統計を取ったわけではありませんが、複数の生命保険の営業マンに質問したところ、法人保険の契約継続年数は、およそ5年程度ではないかということでした。

これはすなわち、保険金の支払事由が発生していないにも係わらず、保険契約を解約し解約返戻金を受け取っているということに他なりません。

なぜ解約するかといえば、単に業績が悪化したという理由で保険契約を解約し、赤字を穴埋めするということが圧倒的に多いのです。多くの経営者が保険に入っておいて良かったと思うケースというのが、この赤字の穴埋めのために保険を解約するというケースなのです。

一過性の赤字でも、例えば建設業の場合には入札に参加出来なくなるということがあります。

この場合、保険の解約でも何でもして黒字にする必要があります。

また、銀行に対しては、一過性の赤字ならともかく、2年、3年と赤字を繰り返すわけにもいきません。そうなると、なんとかして黒字にするために、過去の黒字に際に加入してきた生命保険を解約して、その解約返戻金で黒字化する必要性というのが出てくるのです。

過去の黒字の時に生命保険に加入していなければ、その解約によって、目の前の決算期を黒字化するということも出来ないのです。

実は、この時、解約返戻金が赤字と相殺されることにより課税を受けないことになります。つまり、生命保険料の支払いによる節税効果だけを受け取るという節税のいいとこ取りが出来るのです。

将来の赤字の不安のない経営者の方が少ないでしょう。現実には、こうした形で生命保険が活躍しているということを知っておいて頂きたいと思います。

蛇足になりますが、赤字の穴埋めを考えた場合、生命保険の契約は複数に分散しておくことが効果的な場合があります。例えば、保険金1億円の契約を5千万円2本に分けて契約しておけば、赤字の程度に応じて1本だけ解約するか2本とも解約するかという選択が出来ます。最近は1本の契約を部分的に解約出来る生命保険契約も増えてはいますが、目の前の節税ばかりに目がいっていると、こうした出口戦略がおざなりになりがちですので、生命保険契約の解約のシナリオも複数もって契約するようにしましょう。

1−4.保険は保障

法人で契約する場合、保険料が多額になることが多いため、それを支払う時に感情的になるのは仕方がないと思います。

1−1で説明したとおり、節税効果というものが「無条件」で手に入るものではないということがご理解頂けたと思います。(節税効果が出る条件については、のちほど、第3項と第4項で説明しますのでご安心下さい。)

保険は「保障」です。

この「保障」は、特に次の二つの意味で重要です。

  1. 被保険者に不測の事態があった場合に保険金を受け取ることが出来る。
  2. 利益の出ている時に保険料を払うことで利益を圧縮し、利益が出ない時には保険金を受け取ることで利益を増やすことが出来る。

 

上記の1については、保険なんだから当たり前なのですが、特にあなたの会社であなた自身に何かあった時に、家族や社員がどのように生活を維持するのかを考えた場合に、その意味の大きさがご理解頂けることでしょう。

また2については、具体的な内容は1−3でご説明したとおりです。この点については記事を書いているこの時期だからこそ重要なテーマです。アベノミクスの恩恵を受けている企業や、東京オリンピックに向けて好景気が期待出来る状況を考えると、逆にその先に想定される不況に備えるために何が出来るのかが経営上の大きなテーマになるからです。その対策として、いま当に生命保険の加入を検討しておく時期なのです。

アリのようにセッセと保険料を支払うのは保険会社のためではありません。あなたとあなたの会社の社員の為です。キリギリスにならない経営が求められているのです。

2.生命保険は節税対策のためだけで加入しない?!

法人に生命保険の契約を提案する際に、営業マンはやたらと節税効果をアピールします。ハッキリ言って、これは色々な意味で間違いだと思います。自ら生命保険嫌いの経営者を増やしていると言っても良いでしょう。

誤解されないようにお伝えしておくと、私は税理士でもありますが、生命保険の販売をすることもあります。しかし、節税対策のみで生命保険をオススメするということはありません。なぜなら、そもそも、節税だけを目的に保険契約を締結することは、税務署が嫌う「経済合理性のない取引」に当たるからです。少なくとも理屈上は節税だけを目的として生命保険に加入するならば、その保険料を税務署は否認することだって出来るのです。

私の言いたいことは、ただ一つです。節税よりも経営の方が大事だと言いたいのです。そして、経営は継続が大事です。あなたの家族や従業員とその家族。得意先や取引先を含めて、あなたの会社が経営不振になれば迷惑をかける相手は沢山いるはずです。

もうひとつは、不測の事態は意外と起こる可能性が高いということです。

日本人が、がんになる確率は2人に1人という統計もあります。がんの治療ということになれば、数ヶ月の入院ということもありえます。あなたがいない間も役員報酬をもらい続けるための原資は、法人契約のがん保険の保険金です。こうした事態が2分の1の確率で起こるとしたら、保険契約はできればしておいた方が良いと考える方が合理的な考え方だと思います。

つまり、経営上、保障を考えるのは必要不可欠であって節税よりも重要であるということです。

本題に戻りましょう。

生命保険に加入することによって、どのような保障が得られるかについて、まずはしっかりと理解することが重要です。

法人で生命保険に加入する場合、被保険者を経営者とする場合と従業員とする場合があります。

経営者を被保険者とするケースでは、つぎのような経営リスクに対する保障が出来ます。

  1. 経営者の死亡によるリスク(経営の継続、従業員の雇用確保、借入金の返済等)
  2. 経営者の就業不能(ガンなどの三大疾病、障害・入院の発生)
  3. 経営不安(景気変動、取引先の倒産時の損益調整等)
  4. 大きな資金需要(経営者退職金、大規模修繕・設備投資等)
  5. 事業承継・相続対策資金(円滑な遺産分割・事業承継対策等)

 

いずれも大きな経営リスクですので、ある程度利益が出るようになったら、このリスクに対処するために保険の活用を検討するべきことを、ご理解頂けるでしょう。

また、従業員を被保険者するケースでは、従業員に対する福利厚生制度の一つとして、従業員の長期安定雇用と人材流出防止に貢献することが期待されます。

それぞれ保障内容とあなたの会社の損益状況、あなたの年齢等の諸条件に応じて、どんな保険に入るべきかは変わってきますので、ここではその詳細は書きません。ひとつだけお伝えしておくと、こうした保障と生命保険契約の内容ということに関しては、税理士よりも生命保険の営業マンの方が詳しいです。

少し脱線しますが、最適な保険提案を受けるための営業マン選びのコツとしては、売れている営業マンから買うことです。なぜなら、売れていない営業マンは止めてしまう確率が高いからです。保険選びが当たったか外れたかは保険契約を解約するときに解ります。それまで、ずっと生命保険の営業マンで居続けられる人から買えば、正しい保険を勧めてくれる可能性が高くなります。逆に、売れていない営業マンは先のことまで考えることが出来ないので、自分の販売手数料が多い保険を勧めてくる可能性があります。保険の解約まで責任をもって対応してくれる営業マンを見つけることが重要なのです。

3.生命保険で得られる節税メリットについて

まずは第1項の復習をしたいと思います。

保障を目的として生命保険に加入すると、支払う保険料の全部又は一部が法人税の計算上損金として認められます。

これが生命保険による節税効果として広く認識されている部分です。

法人税等=(益金−損金)×税率

∴損金が増えると法人税等が減る

∴益金が増えると法人税等が増える

一方で、保険契約毎に定められた支払事由に該当する場合には保険金を受け取ることになります。また、保険契約の中途で保険契約を解約した場合に解約返戻金を受け取ることがあります。これらは法人税等の計算上は益金に算入されるため、法人税等が課税されることになります。

こちらをちゃんと説明する生命保険の営業マンは、ほとんど見たことがありません。

生命保険契約をする際に、保険料を払う時点での節税メリットだけを考えていると、保険契約の出口で思わぬ課税を受けることになります。したがって、生命保険の節税メリットを考える場合には、保険金を受け取る時点まで含めた保険契約期間全体での節税メリットを考えたうえで契約する必要があります。

3−1.保険料を支払う時点での節税メリット

さきほどご紹介したとおり、支払う生命保険料が損金に算入されることで、法人税等を減らす節税効果が期待されます。

しかし、生命保険料の全額が損金になる保険契約は極めて少なく、一般的な保障を考えた場合には、支払う保険料のうち1/2が損金になるもの(以下、1/2損金)や、1/4が損金になるもの(以下、1/4損金)が主流です。

保険料を支払う時点での節税メリットを考えた場合、保険料の全額が損金算入できるものが最も効果が大きいです。仮に実効税率を40%と仮定すると、全額損金算入出来る保険の場合、保険料の40%分は法人税等がその分少なくなることによって回収されると考えることが出来ます。

こうした考え方を採り入れて出されるのが「実質返戻率」という考え方です。これは、さきほど1−1のところで使った「単純返戻率」という言葉と対をなす考え方です。

単純返戻率は、払った保険料に対する解約返戻金の比率をいいます。一方で、実質返戻率は、払った保険料から節税額を控除した金額に対する解約返戻金比率をいいます。

単純返戻率(%)=解約返戻金/支払保険料×100

実質返戻率(%)=解約返戻金/(支払保険料−節税額)×100

ですから基本的には単純返戻率<実質返戻率という関係が成り立ちます。(保険期間の後半で単純返戻率>実質返戻率となる保険もありますが、そうなるまで保険契約を継続するような非合理的な方はいないと仮定して話は進めさせて頂きます。)

実際の保険の設計書のサンプルをご紹介します。保険の営業を一度でも受けたことがあるかたなら馴染みが深いと思います。

保険設計書サンプル

3−2.保険契約期間全体での節税メリットは損金割合とは関係ない

保険契約期間全体での節税メリットを考えてみましょう。

同一条件で損金処理割合ごとに保険契約期間全体での節税メリットを比較した次の表をご覧下さい。

保険の損金算入割合と節税額への影響

当初の損金算入額は保険料が同じ100万円でも、それぞれ損金割合に応じて異なります。

保険金を100万円受け取ると益金になるのですが、当初の損金割合に応じて保険差益の額が異なります。これは保険差益の額が、満期返戻金から保険積立金(=表中の資産以上額)を差し引いた金額になるからです。

支払った保険料100万円のうち、損金にならなかった部分は資産(保険積立金)として処理されます。その損金にならなかった分は、保険金を受け取った際にも全額が益金として課税されるのではなく、資産(保険積立金)の分を控除した金額に対して課税されるのです。

つまり、満期返戻金が同じならば、結局、保険差益の額が損金割合と反比例することになるので、保険契約から解除までの全期間合計で比較すると、所得影響額は同じになるのです。

つまり、1/2損金や1/4損金の保険は一時的な節税効果は全額損金よりも低いですが、保険契約期間全体でみると、全額損金算入の保険と同じ効果なのです。

損金算入額が少なければ少ないほど、保険積立金の額が増加し、保険差益の額も減少します。逆に保険料が全額損金算入されると、保険積立金の額がゼロになるので、満期返戻金の全額が保険差益になるのです。

3−3.やっぱり保険は保障なんだという事実

ここで理解頂きたいのは、一時的な節税を考えた場合には全額損金が良いことは間違いないですが、生命保険契約全体で考えた場合、損金割合に係わらず節税効果が同じであるならば、節税効果で保険を選ぶのではなく「保障内容」で保険を選択すべきということです。 

なぜ、このような説明をするかというと、つい最近まで法人の節税対策としては、単純にがん保険に加入しておけば良いという時代があったからです。がん保険は、全額損金算入できて節税効果も高く、かつ、第2項でご紹介したとおり、補償の必要性という観点からも、がんを発症する確率も高いことから、間違った選択ではありませんでした。

ですから、保険にも節税にも詳しく無い営業マンは、何も考えずにがん保険を販売しておけば良かったのです。

しかし、このがん保険は、2012年(平成24年)4月27日以降に契約するものから1/2損金へと変更になったため、状況が変わったのです。現在も、全額損金算入できて解約返戻金が期待出来る生命保険がないわけではありませんが、がん保険に比べると保障という意味でピッタリあうケースは少ないと思います。

それにも係わらず、全額損金という理由だけで、保障内容が会社に会わない保険を無理矢理売っている営業マンや、契約者変更などのイレギュラーで税務リスクも高い生命保険契約に走っているダメな営業マンが少なくありません。(保障内容がマッチしている。契約者変更するのが相応しい事案というのも当然ありますのでそれ自体を非難しているわけではありません。)

がん保険が1/2損金になったことを悲観的に捉える必要はないのは、先ほどの数値例をご覧頂けば明らかです。

いま生命保険に期待する保障内容を明確にしたうえで、生命保険の契約内容を検討するという普通の時代が来たといえます。我々税理士も税法だけでなく、保険の勉強も必要になりますので大変ですが、生命保険会社とタッグを組んで、良い保険を提案していく必要性があるのがいまの現状です。

「王道で行きましょう。」ということです。あなたも本物の生保営業マンと本物の税理士と付き合えばあなたの会社にピッタリの生命保険を見つけられるはずです。

この記事は、あなたが本物を見分けるために役に立つはずです。

4.生命保険契約がもたらす節税の3条件

ここまで、生命保険による節税について否定的に書いてきました。それは、あなたの意識を改革したいという意図があってのことです。

法人税で生命保険契約をすることは、間違いなく節税対策になります。

生命保険契約が節税効果を発揮する条件は次の3点です。

  1. 直近の法人税等の納税額が存在する。
  2. 法人税等の実効税率の低下トレンドがある。
  3. 中長期の事業計画に財務戦略として組み込まれている。

 

ここからが本番ですので、お付き合い下さい。

4−1.直近の法人税等の納税額が存在する

生命保険契約を結び生命保険料を支払えば、全額資産計上の保険契約を除けば、少なくとも直近の納税額を減らすことが出来ます。

支出を投資、消費、浪費と三分類する考え方からすると、国民として申し分けないのですが、納税は消費以下に分類せざるを得ません。あなたの会社に直接見返りがあるものではないので、国民の義務は果たすとしてもそれ以上のものではありません。したがって、会社経営という観点からは、生命保険のように簿外に資産を構築して、納税額を減らすことにメリットがあります。

わたしは節税を納税額を減らすことという風に定義していません。わたしの節税の定義は、キャッシュ・フローの改善です。(詳細は、拙著「起業5年目までに知らないとコワイ節税のキホン」をご一読下さい。)

保険料を支払うと節税にはなりますが、節税額以上に保険料を支払うことになります。したがって、生命保険契約を締結すればキャッシュ・フローは悪化します。

しかし、生命保険契約の中には、契約者貸付を利用できるものがあります。契約者貸付とは、解約返戻金を担保にして生命保険会社から資金を借り入れることをいいます。解約返戻金の額が、支払った保険料の額に近づいてくると契約者貸付を利用することで支払保険料の一部を会社の資金繰りに充てることが出来るようになります。

特に、銀行融資の場合には審査に半月から1ヶ月程度時間がかかるのが普通ですが、契約者貸付の場合は2〜3日で借入が出来るので、短期的な資金需要に際して有効な手段となります。

節税とは少し話がズレてしまいましたが、直近の納税額を減らしつつ、かといって支払いっぱなしではなく資金繰りに充てられるメリットも得られるということも知っておいて頂きたいところです。生命保険契約を検討される際には、契約者貸付の有無についても必ず確認するようにして下さい。

4−2.法人税の実効税率の低下トレンドを活用する

法人税の実効税率の引き下げが進んでいます。

ということは、いま課税されるより、将来課税された方が有利ということです。

3−2の数値例のように、生命保険が所得に与える影響がゼロでも、税率が違えば、納税額が変わるからです。

法人税等=(益金−損金)×税率

∴税率が下がれば法人税等が減る

今後も、この傾向は続くでしょう。

ですから単純に課税される時期を将来に繰り延べていく方法が、実効税率の引き下げ傾向が続く限り有効なのです。

これは生命保険に限った話ではありませんので、頭に入れておいて欲しいと思います。

4−3.益金の発生をさせない財務戦略を構築し実行できる

保険料を支払うことで節税効果があり、保険金や解約返戻金を受け取ることで逆に納税が発生するのであれば、保険料の支払いの節税効果は享受しつつ、保険金や解約返戻金の納税を発生させないようなスキームを考えれば良いということになります。

そのスキームとは、ズバリ、益金が発生する期を赤字にするということです。

保険金の方は、支払事由が発生したら入って来てしまいます。しかし、その場合、被保険者に不測の事態が発生したということになります。高額な生命保険の被保険者は通常は経営者であり、経営者に不測の事態が発生したということは、中小企業の場合であれば、大きな損失を発生させる要因になります。その損失と解約返戻金の収益とが相殺されることで節税になるのです。

また、経営環境の悪化により赤字が発生した場合に、これを穴埋めしたいという事態も想定されるでしょう。こうした場合には、生命保険契約を解約することで収益が発生したとしても赤字と相殺されるので、黒字の時に支払った保険料分の節税効果だけが残ることになります。

ここまでは、あくまでも自然に発生する赤字です。

財務戦略という意味では、最終的に生命保険の支払事由も解約事由も発生しない場合に備えて(?)、役員の退職金などの多額の経費(損金)の発生と解約返戻金という益金とを相殺出来るように解約返戻金のピークをコントロールするという方法があります。

相殺する財務戦略

つまり、生命保険の契約は保障という位置づけで行いつつ、支払事由も解約事由も発生しない場合には、最終的に役員退職金の支払い原資としてこれを利用するというような両面対応が必須であるということです。

支払事由も解約事由も発生しなければ、結果的には、節税額は退職金の原資として簿外に蓄積されたことになります。法人税等を退職金でもらうというイメージで考えて頂ければと思います。

なお、退職金という形で報酬を受け取るということは、受け取るあなたの所得税も、通常の役員報酬や配当金として受け取る場合に比べて圧倒的に有利になります。

このようにどちらに転んでも、あなたが得をするような財務戦略を組み立て、その中に生命保険を位置付けた時に初めて、生命保険による節税メリットというものが顕在化するのです。

このことを忘れないようにして下さい。生命保険が強力な節税対策となり得るのは、この財務戦略とセットになったときだけです。

※退職金の積立と節税のやり方の詳細については、それだけで大きなテーマになりますので、別の記事を用意したいと思っています。

5.保険料が払えなくなったらどうするか

生命保険は、いま黒字、将来赤字の可能性のある会社にとって、財務的に大きなプラスになりますが、この黒字が一過性の黒字の場合には、却って財務上あなたの会社を危険にさらす恐れがあるので注意が必要です。

というのも、法人の生命保険料を一時払いして損金に算入出来るモノはないからです。つまり、一度生命保険契約をすると、毎年、保険料を支払う必要があるのです。例えば、今年100万円保険料を払う契約をすると、来年も100万円払う必要があります。したがって、今年たまたま利益が沢山出たからと大型の保険契約を結んでしまうと、来年以降の保険料が支払えなくなってしまう可能性があります。

通常、損金算入割合が高い保険のほうが、保険料に対する解約返戻金の割合が高まるまでに時間がかかります。つまり、節税狙いで全額損金算入の生命保険に加入したところ、数年で保険料が支払えなくなってしまうと、その時点で解約すると全体として損失が発生する可能性が高くなります。

したがって、生命保険契約を締結するにあたっては、当年度だけではなく、将来のキャッシュ・フローの見込みも踏まえて、契約内容を決めるようにして下さい。

しかし、節税対策=生命保険契約とい考え方が浸透しているので、そこまで考えずに生命保険契約をしてしまい、翌年には保険料を支払うことが出来ない会社があったりします。この状態にした経営者に責任がありますが、こういう会社に保険契約をさせた営業マンとそれを止めなかった税理士にも問題があると思います。

出来れば向こう5年程度、少なくとも3年程度の将来の損益状況を踏まえたうえで契約をしないと、直ぐに生命保険契約を解約しなくてはならなくなり、多額の損失を計上することになる可能性があります。この辺りを踏まえたうえで、保険契約の是非を検討するようにして下さい。

生命保険料が払えなくなった場合の対処法は5種類あります。

保険料が払えなくなるとすぐに解約してしまう経営者もいますが、生命保険の契約は長期間継続してこそ「旨み」があるのが普通です。返戻率のピークが早い段階で訪れる保険もないわけではありませんが、通常は5年から10年前後の期間でピークを迎えるものが主流です。短期的にキャッシュ・フローが苦しくなっても、なんとかそこまで持っていく工夫をしなければなりません。次の5種類の方法は、その工夫を凝らした方法です。

5−1.「契約者貸付制度」を利用する。

生命保険契約の多くで、解約返戻金を担保にして、その額の8割から9割を生命保険会社から借り受けることが出来る制度があります。この資金を保険料として充当することが出来ます。基本的に審査がなく、一週間から数日で貸付を受けることが出来ます。この制度は、保険料が支払えない時だけでなく、通常の運転資金の調達にも利用することが出来ます。

5−2.年払い契約の場合は月払いに変更する。

1年分は支払えないけど、1ヶ月ずつなら支払えるというケースはこれで行きましょう。但し、年払いの場合より支払総額が増えますので利回りは悪化します。

5−3.保障内容を減らす。

保障内容を減らせば保険料も減ります。一部解約なので、解約返戻金が戻ってきて資金繰りを助けることもできます。

5−4.「払い済み終身保険」に変更する。

保険料が支払えないけど、解約しなければならないほどでもない場合は、払い済み終身保険にすることで保険契約は残しつつ、解約返戻金を少しずつ増やすことが出来ます。解約して返戻金を銀行に預金するより利率は高いのが普通です。また、保険契約は残っているので、リスク対応にも活用出来ます。

5−5.払込を中止して失効させる。

失効させるので一時的に保障はなくなります。過去の未払分を含めて、保険料が支払えるようになった場合には、保険契約を復活させることが出来ます。(年々、保険契約の復活が難しくなっています。この方法は保険会社に事前に相談しながら検討するようにして下さい。)

6.節税のおまけつき生命保険を探そう

生命保険を嫌いだという経営者の気持ちが分からないわけではありません。その原因の多くは契約する経営者ではなく生命保険を売る側に問題があると思います。

6−1.生命保険の失敗事例

ある経営者が節税目的で加入したという保険が全額資産計上するものだったことがあります。つまり、1円も節税になっていない生命保険に加入していたのです。生命保険=節税対策と短絡的に考えるだけで、事前に税務上の処理を確認していないからこういうことが起きます。生命保険料を損金処理するか、資産計上するかについては、実務上は保険会社が作成する保険設計書等の資料に記載されています。したがって契約する前に必ず確認することが出来ます。この経営者は、生命保険は必ず節税になるという前提で、営業マンには目減りしない保険を頼んだと言っていました。

福利厚生目的で、社員・役員を被保険者として保険契約を締結することがありますが、その際、合理的な一定の基準に基づき被保険者を選出する「普遍的加入」でない場合、保険料が被保険者に対する給与として課税されてしまいます。

たとえば、部長全員を被保険者とした生命保険に加入しようとした際に、部長の中に社長に反抗的なものがいたため、その部長だけ生命保険に加入させないということがあったとします。この場合、会社が負担する保険料は、所得税法上は、その他の部長に対する給与ということになります。したがって、その他の部長は、その分の所得税を負担しなければなりません。当然、この所得税は生命保険の保険料で負担することは出来ないので、その他の部長の手取額から減らすことになります。これでは、福利厚生のレベルを上げて部長のモチベーションを上げようとしたら、手取りが減ってモチベーションが下がったということになりかねません。(したがって、通常は、この源泉所得税の分も会社が負担して解決することが多いです。) この経営者は、社長はこれ以上保険に入れないと説明されて、社員を被保険者にするように勧められたけれども、普遍的加入という税法のルールについては説明を受けていないと言っていました。

このように生命保険を利用した節税は、法人税だけではなく、所得税の知識も必要になります。だからといって税理士から保険に入るべきかというとそういうこともないのは、第2項のところで説明したとおりです。

6−2.生命保険営業に対する心構え

生命保険の営業マンからすると、せっかく会社の保障のためにベストな保険を提案したにも係わらず、顧問税理士に「もっと良く検討した方が良い」と言われて契約出来なかったという話を良く聞きます。生命保険を利用した節税は、全保険期間を通算するとそれほど節税にならない、いわゆる「課税の繰延」に該当します。したがって、顧問税理士から、「もう少し、良く考えてから契約するように」といわれることもあるようです。

しかし、現実の経営は、常に黒字が約束されているわけではありません。顧問税理士の中には、毎月顧問料が貰えるので一度黒字になったらずっと黒字だと思っている人がいるのかもしれません。こうした特殊な環境にいる人の意見に振り回されるのではなく、この記事を参考にして、生命保険契約をするかどうかは、是非ご自身で決めて頂きたいと思います。

生命保険の契約を考える場合に、一番大事なのは保障です。税理士に言われて「良く考えている間に」不測の事態が起こる可能性があります。その時に「あの時保険に入っていれば・・・」と悔やんでも遅いのです。もし、保障のおまけに節税がついてくると思えるような生命保険の提案を受けたのなら、誰がなんと言おうと決断しましょう。

7.おわりに

「津波の後に残ったのは、借金と預金と保険だけだった」という冒頭でご紹介した手記の意味を振り返りながら、この記事を終わりにしたいと思います。

借金は津波でも消せません。これを返済しなければ再建もままなりません。

その返済のために預金で残すということは法人税等を納税した残りを蓄えるということです。つまり貯めるには相当な年月と納税が必要になります。

保険で残せば、保険料のいくらかは節税になります。しかも、解約すれば解約返戻金も受け取れます。また、これは決して喜ばしいことではありませんが保険金を受けとることも出来ます。

そもそも保険はこうした不測の事態に備えるために加入するものなのです。

この手記を読んで、私は保険と真面目に向き合わないといけないと心から思うようになりました。

この記事が、あなたが正しい判断が出来る助けになれば幸いです。

長文にお付き合い頂き、ありがとうございました。

 

 


節税セミナーを開催します

今あなたはこんなお悩みをお持ちではないでしょうか?

・節税策を練ってくれない…
・何の経営アドバイスもしてくれない…
・顧問料だけ払っている気がする…

そんな税理士に不満をお持ちの社長様に税理士が教えてくれない7つの節税テクニックを伝授いたします。セミナーの詳細や日程については下記よりご参照ください。

セミナーの紹介はこちら

無料Ebook:法人税の全節税手法 50 とその手順

無料Ebook:法人税の全節税手法 50 とその手順

この無料Ebookでは、節税のプロフェッショナルの会計士である私が、法人税を節税するため施策をわかりやすく解説しています。

・節税をしたいが何をすれば良いのかわからない
・必要な事業に投資をするためにも節税が必須だと感じている
・今すぐできる節税対策を知りたい

今、あなたが上記のようなお悩みやお考えをお持ちであれば、今すぐダウンロードをすることをオススメします。

 

Ebookダウンロードはこちら
The following two tabs change content below.
山口 真導

山口 真導

代表取締役株式会社起業ナビ
中堅・中小ベンチャー企業から上場企業まで幅広い顧客に対して主に経理アウトソーシング事業を提供している。同事業を通じて経営者目線で財務・会計・税務の問題解決ができるCFOの育成・輩出を目指している

皆様のご感想をお寄せください

*