会計ソフト業界の寵児と言われている「freee」のアドバイザー説明会に行ってきました。五反田駅から徒歩約5分、少し古ぼけたビルにfreeeはありました。何となく、六本木ヒルズのようなところにあるのかと思っていたのですが、ベンチャー企業ですしオフィスにそこまで投資しないかと妙に納得しました。
ビルの7階に上がるとfreeeのロゴが。入ってみると、何とも言えない自由奔放なオフィスが。会議室を含め、扉はほぼスケルトン。休憩室には、ドリンクバー・卓球台・ダーツなどが置いてありました。そして、社員の方は皆さん私服。楽しそうな職場です。
今回は、freeeアドバイザー説明会を受けて、freeeはオススメできるクラウド会計なのか否かをお話していきます。
メリット・デメリットはありますが、個人的にはとてもオススメだと思います。
freeeは、以下の3点をコンセプトに掲げています。
・簡単・自動化
・バックオフィス最適化
・クラウド完結型社会
freeeとは、実際にはどんな会計ソフトなのか。freeeアドバイザー説明会での内容を元に、クラウド会計初心者の私がレポートさせて頂きます。なお、文中で使用している画像は全てfreeeアドバイザー説明会の資料より抜粋しています(使用することについてfreee社の承認を受けています)。
Contents
freeeの優位性
(1)簿記を感じさせないから誰でも記帳できる
簿記を知らない人でも仕訳が入力できるよう、分かり易い入力画面になっています。ほとんどの項目はプルダウンで候補が出てきますので、何となくそれっぽい項目を選んでいけば仕訳ができてしまうことになります。
会計ソフトの難点として、「簿記がわからないと入力できない」というものがあります。もちろん、簿記がわからなくてもある程度は入力できます。一定の仕訳であれば、慣れれば何とかなるでしょう。
ですが、この「慣れれば」が結構大変です。私も、初めて使う会計ソフトでは慣れるまで戸惑うことが多々あります。経理の仕事に携わらない方であれば、なおさらアレルギーがあることかと思います。ですので、この形式は非常に良いですね。
(2)領収書を画像で読み込み、仕訳を自動生成
領収書などをPDF等で取り込み、スキャンすることで仕訳を自動生成できます。ただし、識字率は50%程度とのことですので、この辺はもう少し改良の余地がありそうです。
講習では、タクシーの領収書を利用したのですが、その時はうまく読み取れました。旅費交通費の仕訳が出てきた時は若干の感動を覚えましたね。
(3)入出金明細から仕訳が自動で生成される
これはかなり画期的だと思います。インターネットバンクやカード会社の口座をfreeeに登録しておくと、更新ボタンを押すだけで「勝手に」仕訳をしてくれます。また、CSV・OFX・API形式のファイルアップロードにも対応しています。
自動仕訳は、まず「予測仕訳」が出てきます。その中でおかしいものがあれば修正するという仕組です。学習機能がありますので、使えば使うほど自動仕訳の精度が高くなるそうです。始めのうちは面倒な部分もあるかも知れませんが、慣れれば相当早く入力が完了しそうですね。
なお、freeeの実測値によると処理時間が最大50分の1になったとのことです。50分かかっていた作業が1分で終わる計算ですので、これはかなり革新的だと思います。
(4)経理作業を行えば記帳が自動化
売上を計上する場合、請求書の発行→売上の計上→入金確認→入金消込という手順を踏みます。売上という事象に対して、4つの作業が発生します。しかし、freeeを利用すると、請求書を発行するだけで記帳が完了し、突合作業を行うことで入金確認・入金消込という作業を完了できます。
仕入や各種費用の場合も同様に、経費申請/承認を行うことで、自動で未払の仕訳がされ、出金と同時に突合作業をして消込が完了します。債権・債務の管理ツールとしても非常に便利です。
(5)他サービス連携
freeeは他のサービスとの連携を重視しています。インターネットバンクやカード会社などの金融機関以外にも次のようなサービスとも連携しています。
・店舗系サービス(POS) → 売上データを自動連携
・EC系サービス → 売上や手数料データを自動連携
・店舗系サービス(決済) → 各種決済データを自動連携
・請求書系サービス → 売上データを自動連携
・電子マネー → 電子マネーの履歴を自動連携
・税務、会計ソフト → freeeの会計データを取り込み可能
以下は、自動連携ができるサービスの例になります。
正にfreeeの真骨頂というところでしょうか。様々なサービスに対応しているので、今あるシステムを変える必要がありません。会計ソフトにも連携しているというのは画期的です。
(6)資金繰りのレポーティング
取引データに、「決済ステータス」「決済予定日」という2つの項目を持つことで、資金繰りの管理が可能となっています。下記のようなレポートが作成されます。
これは、請求書を発行するだけでその後の手続きが自動化されることにより生じるメリットの1つです。見た目にも分かり易いのが良いですね。
(7)必要な業務やデータ管理を全てクラウドで完結
freeeを使用することで、原始証憑やシステムを社内に持たないことができるようになっていきます。
具体的な構想としては、以下の3点があるそうです。
・e-Gov APIを利用した電子手続
・電子帳簿保存法対応
・マイナンバー対応
まだ始まっていませんが、freeeを使用することでマイナンバーの物理的・技術的安全管理措置が大幅に削減(マイナンバーもソフトもクラウド上にあるため、安全管理措置がほぼ不要になるそうです)されるのは大きいと思います。
なお、マイナンバー管理freeeは、freeeの会計/給与ソフトを利用している場合、無料で利用できます。単体の場合は、980円/月(従業員の人数制限なし)です。
(8)サポート体制
freeeのサポートでは「チャットサポート」というものがあります。わからない点を画面右下にあるチャットウインドウに入力すると、サポートチームから返信が来るというものです。
平日10時~18時までのサービス(お昼休憩1時間あり)で、1営業日以内に返信がもらえます(早いと数分で返ってくることもあるそうです)。これに加え、メールサポートがありますが、チャットサポートが機能していれば必要なさそうですね。なお、電話によるサポートはありません。
(9)freeeのシェア
2014年11月に行われたデジタルインファクトの調査によると、freeeはクラウド型会計ソフトのシェア調査で1位を獲得しました。
この調査がどこまで正確なものかはわかりませんが、2位のネットde会計のシェアが12%であるのに対し、freeeは41.3%と3倍以上のシェアとなっており、クラウド型会計ソフトの中では群を抜いているということは読み取れそうです。
ただし、クラウド型会計ソフトは、現時点では会計ソフト全体の5%程度に過ぎませんので、freeeは会計ソフト全体のシェアで見ると、5%×41.3%=2%程度ということになります。
(10)freeeの利用料金
freeeの料金体系は2つです。個人事業主が980円/月、法人が1,980円/月になります。この価格で3ユーザーまで共有することができ、4ユーザー以上利用する場合は1ユーザーごとに300円/月が追加されます。
freeeの率直な感想
(1)freeeのサービスについて
他のクラウド型会計ソフトを利用したことがないので、freeeがというよりはクラウド型会計ソフトがということになるかも知れませんが、経理初心者の方には画期的なサービスだと思います。
また、インターネットバンクやカード会社のデータをそのまま取り込めるのは、会計事務所にとってもかなりのインセンティブです。いちいちエクセルに入力しなくても直接起票できることで、時間がかなり削減されます。相当便利です。
(2)料金について
freeeは、個人事業者で980円/月(年払だと9,800円)、法人で1,980円/月(年払だと19,800円)と、クラウド型でない会計システムと比べると高価です。
一般的な会計システム(個人事業者:1万円程度、法人:3万円程度)ですと、一度購入した商品をそのまま使い続けることができます。アップデートには料金が発生しますが、しなくても問題ない状況であれば料金は掛かりません(もちろん、消費税率の改正など致命的な問題があった場合はアップデートが必要になります)。
人によって考えが違うかも知れませんが、無視して良いアップデートを見極めることができるのであれば、既存の会計システムでも良いと思います。そうでなければ、アップデート・保守料も込のクラウド型の方が割安感はあるのかなと思います。
次に、クラウド型会計システム同士の比較をしてみましょう。
どこも似たようなものですね。個人であれば1,000円/月、法人であれば2,000円/月といったところでしょうか。白色申告であれば弥生会計が一番安いですが、そもそも白色申告の方はほとんどいないのかなと思います。
価格にあまり差がないのであれば、ユーザー数が一番多いfreeeが良さそうな気がしますね。
(3)freeeはオススメなのか
小規模なビジネスをしている会計初心者の方でしたら、freeeはオススメです。煩わしかった、経理・会計業務の効率が飛躍的に向上すると思います。特に、手書きの伝票を書かれているような方については、ぜひ、この機会に移行を検討しましょう。
また、記帳代行を税理士に丸投げしているような場合、freeeを使うことでそのコストを圧縮できるかも知れません。こちらについても検討の余地はあるでしょう。
さいごに
簿記の仕組を理解していなくても仕訳ができるというのは、非常に便利です。ただし、システムに依存し過ぎてしまうと間違いに気が付かないというリスクがありますので、簿記力を付けることは不可欠でしょう。
自動仕訳に頼りすぎることは危険です。できれば毎月、少なくとも数か月に1回程度は税理士のチェックを受けることをオススメします。
最後に、freeeのメリット・デメリットをまとめておきます。復習の際にご活用下さい。
クラウド型会計システムのシェアはまだまだ低いですが、今後は主流になっていくのではないかと思いました。未来を感じさせてくれるツールですね。
その他のクラウド型会計システムも、機会があれば触れていこうと思います。その際はレポートしますので、しばしお待ち下さい。
【Q&A】
本稿は読み易さを考えて例外的な題材はカットしていますが、以下にカットした内容のうち主なものをQ&A方式で記載しておきます。本編だけでは解決できなかった場合や最終チェックにご活用下さい。
Q1. 簿記初心者だと大変?
全くの初心者ですと、自動仕訳のチェックはできません。ですが、経費精算などでしたら全くの初心者であってもプルダウンを追っていくだけで仕訳が生成できます。ただし、Wチェック体制は構築しておいた方が良いでしょう。
Q2. オンラインだと動作が重そう・・・
通信環境によると思いますが、freee社のWi-Fiで使用したところ、動作の重さは感じませんでした。もちろん、本丸のWi-Fiですのでかなり高速なものを使用していると思いますが、ADSL回線以上の速度があれば問題ないと思われます。
Q3. 銀行データの読み込み時間は?
テストデータで更新したところ、ものの数秒でした。データが多ければもっと時間は掛かるかと思いますが、思っているよりずっと速いレベルと考えられます。便利な世の中になったものですね。
bizubu
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