税務調査で調査官を必要以上に恐れないために知っておくべき基礎知識

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今回は、税務調査について、知っておいて頂きたい基礎知識や、

税務調査の対応についてお話していきます。

「社長は税務署がくると震え上がる」 

などと言われたりしているようですが、本当でしょうか。

社長であれば誰でも気になってしまう税務調査について、確認していきましょう。

ちなみに、一言。

 

脱税は犯罪です!

 

0.そもそも税務調査とは?

(1)税務調査の概要

 まず、税務調査とは何かを理解しましょう。税務調査は、会社が「今年の税金は●円です」と申告した金額が正しいかどうかをチェックする行為です。

 法人税・消費税など多くの税金は申告納税方式(納税者に税額を申告させる方式。反対は賦課課税方式と言います)のため、正しいかどうかを税務署の職員がたまに確認しにくるというイメージですね。また、多くの方が誤解しているのですが、税務調査は「任意」です。裁判所の令状を持ってくるような強制捜査とは異なります。任意調査の場合、いきなり朝一で税務署がきたとしても帰ってもらうことができます。

 ただし、税務調査自体を拒否することはできません。あくまで、税務署の都合だけで調査を受ける必要はないということです。なお、税務調査を拒否した場合、一年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられる可能性があります(国税通則法127条)。

(2)税務調査の頻度

 税務調査は、3年に1回とか定期的に来るものではありません。多い会社では毎年、少ない会社では20年に1回、もっと少ない会社では一生に1回・・・といったように、会社によって頻度は異なります。

(3)税務調査の連絡手段と日程の決定

 顧問税理士がいる場合には、税務署から顧問税理士に連絡が入ります。その後、顧問税理士と打合せをして日程を決めることになります。

 ちなみに、飲食店や美容室などの日銭商売の場合は、電話予告もなく、突然来店される可能性がありますが、この場合も、顧問税理士に連絡して日程をリスケすることが可能です。

  「税務署の方が●月●日でと言うので予定をキャンセルして・・・」

 ではなく、ビジネスに支障がない範囲で日程を決定しましょう。税務調査はビジネスの邪魔をしにきている訳ではありませんからね。

(4)税務調査に係る各種データ

 次に、税務調査に係るデータを紹介します。

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(出所:平成26事務年度 法人税等調査事績の概要

 この結果をまとめますと、以下のことが言えます。

  • 税務調査を受ける法人は約2.5%(40年に1回くるかどうかの確率)
  • 税務調査を受けた会社の約7割は何らかの指摘を受ける(逆に言うと3割は何もなし)
  • 指摘を受けた会社のうち、約3割は不正を指摘される(=全体の20%程度)

 

 税務調査を受けた会社の約3割は「お咎めなし」です。また、指摘を受けた会社であっても、大抵はちょっとした処理ミス程度に過ぎません。つまり、きちんと会計処理をしていれば税務調査を恐れる必要は全くないんですね。

 むしろ、帳簿をタダでチェックしてもらえるチャンスと捉えても良いかも知れません。税務調査の目的は、あくまで適正な処理がされているかの「確認」です。より多くの税金を取ろうとしている訳ではありません。

1.税務調査が入りやすい会社、入りづらい会社

 ここでは、税務調査が入りやすい会社・入りづらい会社の特徴をお話していきます。ただし、入りやすい会社だからと言ってしょっちゅう税務調査が入る訳ではありませんし、入りづらい会社だからと言って、全く税務調査が入らないという訳ではありません。

 あくまで統計的なお話になります。

(1)こんな会社は税務調査が入りづらい

 税務調査が来やすい会社や来づらい会社はあるのか?という質問を受けます。答えは「あります」。やみくもに税務調査に言っても時間の無駄になってしまう可能性がありますので、ある程度、アタリを付けている部分もあるんですね。

 例えば、ビルの賃貸業をしていて毎年ほぼ同額の収益・費用しか計上されていないような会社であれば、税務調査に行っても無駄足になる可能性が高くなります。したがって、こういった会社にはあまり税務調査は入りません。

 また、大赤字の会社などは指摘事項があったとしても、赤字金額未満の修正しかなければ、1円の税金も取ることができませんので、税務調査が入る可能性は低くなります。

(2)こんな会社は税務調査が入りやすい

 逆に税務調査が入りやすい会社にはどのような特徴があるのでしょうか。1つずつ確認していきましょう。

①利益が乱高下している会社

 先ほど紹介した毎年ほぼ同額の収益・費用しか計上されていない会社と真逆のタイプです。すごい利益が出る時もあれば、すごい赤字が出る時もあるような会社の場合、利益調整をしている可能性も考えられますので、税務調査が入る確率は上がります。

②黒字が出続けている会社

 赤字会社の場合、指摘金額が赤字金額未満でしたら税金は取れないというお話をしましたが、その逆で黒字会社の場合は、「指摘=税金に直結」ですので、赤字会社よりは税務調査が入る確率は高くなると考えられています。

③税金の還付を受けた会社

 消費税の還付や、欠損金の繰戻還付など、税金を返してもらった場合は税務調査が入る確率が高いです。

 特に欠損金の繰戻還付をした場合は、その請求の基礎となった欠損金額その他必要な事項について「調査」すると明文化されています(法法80条の6)ので、税務調査が入る可能性はかなり高いと認識しておきましょう。

④多額の特別損益が発生している会社

 損益計算書上に多額の特別損益(非経常的な損益)が発生している会社の場合も、その内容を確認する為に税務調査が入る確率が高くなります。通常と違うことをしていると「何だろう?」と思うのは人の常ですよね。

⑤前回の調査から5年以上経過している会社

 一般に、税務調査は4~5年に1回と言われています。やはり、5年もすると会社の内容も大分変化していきますので、それを確認しに来るというイメージです。

⑥新設法人の設立3年目以内

 新設法人の場合、税務署に全くデータがありませんので、確認のために税務調査が入るケースがあります。顔合わせみたいなものですね。

⑦不正発見割合の高い業種

 不正発見割合が高い業種というものがあります。したがって、その業種に該当する場合は必然的に税務調査が入る確率が高くなります。参考までに、平成26年度における不正発見割合の高い10業種及び不正1件当たりの不正所得金額の大きな10業種を載せておきます。

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(出所:平成26事務年度 法人税等調査事績の概要

2.税務調査で決まってチェックされる項目とは?

 次に、税務調査で必ずチェックされるポイントを確認していきましょう。調査官は闇雲に会社の帳簿を見るのではなく、ある程度アタリを付けて帳簿を確認します(そうしないといつまで経っても税務調査を終わらせることができません)。

 その「アタリ」部分を確認していきましょう。

(1)年度末における売上の計上時期は適正か

 100%見られると断言できるのが、売上の計上時期です。特に年度末・年度初めの売上については必ずチェックされます。本当は当期の売上だったにもかかわらず、来期の売上として当期の利益を少なくするというケースはよくある話ですので、そこを重点的にチェックします。

 売上の計上時期は、売上が実現した日です。基本的には商品等を引渡した日になります。この引渡し書類を改ざんしていたような場合は、悪質と判断されても仕方がありませんので、そういったことはしないようにしたいですね。

(2)売上の計上漏れはないか

 売上自体を計上していないケースです。そんなのないよ・・・と思われるかも知れませんが、実は結構あるケースです。特に飲食店などでは伝票を捨ててしまえば売上の事実を確認し辛いですので、ついついやってしまう・・・というケースがあります。

 売上の計上漏れが発覚するケースの多くは原価率に起因します。売上だけを除外し、それに係る費用はそのまま計上してしまうと原価率が大きくブレますので、発覚する可能性が高くなります。

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(3)在庫の計上漏れはないか

 仕入れた商品を販売すれば、その仕入分は費用になります。しかし、売れ残った商品は棚卸資産となり費用にすることができません。そのため、税務調査では棚卸資産が適正に計上されているかのチェックを行います。

 こちらのポイントも原価率です。例えば、普段は30%位の原価率なのに期末だけ50%になっているような場合、原価を調整しているのは明らかですよね。

(4)架空人件費はないか

 架空の人を雇ったことにして、給与相当額を自分が管理している口座に入れて経費を水増しするケースです。こういったことがないかを確認するため、源泉徴収簿やタイムカードなどがチェックされます。

 残念ながら、架空人件費は割とポピュラーな手口なのですが、マイナンバーが運用され始めたらほとんどなくなるでしょう。マイナンバーで調べれば一発でわかりますから。

(5)個人で使ったものを経費にしていないか

 オーナー企業の場合、社長の財布と会社の財布は同じような感覚です。したがって、社長の個人的な交際費などが会社の経費になっているというのはよくあります。仮に発覚した場合、役員に対する給与として取り扱われますので、損金不算入+所得税増という二重の罰を受けることになりますので、注意して下さい。

 具体的な勘定科目で言いますと、「交際費」や「会議費」がチェックされます。私は、会議費のレシートに「お子様ランチ」が入っているのを見たことがあります。家族で食事したものを経費にしているのがバレバレですね。

(6)外注費とあるが給料ではないか

 これも結構多いのですが、支払ったお金が外注費になるのか給料になるのかという論点です。外注費の場合、消費税の課税取引となりますので仕入税額控除の対象となります。しかし、給料の場合は消費税の非課税取引となり、仕入税額控除はできません。

 外注費としていて、給料だったと判断された場合、消費税及び源泉所得税の納付をする必要があります(法人税は還付になります)ので、ご注意下さい。外注費と給料の判定基準として、こちらのQ&Aを参考にされるのが良いかと思います。 

3.知らなきゃいけない!税務調査の対応方法

 次に税務調査の対応方法について確認していきましょう。

①税務調査に税理士は同席させた方が良いか

 税務調査は税理士なしでも良いのか?と聞かれることがありますが、もちろんOKです。むしろ、税務署的には税理士がいない方がやり易いでしょう。ただし、税理士を付けないで税務調査を受けることは、弁護士を付けずに法廷に立つのと同じです。ちゃんと対応できるのであれば良いかもしれませんが、普通に考えますと税理士を付けた方が良いでしょう。

②全ての処理に根拠資料を付ける

 調査官は税法に則って税務調査を行います。税法でOKとあれば調査官はNGということはできません。ですので、全ての処理について、必ずその根拠資料を準備しておきましょう。

 具体的には、領収書・請求書など金額と内容が分かる資料、解釈が難しい項目については、条文やタックスアンサーの回答などを準備しておくようにして下さい。

③調査官に対する対応

 調査官相手ですと、必要以上に卑屈になったり、逆に、横柄になったりする方がいます。しかし、調査官も1人の人間ですので、変に意識するのではなく取引先と話をするくらいのつもりで対応するようにしましょう。

 また、質問にはその場で答えるのではなく、時間を置いて答えるようにした方が言葉尻を取られたりする可能性が下がります。しっかりと準備をして対応したいですね。

4.さいごに

 ということで、今回は税務調査についてお話しましたが、いかがでしたでしょうか。税務調査は、税務署による「確認」作業です。ちゃんと納税をしていれば「OKです」で終わる作業です。ですので、不正経理をしていないのであれば、胸を張って対応すれば良いんですね。

 仮に、不正経理をしている・・・というのであれば、税務調査を機に適正な経理にしていきましょう。

 

 以前、泣く子も黙る(?)東京国税局の税務調査が入った際、調査官の方がおっしゃっていた素晴らしい言葉があります。

 「ちゃんと納税していればそれでいいんだよ」

 この時の税務調査ではいくつか指摘を受けたのですが、納税者有利の誤りも修正して頂き、なんと減額更正(還付)でした。

 調査官は怖いという印象があるかも知れませんが、ほとんどの調査官はこういった志の高い調査官だと思います。ぜひ、1人の人間として調査官に敬意を払い、かつ、社会人としてキチンと税務調査に対応したいものですね。

 さいごに、本稿は読み易さを考慮してかなりザクッとした内容になっています。もっと詳しく税務調査について知りたい!という勉強熱心な方は、ぜひ以下の記事をご参照下さい。私が知る限り、これを超える税務調査関連の記事はありません。

起業家が知っておくと安心できる税務調査対応のすべて

 


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