繰越欠損金を利用した税金を支払う節税策

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赤字決算をした場合、その年度の法人税は発生しません。また、その赤字を翌年度以降に繰り越すことができます(「繰越欠損金」と言います)。もちろん、永遠に繰り越すことができるのではなく、一定の年数までしか繰り越すことができません。今回は、そんな繰越欠損金を使って行う、「税金を支払う節税策」についてご紹介していきます。

内容を一言で言いますと、「欠損金の期限切れに注意!」です。

 

0.そもそも繰越欠損金とは

(1)内容

繰越欠損金は、前年以前に発生した赤字のことです。そして、当期が黒字だった場合、前年以前に発生した繰越欠損金を当期の黒字とぶつけることができます。つまり、繰越欠損金は当期以降の節税に必要なネタということになります。

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なぜこのような仕組が設けられているかと言いますと、法人税は「利益×●%」で税額を算定します。しかし、赤字の場合は税額「ゼロ」となり、返してもらえることはありません

そうしますと、「黒字の時に税金取るなら赤字の時は税金返して!」という当然の意見が出てきますので、それであれば「黒字の時に過去の赤字を引いて下さい」ということで、欠損金の繰越控除があります。

そもそも、事業年度を1年にしているのは国の勝手な都合ですので、その代わり単年で発生した赤字を将来の黒字から控除しても良いですよというのが趣旨なんですね。

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(2)注意点

欠損金の繰越控除が利用できるのは、青色申告法人だけです。白色申告の場合、赤字を繰り越すことができません(白色申告でも一定の災害損失金は繰り越すことができます)。

ちなみに、欠損金の繰越控除をしようとする事業年度が青色かどうかではなく、欠損金の生じた事業年度が青色かどうかになります。青色の事業年度で欠損金が発生し、翌年、白色になっていたとしても欠損金の繰越控除はできるということです。

なお、青色申告の適用を受けようとする場合には、その適用を受けようとする事業年度開始日の前日まで(3月決算法人でH27年4月以降から適用を受けようとする場合は、H27年3月31日まで)に青色申告承認申請書を提出しなければなりません。

念の為、青色申告の申請を出しているかチェックしておいて下さいね。

(3)合併等の場合は特に注意

合併等により欠損金を有している法人を引き継いだ場合、その引き継いだ法人が有していた繰越欠損金を引き継げないことがあります。要件が色々とありますので本稿では割愛しますが、該当しそうな場合は税務署や税理士にお問合せ下さい。

1.繰越欠損金の発生年度別期限&限度額

近年、欠損金の繰越控除については、ちょくちょく改正がされてきました。ゴチャゴチャになってしまっている方もいらっしゃるかも知れませんので、ここでまとめておきましょう。

ポイントは以下の2点です。

  • 欠損金の期限
  • 欠損金を使用できる割合

 

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中小法人等(※)については、欠損金の期限がただ伸びているだけですので、有利な変更があったと言えます。ただし、中小法人等以外の法人については、使用できる割合がどんどん減ってきていますので、不利な変更と言えます。

※ここで言う中小法人とは、以下の要件を満たす法人を言います。
 ・資本金1億円以下(資本金なしも含む)
 ・資本金5億円以上の法人等に100%株式を保有されていない

なお、たまに「65%までしか使えないのであれば、永遠に残ってしまうのでは?」と聞かれる方がいますので、簡単な例で確認してみましょう。

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ということで、「所得×割合」と繰越欠損金額とのいずれか少ない方が損金に算入されます。「所得×割合」が繰越欠損金額を超えていれば、繰越欠損金額を全額使えるということになります。

2.繰越欠損金を期限切れにしないためには

(1)欠損金を使った節税の概要

繰越欠損金は期限が長いとはいえ、使い切れない可能性もあります。繰越欠損金を使い切れなかった場合、その欠損金は「切り捨て」となってしまいます。

そうならないためにも、期限が切れそうな繰越欠損金がある場合には、無理矢理にでも利益を計上した方が節税になります

現状はH20年度以降に発生した繰越欠損金ですので、最短でもH30年度までは繰り越すことができます。しかし、繰越欠損金額が多額の場合は、取りきれないリスクを加味して利益を先出ししておくことも検討しておいた方が良いでしょう。

(2)【事例1】欠損金を使い切る(中小法人)

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上記例の場合、繰越欠損金はあと3年で期限を迎えます。一方、所得は3年で3,000の見込みですので、900を取りきれない可能性があります

そこで、定率法で処理している機械装置5,000を定額法で処理することによって、当期以降の利益を増やしていきます

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ということで、本来であれば取りきれなかった欠損金900を全て取りきることができました。もちろん、多く所得を出した分についてはH31年以降で回収できます(定額法と定率法の減価償却費として)ので、問題ありません。

この例のように減価償却を使って利益を調整する場合は、取得年度に定額法か定率法の選択をしなければなりません。期限切れは3年後だから・・・と悠長に構えていますと、対策ができなくなる可能性がありますので、今のうちからシミュレートをしておきましょう。

(3)【事例2】欠損金を使い切る(中小法人以外)

次は中小法人以外の法人のケースを確認していきましょう。条件は上記(1)と同じとします。

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このケースでは残念ながら繰越欠損金を使い切ることができませんでしたが、定額法で処理したことによって598多く繰越欠損金を使うことができました。あとは、含み益がある資産の売却や保険の解約等で利益を出してあげれば、欠損金は使い切れそうですね。

3.繰越欠損金を使った節税まとめ

繰越欠損金は将来の税金を安くするための資産です。前払費用みたいなものですね。ただし、期限を過ぎてしまいますと資産としての価値を失ってしまいます

期限が切れそうな欠損金がありましたら、早めに対応していきたいですね。含み益のある有価証券を売却したり保険の満期をぶつけるなど、色々なやり方があるかと思います。

特に、中小法人以外の法人については使用制限がありますので、税金を支払ってでも欠損金を使っていく必要があります。欠損金は、納税することが節税につながりますので、目先の所得金額だけ減らすことを考えるのではなく、全体の税額を減らせるようにしていきましょう。


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