最良の決算日にするために検討すべき4要素について

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法人税設立する際に作成する定款の記載事項の中に、決算日という項目がある。

決算日は設立する場合に必ず決めなければいけないことだが、設立した後に変更することも出来る。したがって、会社設立の場面だけの問題ではない。

しかし、この決算日をいつにするのが良いか?と聞かれても、チンプンカンプンなのが普通だ。知識がなければ「いつだって良い」となってしまうだろう。現に、既に会社設立済みの「あなた」は、それほど深く考えて、いまの決算日を決めていないなんてこともあるのではないだろうか。

しかし、ビジネスにおいて「いつでも良い」なんてことは、ほとんど無い。少なくとも、わたしはそう考えている。

わたしがアドバイスする際は、4つの要素を提示し、その中から導き出される答えを比較検討したうえで決算日を決めてもらうようにしている。明確な理由に裏付けられた検討材料があれば、決めるのは簡単だ。

あなたが、最良の決算日を納得して決められるように、これから説明していくことにしよう。

1 決算日を決定するために検討すべき4要素

決算日を決めるために検討すべき要素は次のとおりである。

①キャッシュ・フローの効率化
②消費税の免税期間の最大化
③税務調査が少ない決算期
④会計事務所の繁忙期

これらの要素を勘案して決算日を決めるということは、会社ごとに決算日にすべき日は違うということだ。多くの起業家が、3月、12月、、、等と、「普通」とか「みんなが」とか「平均」というような発想で決算日も決めてしまっているので、決算日が特定の月に集中している。

この続きを読み進めながら、それぞれの検討事項毎に、自社の決算日はいつが良いというものを決めて行って欲しい。

このページの最後まで読んで頂ければ最適な決算日が見つかるはずだ。

1−1 キャッシュ・フローの効率化

わたしが、決算日についてアドバイスする際に、一番気にしていることはキャッシュ・フローだ。なぜなら、キャッシュがなくなれば、あなたの事業は終了してしまうからだ。(キャッシュ・フローが気になるという方は、「全ての起業家に捧ぐ!キャッシュ・フローを改善する51の具体的方法」を読んで欲しい。)

1−1−1 キャッシュ・フローを考えると決算日は繁忙期の直前が良い

キャッシュ・フローを効率化するという観点から、決算日を決める場合、その答えは、繁忙期の直前だ。

繁忙期に入る直前にするということを図に示すと次のとおりだ。この事例は、年度末に向けて利益が増え3月が一番利益の多い会社を例にしている。
※下記の図は毎月の利益額は同じで会計期間のみが異なる図です

この会社が3月決算にすると次のような状況になる。

March settle

我が国ではダントツで3月決算の会社が多い。そして、そうした会社の多くが3月に最も利益を出している。したがって、この事例となっている会社は、我が国において、もっともありがちな会社と思ってみて欲しい。

年度末の3月に一番利益が出るということは次のような状況になるということだ。

1.3月に出た利益を使えるのは4月以降(つまり翌期)

3月に出た利益がキャッシュとして会社に入ってくるのは、BtoCの現金商売の場合は3月。掛けで商売をしている場合は4月以降だ。となると、このキャッシュを使って何か経費支出を行うなり、投資を行えるのは、年度を跨いだ4月以降ということになる。

2.3月決算の会社が納税するのは5月末

3月末の時点で決算を締めてしまうと、3月に稼いだ利益に丸々法人税等が課税されることになってしまう。つまり、3月に稼いだキャッシュは、法人税として5月末に税務署に“回収”されてしまうのだ。

これでは、3月の決算セールは、お国のタメにやっているようなものになってしまう。

3月決算の会社は、本当に愛国心のある会社だ。そのつもりで3月決算にしているのであれば。。。。だが。

しかし、これでは一向に会社は大きくならない。

 1−1−2 繁忙期の直前に変更した場合の効果

 次に、同じ会社を12月決算にすると、次のような状況になる。

Dec settle

 

先ほどの事例を、12月決算に変更すると、繁忙期(1月〜3月)から決算期末の12月までに9ヶ月の時間的猶予が発生することになる。したがって、この9ヶ月間の間に、繁忙期に稼いだ利益を来期に向けた投資に振り向けることができます。ここでいう投資とは、設備投資だけでなく、広告宣伝費は人材教育費などの経費を含む。これらの経費は税務上「損金」として扱われるので、その分、12月決算の終了後2月末に支払う税金は低くなるのだ。

つまり、3月決算の場合は、繁忙期(1月〜3月)に稼いだキャッシュの大部分を税金を払うためだけに使うことになるが、12月決算の会社は、そのキャッシュを投資に回すことが出来るのだ。

こうした差が、毎年積み重なっていくかと思うと、決算期末をいつにするかが非常に重要なことをご理解頂けるだろう。

この方法の欠点は、繁忙期に決算作業をしなければならなくなるということだ。

だからこそ、経理は、帳簿を付けることだけではなく、支払や入金の確認なども含めて、全てを外注しておくことをオススメしたい。社内のリソースの全てを繁忙期に稼ぐことに活用した方が、獲得できる利益が増えるからだ。

外注しておけば、繁忙期に数回打ち合わせをするだけで、あなたの希望する決算結果が得られるはずだ。 

1−2 消費税の免税期間の最大化

消費税の免税期間を最大化するには、会社設立日から11ヶ月後の月末日を決算日にすれば良い、というのがこれまでの定番だった。

しかし、平成23年度の消費税法改正により、2期目から課税事業者になる可能性が出てきたので注意をして欲しい。

消費税の免税期間の最大化についての詳細は、ビズ部の記事、「会社設立後、できるだけ消費税の免税期間を長くするための3つのポイント」で確認して欲しい。 

ここでは結論だけ書くと、免税期間を無条件で延ばしたいなら、会社設立日から6ヶ月後の月末日にすると良い。そうすると会社設立から18ヶ月間は免税事業者でいられる。例えば、5月16日設立の会社であれば、6ヶ月後は11月16日だから、11月30日決算にするということだ。

だからこの検討要素から導き出される決算日候補は、「会社設立日から6ヶ月後の月末日」ということになる。

1−3 税務調査が少ない決算期

元国税調査官の方の有料メールマガジンで紹介されていた「税務調査が少ない決算月」というものがある。

それは1月決算だ。

税務署の新年度は7月から始まる。したがって、上期が7月から12月、下期が1月から6月だ。

下期には税務署にとっての一大イベントがある。そう毎年3月15日が期限の所得税の確定申告だ。2月16日から確定申告の受付が正式に開始し、この前後から1ヶ月間は、法人担当の調査官も確定申告の相談対応などに狩り出されると聞く。したがって、税務調査は2月から3月中旬までは実質的にストップすることになる。

1月決算の法人の調査は下期に行われることになっているようだ。

しかし、3月下旬から始める調査の最中の3月末に直近年度の申告書が提出されるタイミングが来てしまう。税務署側は、決算作業の佳境に税務調査の依頼をかけなければならないし、調査と前後して新しい申告書が提出されることで、それも調査の対象にせざるを得なくなる。簡単にいえば、調査する側も大変なのだ。

こうした事情から1月決算の税務調査は少ないそうだ。

わたしは何も後ろめたいことがないなら、税務調査が来ても問題ないので、税務調査が少ない時期に決算月を設定することにそれほどの意味はないと思っているが、この提案をすると、起業家の皆様が大変喜ぶので、ご紹介させて頂いた。

是非、参考にして頂きたい。

1−4 会計事務所の繁忙期

会計事務所の繁忙期は、毎年、1月から6月頃までだ。

この期間の前半には、前項でも取り上げた確定申告もあるし、後半には、12月決算と3月決算の法人の決算・申告作業があるからだ。

こうした会計事務所の繁忙期に決算作業を行うということは、現実問題として、あなたの会社のために割ける時間に制限があるということになる。

これについては、まずは、ざっくばらんに顧問税理士に繁忙期の状況について聞いてみて頂きたい。

月次決算を精緻に実施していれば、年次決算だからといって大量の処理が残るということはない。したがって、繁忙期と言えども、きちっと対応できる会計事務所もある。そうした事務所の場合には、12月以降3月までの間に決算日を設定しても問題ないということだ。

それでも心配だという方は、6月末から10月末までの間に決算日を設定されることをオススメする。納税期限は8月末から12月末。申告期限は延長申請を出していれば9月末から1月末になる(延長申請を出していない場合は、納税期限と同じになる)。

この時期なら、ほとんどの会計事務所が時間的余裕をもって、あなたの会社の決算・申告作業をしてくれることだろう。

1−5 四つの要素を並べてみて比較検討して決定しよう!

冒頭で掲げた4要素について、これで出そろった。

【4要素】
①キャッシュ・フローの効率化
②消費税の免税期間の最大化
③税務調査が少ない決算期
④会計事務所の繁忙期

全ての要素の決算期末日最適日が同じというケースは少ないだろう。

それぞれ比較検討する際のヒントを一つお伝えすると、①〜④は重要な順番で並べてある。迷った時は、上位の要素を重視して決めておけば大丈夫だ。

中には、極端に税務署をおそれ③を重視する方もいるかもしない。そこはお好きなように。あなたの会社なので、わたしはこれ以上は言いません。

2 決算日の変更の方法について 

既に会社を設立済みの方で、この記事を読んで、決算日を変更しよう!そう思った「あなた」のために、決算日の変更手続をご紹介しよう。

その際、次の2つの手続が必要になる。

臨時株主総会を開催し定款変更の決議を行う
決算日の変更を税務署に届け出る

この手続を行うだけで、あなたの会社は最良の決算日に変更することが出来るのだ。是非、検討のうえ、トライしてみて欲しい。

その際、1点だけご留意頂きたいことがある。

それは決算日変更を「怪しいこと」と思う一部の人達がいるということだ。実は、ビズ部の節税対策の記事(全ての起業家に捧ぐ!法人税の全節税手法50とその手順【保存版】)を公開した際に、決算日を変更することで銀行など外部の第三者から怪しい会社と思われることがあるのでは?というご指摘を受けた。実際、私が決算日の変更をお客様に提案すると8割方の方が、「そんなことしていいのか?」という。

結論をいうと、してはいけないというルールはない。やり方だけが決められている。

しかし、世間には根拠もなく、「怪しい」と思う人が多いのも事実だ。それが、あなたの会社の銀行担当者だとしたら、あなたの会社の評価が不当に低くなる可能性がある。したがって、こうした謂われのない悪評価を受ける可能性もあるということだけは知っておいて欲しい。

実際には、わたしのお客様で何度も決算日を変更しているお客様がいるが、いつも融資は受けられるし、税務署の調査が増えるということもないことは、事実としてお伝えしておきたい。

3 【参考情報】実際の決算日の設定状況について

最適な決算日というものは会社毎に違うことは既に理解頂けたことだろう。しかし、非常に3月末決算の会社が多いのが現実だ。

そこにも理由はあるので、補足としてご紹介したい。

一番ダメなのは、他が3月末決算だから、自分の会社も3月末決算という風に決めることだ。

以下の理由をご覧頂くことで、「やっぱり自社は3月末じゃないな」とご納得頂けると思う。

3−1 決算日の分布状況

国税庁のホームページの資料を見ると、平成18年度実績で申告法人数2,821,562社のうち、3月末決算の会社数は579,083社と、全体の約20%を占めている。

年間12ヶ月あることを考えるとダントツだ。

次に多いのは12月末と思いきや9月末だ。

9月末決算の会社数は、308,136社(約10%強)。次に多いのが12月末決算で277,067社(約10%)だ。

9月末決算が多いのは、将来的に3月末決算に移行しやすいということもあるが、会計事務所の繁忙期問題から、その意向が大きく働いているのかもしれない。

3−2 3月決算が多い理由

3月末決算が一番多い理由を解説しよう。

3−2−1 年度という概念

日本では、”年度”という概念が幅を利かせている。

春夏秋冬。その延長で考えると3月末決算というのは、日本古来からの生活リズムに合致している。ちなみに、海外の会社で一番多いのは12月末決算だ。こちらは暦年で動いている。比較してみると、いかに日本人の生活に年度という概念が染みついているかが解りますね。

しかし、これは感覚的なものであり、絶対的に3月末決算をお勧めする理由にはならない。

3−2−2 財務諸表の改善?

にわとりが先か?卵が先か??みたいな議論だが、日本では、3月末になると全国的に決算大セールが行われる(年末にもクリスマスと歳末セールがあるが)。買い手側も予算消化の関係で、3月末の購買力は他の月より多くなる。この両者の力により3月末に売上が多い会社が多くなる。

その結果、3月末を決算日にすると、他の月末と比べて、在庫も圧縮され、現金や売掛金などの現金等価物の残高が増える会社が多くなる。つまり、財務諸表は他の月末に比べて、見栄え良く改善されている可能性が高いことになるという考え方だ。

しかし、これは「好景気」が条件になる。決算大セールがうまくいなかったら、在庫は膨らみ、現金等価物は少なく・・・・だ。このような理由から、決定的に3月末決算が良いという理由にはならない。

3−2−3 総会屋対策

最近はあまりニュースになるようなこともなくなったが、昔は総会屋という怖い職業の方達が、株主総会を荒らすことが結構あった。

しかし、世の中の人がみんな総会屋なわけはない。総会屋の数には限りがある。そこで、智恵のある人が考えた。みんなで同じ日に株主総会を開けば、総会屋が株主総会に表れることが出来ない!!と。

この考え方に賛同する経営者が続出した結果、みんなで3月末決算ということになり、結果として、株主を選ぶことが出来ない上場会社において続出することになったのだ。実際に、上場する前に他の決算月から3月末決算に変更する会社がかなりあったのだ。

しかし、こうした決算日集中に伴う株主総会の集中は、複数の会社の株式を保有する株主が、出席可能な株主総会が減ることになり、善良な株主にとっては不利益でしかない。そこで、会社法の改正により総会屋の活動を抑制する「根本的な」対応が諮られた。その結果、総会屋の活動は抑えられるようになったのだ。

3月末決算の会社は依然として多いままだが、株主総会はかなり分散した日取りで開催されるようになったのは、そうした長い歴史の結果なのだ。

3−2−4 みんな3月決算だから

ただの気分で決算日を決める。こういう考えの人が多いのも事実だ。そうでもなければ大企業の連結子会社を除き、非上場の会社まで3月末決算にする理由を見つけるのは本当に難しい。

こういうのが一番いけない。

決算日を適切にすることでキャッシュ・フローが改善されることは既に説明したとおりである。

4.まとめ(結論)

結果として最適な決算日が3月末になる可能性もあるだろう。

しかし、それ以外の場合には、ちゃんと4つの要素を比較検討した結果として、決算日を設定するようにして頂きたい。


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山口 真導

山口 真導

代表取締役株式会社起業ナビ
中堅・中小ベンチャー企業から上場企業まで幅広い顧客に対して主に経理アウトソーシング事業を提供している。同事業を通じて経営者目線で財務・会計・税務の問題解決ができるCFOの育成・輩出を目指している

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