固定資産の見直しをすることにより大幅な節税が可能になります

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固定資産を購入しても、購入した年度で全額費用にできる訳ではありません。
減価償却という方法を通じて、何年間かかけて費用にしていきます。

経営者の方はここまでの知識はあるのですが、ここからが頂けません。
中古のベンツを購入すれば節税できるという話を聞いたことがあるかと思いますが、購入しただけでは節税できないんですね。
今回の記事で、その辺の誤解を解き、かつ、正しい知識を身に付けましょう。

 (出所 1-4-1 固定資産の見直し

1.固定資産費用化の仕組み

(1)そもそも固定資産とは

固定資産とは1年以上使用する取得価額10万円以上で形があるもの、又は、特許権などの権利を指します。逆に言いますと、1年未満しか使わないものや10万円未満のものは固定資産となりませんので、支出年度の費用として処理することができます。

使用期間の短いものや、あまり金額の高くないものを資産計上するのは煩雑ですので、このような基準が設けられています。10万円未満のものを購入した場合は何も考えずに費用にすれば良いだけですが、10万円以上のものを購入した場合は、その年に全額を費用化することはできないということを認識しておきましょう。

なお、金額の判定は税込なのか税抜なのかということを聞かれますが、自社が採用している消費税の会計処理を適用することになります。
自社が税抜経理でしたら税抜、税込経理でしたら税込の金額で判定を行います。

(2)固定資産を費用化する減価償却という方法について

減価償却という言葉はご存知かと思います。イメージとしては、時の経過に伴って固定資産の価値が減少(「減価」と言います)していくので、その分を費用にしましょうというものです。

減価償却を構成する要素は以下の2つになります。

  •  取得価額
  •  耐用年数

①取得価額に含まれるもの

取得価額とは、資産の取得に要した金額になります。この際、運搬料などの付随費用があればその金額も取得価額を構成します。

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②耐用年数の決定

 もちろん、減価の仕方は資産によって違います。車であれば10年使えれば御の字でしょうけど、マンションであれば50年は使えそうですよね。そのため、資産をある程度区分して、その区分した資産ごとに使用可能年数(「耐用年数」と言います)を定めます

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(出所:国税庁HP

 

さらに、区分した資産の中身を精査して耐用年数を決定します。

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③選べる2種類の減価償却方法

 減価償却方法には、定額法と定率法の2種類があります。定額法と定率法の違いは次の通りです。

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(3)固定資産の特例

通常、取得価額10万円以上ですと資産として減価償却をする必要がありますが、金額ベースで以下の特例があります。

  •  一括償却資産
  •  少額減価償却資産

①一括償却資産

取得価額10万円以上20万円未満の固定資産については、一括償却資産(法令133条2)に該当します。一括償却資産は、取得年度から3年間で費用化することができます。また、期末に購入したとしても1/3をその期に費用化できますが、3年以内に除却等した場合であっても、費用化できる金額は取得価額の1/3となります(法基通7-1-13)。

一括償却資産にしたら、何が何でも3期で費用化しますということですね。

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②取得価額30万円未満の固定資産

青色申告書を提出している中小企業者等(※)が取得した30万円未満の固定資産については、全額費用として処理することができます(措法67条5)。なお、一括償却資産に該当するものであっても、少額減価償却資産とすることもできます。

ただし、年間総額300万円を限度とします。

※中小企業者等

以下の要件を満たす法人を言います。

・資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人

 ただし、同一の大規模法人に発行済株式等の2分の1以上を所有されている法人及び2以上の大規模法人に発行済株式等の3分の2以上を所有されている法人は除きます。

・資本又は出資を有しない法人のうち、常時使用する従業員の数が1,000人以下の法人

この規定の適用を受ける場合には、法人税の確定申告書に別表十六(七)を添付する必要があります。

③注意点

上記②の少額減価償却資産特例は非常にありがたい制度ですが、1つ問題点があります。それは、償却資産税の課税客体に含まれてしまうのです(地方税法341条4、地方税法施行令49条)。

償却資産税の免税点は150万円です。そして、この150万円の判定には少額減価償却資産特例の適用を受けた資産を含みます。したがって、例えば100万円の償却資産を所有していて、さらに50万円の少額減価償却資産がある場合には、償却資産税が課されます。

もちろん、元々150万円以上の償却資産を持っている場合には、それプラス少額減価償却資産になりますので、その分の償却資産税が増えることになります。なお、一括償却資産については償却資産税の対象にはなりません。つまり、償却資産を150万円以上有している場合には、20万円未満の資産であれば少額減価償却資産特例を利用するよりも一括償却資産とした方が有利になります。

 結構知らない方がいらっしゃいますので、ご注意下さい。

 2.固定資産でとことん節税するために

(1)概要

高額資産を購入しても、耐用年数が長ければ毎年の減価償却費は少なくなってしまいます。そこで、固定資産の取得価額・耐用年数を見直すことによって、当期に計上できる費用の額を増やしていきましょう。

具体的には、次のような手順があります。

  • 取得価額を低くする(下げた分は費用処理)
  • 耐用年数を短くする
  • 定率法を使う(建物以外)
  • 不要な資産は処分する

 

 1つずつ確認していきましょう。

(2)取得価額を低くする

固定資産の取得価額に含まれた金額は、減価償却を通じて費用化されますが、取得価額に含まれなかった金額は、当期の費用になります。

具体的には、不動産取得税や登録免許税などの租税公課や、建物の建設等のために行った調査・測量等は、取得価額に含めず当期の費用とすることができます(法令54条、法基通7-3-3の2)。

 これらの金額は取得時の費用とすることができますので、誤って資産計上してしまわないように注意して下さい。

 参照)付随費用の即時損金化 

(3)耐用年数を短くする

定率法であれ定額法であれ、耐用年数が短ければ短いほど当期の減価償却費を増やすことができます。もちろん、耐用年数は耐用年数省令によって決められますので、こちらで勝手に決めることはできません。

しかし、次のいずれかの方法を使えば耐用年数を短くすることができるのです。

  • 資産の分割計上
  • 中古資産の活用

1つずつ確認していきましょう。 

①資産の分割計上

1つの資産の中に耐用年数が異なるものが入っている場合は、それを分割して計上することで耐用年数を短くすることができます。

例えばマンションを購入した場合、通常であれば土地と建物に区分して、建物部分の減価償却を行います(土地は1円たりとも費用化できません)。

しかし、建物の耐用年数は50年近くあり非常に償却期間が長いのです。そこで、建物の一部について、建物付属設備とすることで、建物付属設備分の耐用年数を20年弱とすることができます

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なお、建物付属設備割合は、建築主が有している工事請負契約書などから割合を合理的に算します。一般に7:3基準(建物7、建物付属設備3)などと呼ばれるものがありますが、これをそのまま適用してしまうのは合理的とは言えませんので、ご注意下さい。

また、分割できるにも関わらず分割しないで一括計上した場合、耐用年数は長い方に合わせることになります。 

※平成28年4月1日以降に取得した建物付属設備については定額法しか使用できなくなりました(定率法は不可)

②中古資産の活用

中古の資産を購入した場合、新品の資産よりも耐用年数を短くすることができます。具体的には、次の算式によって耐用年数を算定します(耐令3、耐通1-5-1~4)。

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耐用年数2年の場合、定率法の償却率は100%です(月割)。したがって、期首に購入していれば全額を減価償却費として費用化することができるのです。節税には4年落ちのベンツを買えという考え方はここからきているんですね。

利益が出そうな期の場合、期首に中古資産を購入して減価償却費を増やすという対策は非常に有効と言えます。 

(4)定額法ではなく定率法を使う

定率法は定額法の2倍の償却率です。したがって、定率法を採用すると初年度の減価償却費は2倍になります。最初のうちに費用を出しておけますので、資産を購入したら基本的には定率法で減価償却をするようにしましょう(建物を除きます)。

なお、法人税法上の法定償却方法は定率法です。何の届出もしなければ、定率法で計算することになります。逆に、定額法で計算したい場合には、定額法で計算しようとする年度の前年度までに、償却方法の変更届出を提出する必要がありますので、ご注意下さい。

また、減価償却方法は資産ごとに選定します。したがって、例え車両を購入して「定率法ではなく定額法にしたい!」と届出をしますと、所有している車両全てが翌年から定額法になってしまいます。こちらも、併せてご注意下さい。

(5)不要な資産は廃棄・売却を検討する

使用していない固定資産があれば、廃棄や売却を検討しましょう。廃棄・売却の場合の課税関係は次のようになります。

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売却の場合、第三者に売り渡していますので証明できますが、廃棄の場合は証明が難しい場合があります。したがって、資産を廃棄する場合には、業者からマニフェストを受け取っておいた方が無難でしょう。マニフェストがあれば廃棄日を証明できますので、税務調査の際に変な勘繰りを入れられることもありません。

3.賃借期間での償却

事務所等を定期借家契約により賃貸している場合、内部造作を賃借期間で償却することができます(内部造作の買取請求ができない場合に限ります)。

通常、内部造作は建物付属設備に該当することから償却期間が10~20年程度になります。賃借期間がこれより短い場合には、その分多くの減価償却費を計上することができます。

事務所等の契約が定期借家契約になっていないか確認してみましょう。 

4.事務所・社宅の敷金・保証金の返還不能部分の償却

敷金や保証金のうち、返還不能部分については繰延資産として償却を行うことができます(定額法のみ)。この場合の償却期間は契約期間になります。

なお、20万円未満の場合には全額を当期の費用にすることができます。固定資産の10万円基準とは異なりますので、ご注意下さい。

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5.まとめ

固定資産の取得年度において、できる限り多くの費用を計上するためには以下のステップを踏んでいく必要があります。

  • 取得価額を低くする
  • 耐用年数を短くする
  • 定率法を使う
  • 不要な資産は処分する

 

少なくても、定額法を定率法に変えるだけで初年度では2倍のインパクトがあります。もし、建物・構築物以外の資産で定額法を採用している資産があれば、定率法への変更も考慮したいですね。

また、なんでもかんでも資産に計上するのではなく、固定資産を1つずつ精査していくようにしましょう。そうすることで、資産を取得した初年度から多くの費用を計上することができます。

 

6.さいごに

減価償却費は、資産の取得価額を費用化する手続きです。したがって、定額法であれ定率法であれ、最終的に費用化できる金額は同じです。つまり、減価償却による節税は課税の繰延に該当します。

 そうすると、

 

「将来的に同じであれば、やらなくても良いのでは?」

 

と思われるかも知れません。

しかし、将来利益が出る保証は何もありませんので、目先の利益を圧縮する為に費用を増やし、税金費用をセーブすることは資金繰りの上からも大切だと思います。

 経理の方は「課税の繰延だしやらなくて良いか」と考えて楽な方を選択する傾向にあるのではないかなと思います。かく言う私も、経理時代に同じ理由で数千万円を費用にしなかった記憶があります(ひどい話ですね)。

 経営者にとっては、「会社のお金=自分のお金」という感覚があると思います。であれば、税金は1円でも少なくしたいと考えるのが人情でしょう。

 減価償却の手続きは煩雑ですが、当期の節税インパクトを考えると看過できるものではありません。ぜひ、最も減価償却費が多くなる方法を採用してもらいたいなと思います。

 

【Q&A】

補足として、QAを載せておきます。

Q1.中古資産を購入すれば、何もしなくても耐用年数が短縮されるのか

上記例にありましたように自身で計算を行い、耐用年数を算定する必要があります。そして、固定資産台帳にその耐用年数を記載しなければなりません。こういった手続きを経なければ新品と同じ扱いになってしまいますので、注意して下さい。

Q2.定額法・定率法以外の減価償却方法はないか

生産高比例法・リース期間定額法があります。生産高比例法については、総利用可能量を客観的に測定できる鉱業権・鉱業用設備・航空機などに限られています。また、リース期間定額法は、所有権移転外リースが適用される資産に限ります。

なお、管理会計で利用されている級数法については、税務上認められていません。

Q3.他に特殊な減価償却方法はないか

減価償却とは異なりますが、類似した方法で取替法というものがあります。

取替法は、鉄道のレール・枕木のように同種の物品が多数集まって全体を構成し、老朽した部品の取替を繰り返すことによって全体が維持されるような固定資産に対して適用されます。

取替法の適用を受けようとする場合には、「取替法採用承認申請書」を納税地の所轄税務署長に提出し、その承認を受けなければなりません。

Q4.特別償却とは何か

特別償却は、租税特別措置法等の規定によって通常の減価償却の他に一定額の減価償却を認めるものです。

有名なところですと、中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却制度(措法42条6)があります。この規定の適用を受ける場合、取得価額×30%を特別償却費として費用化することができます。

Q5.特別償却と税額控除はどちらが有利か

税額控除の方が有利です。

特別償却は通常の減価償却と同様に課税の繰延に該当しますので、将来の減価償却費を先取りしているに過ぎません。しかし、税額控除は課税の繰延に該当せず、単純に控除した税額分を得した計算になります。

ただし、特別償却は一度に多額の償却費を計上することができますので、利益が多く出ている年度ではインパクトが大きくなります。

税額控除が選択できるのであれば、税額控除にするのが一般的ですが、どちらを選択するかはケースバイケースでしょう。

Q6.特別償却をすると損益計算書に影響しないか

影響します。

通常は、特別償却費として特別損失に計上します。損益計算書の見た目を良くしたいのであれば、特別償却準備金を計上することで損益計算書へのインパクトを無くすることができます。

ただし、特別償却準備金として経理した場合には、当該準備金を最長7年間で特別償却費を収益計上しければなりません。耐用年数が長い資産については要注意です。

Q7.定期借家契約だと更新できないのか

定期借家契約は、更新の定めがない契約です。しかし、更新の定めがないからと言って更新できない訳ではありません。ひとまず、不動産屋さんにご相談頂くのがよろしいかと思います。

Q8.豪華社宅の礼金でも償却可能か

可能です。

豪華社宅の場合、法人の受け取る賃料は時価相当額となりますが、礼金や手数料などの費用については、法人の費用として計上することができます。

 

 


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冨田 健太郎

冨田 健太郎

税理士。上場企業の経理部に約10年間在籍し、領収書の糊付けから連結決算・税務申告まで幅広い業務を経験。現在は㈱アカウンタックスの一員として、中小法人の会計・税務、大法人の決算などを担当。同時に、「読み易く・分かり易く・実践し易く」をモットーに執筆活動を行う。不明な点等ありましたら、お気軽にご意見下さい。

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