個人事業である程度の成果が出てきた時に、必ず検討するのが「法人成り」です。法人成りをすれば経費がたくさん増やせる!と言うご意見を聞くこともありますが、逆に、納税が増えてしまった・・・というケースもあります。
良いところがあれば悪いところもあるのは世の常です。良いところだけを掻い摘んでしまうと損をするかも知れませんし、悪いところだけを掻い摘んでしまうとメリットを享受し損ねる可能性もあります。
そこで、今回は法人成りのメリットとデメリットを列挙してその内容を解説していきます。本稿を法人成りの検討材料として頂ければ幸いです。
なお、結構な長文になりますので、最初にまとめを用意しました。まとめの内容は全て以下の本文にありますので、気になった点は本文をご確認頂ければよろしいかと思います。
また、法人成りをすると同時に事業を廃止される方がほとんどだと思います。個人事業者の廃業に係る手続き関係につきましては、こちらの記事をご参照下さい。
◆法人成りのメリット
1.税制面のメリット
法人成りをするメリットの多くは税制面です。個人事業者は所得税法、法人は法人税法という異なる税法が適用されます。両者はその内容に大きな違いがあり、そこにメリットが生じるケースがあります。また、消費税については、個人も法人も同じですが法人成りをすることで有利になる可能性があります。
これらの内容を確認すると共に、享受できるメリットを1つずつ確認していきましょう。
(1)消費税の免税事業者になれる
ご存知の方が多いかも知れませんが、事業を開始してから最大2年間は消費税の納税義務が免除されます(「免税事業者」と言います。反対は「課税事業者」)。従って、免税事業者の場合、売上時にもらった消費税分については通常の売上と同じでIMP(In My Pocket)となります。
ただし、このメリットを享受するためには以下の2点にご注意下さい。
・資本金の額が1,000万円未満であること(1,000万円ピッタリはNG)
・2年目の事業年度開始日から半年間の売上が1,000万円未満であること
(代えて、この期間の給与総額とすることもできます)
これらの要件に該当してしまいますと、免税事業者となることができません。特に、資本金を1,000万円以上としてしまうといきなり納税義務が出てしまいますので、ご注意下さい。
なお、個人事業者時代に課税事業者であったとしても、法人成りをすればまた免税事業者となることができます。個人事業者で翌年から課税事業者となるような場合でしたら、その時点で法人成りして2年間免税事業者になるということも可能になります。
(2)(お得な?)給与所得を得ることができる
個人事業者の場合、収益から必要経費を控除(こうじょ)した残額が税金の対象となります。そして、青色申告の承認を受けている場合には、この金額から「最大」65万円を控除した残額が課税所得となります。
しかし、法人の場合には「給与」として貰うことができますので、給与所得控除を利用することができます。給与所得控除は「最低でも」65万円を控除することができますので、個人事業者より控除額が少なくなることはありません。
以下、年収別の税額差について簡単に確認しましょう。
年収500万円ですと26万円、年収1,000万円ですと50万円と結構な差が出ます。ある程度の所得があるのであれば、これだけを理由に法人成りしても良いレベルですね。
(3)配偶者控除・扶養控除を使うことができる
個人事業者で青色申告の承認を受けている場合、青色事業専従者の承認を受けていれば奥様やお子様などの身内に給与を支払うことができます。しかし、青色事業専従者には1つ問題があります。それは、「配偶者控除及び扶養控除が利用できない」ことです。
扶養控除はあまり利用される方はいないかと思いますが、配偶者控除(最大38万円)はかなりの方が利用されるかと思います。配偶者を青色事業専従者とした場合、給与を支払うことはできても配偶者控除ができませんので、ある程度の給与を支払わなければ割に合わないという事象が生じてしまいます。
しかし、給与所得であれば配偶者控除を利用することができます。配偶者の給与を年103万円以下にしておけば、法人の経費として配偶者に給与を渡しながら配偶者控除を受けることが可能となります。
(4)税制が優遇されている退職金を得ることができる
所得税法上、退職所得(要するに退職金)という所得があります。退職所得は給与所得と計算の仕方が異なり、非常に有利なものとなっています。退職金は老後の資金になるケースが多いことから、優遇せざるを得ないという事情があるんですね。
しかし、個人事業者の場合、退職という概念はありません。あるとしますと「廃業」でしょうか。ですので、個人事業者では退職金を受け取ることはできません(小規模企業共済などの類似制度は利用することができます)。
もちろん、給与所得者であれば退職金を受け取ることができますので、法人成りをしていれば退職所得を得ることが可能となります。
(5)役員であっても最大85%OFFで社宅に住むことができる
個人事業者の場合、自宅を必要経費にするには自宅が事務所であることを証明し、かつ、家事割合を控除した金額までしか認められません。どんなに頑張っても50%程度までしか必要経費とすることはできないでしょう。残りの50%については自己負担をすることになります。
しかし、法人であれば「社宅」という制度を使い、最大で85%を会社の経費にすることができます。自己負担は15%ということですね。細かい計算についてはこちらをご覧下さい。
なお、社宅と言っても法人で住居を買い上げる必要はなく、通常の賃貸住宅を法人が借りて役員に貸せば問題ありません。また、入居時に発生する「礼金・手数料」などの費用については全額法人の費用とすることができます(礼金の額が20万円以上の場合は、契約期間で費用化)。
また、持ち家を会社に売却してその持ち家を社宅にするということもできます。一定の要件を満たした持ち家の売却益は、3,000万円の特別控除を受けられますので売却益について税金が課される可能性も低く、法人に相応のキャッシュがあれば非常に有用な方法と言えます。
(6)無税で日当を貰うことができる
個人事業者が出張をした場合、必要経費にできるのは交通費や宿泊費などの実費だけです。しかし、法人の場合には実費のほか、旅費規程などで「日当」「宿泊日当」を設定していれば、使用した金額に関わらず、その金額を費用計上することができます。
例)日当5,000円、宿泊日当15,000円、実際の宿泊費8,000円の場合
法人:5,000+15,000(※)=20,000円
個人:8,000円
差額:20,000-8,000円=12,000円
※実際の宿泊費に関係なく一律で宿泊手当を費用にします。宿泊費が2万円だったから今回は2万円を費用にしようというのはナシです。あくまで、一律○円とすることで適用できる規定になります。
上記の例ですと、法人の方が12,000円多く費用にできた計算になります。なお、この12,000円については所得税が課されませんので、二重にお得な規定ということになります。出張の多い事業をしている場合には、重宝したい規定ですね。
また、日当・宿泊日当も消費税の仕入税額控除ができますのでご安心下さい(海外出張の場合を除きます)。
(7)慰安旅行も経費に?
個人の旅行を必要経費にすることはできません。しかし、法人の場合には社内旅行などの慰安旅行を費用にすることができます。家族経営の会社であれば、社内旅行=家族旅行となりますので、結果として旅行を経費にすることができます。
ただし、10泊で海外に行くといったような大々的な旅行ですと費用にすることはできません。そのような場合、個人に対する給与(※)として扱われますのでご注意下さい。
※従業員であれば給与として法人の費用にできますが、役員の場合は役員給与となり税務上の費用とすることができません。また、給与となった場合、源泉徴収をする必要もありますし、社会保険料も変わりますのでご注意下さい。
◆経費にできる旅行の条件
① 旅行代金が1人10万円程度までであること
② 旅行期間が4泊5日以内(海外旅行の場合、滞在日数が4泊5日以内)
③ 旅行の参加者が全体数の50%以上であること
④ 不参加者に旅行代金相当の金品を支給しないこと(※)
※結果として旅行か金品かを選択させることとなりますので、個人への給与として取り扱います。
(8)保険料を経費にすることができる
個人の場合、生命保険や医療保険などの掛け金は最大で12万円(4万円×3種類)を所得から控除することができますが、超える部分の金額は全額自己負担となります。
しかし、法人の場合には法人名義で保険に入ると、原則として掛け捨ての保険は全額費用とすることができます。また、積立型の保険であっても2分の1を費用とすることができるものもあります。
逓増定期保険や養老保険など、一時に多額を費用にすることができる保険もあり、税金をコントロールすることができるというメリットがあります。ただし、保険金が入ってきた場合は収益として計上しますのでご注意下さい。
(9)最長で9年間、損失を繰り越すことができる
その年の所得がマイナスの場合、その金額を繰り越して翌年の所得から控除することができます(欠損金の繰越控除制度)。この規定は、所得税法にも法人税法にもある規定なのですが、最長の繰越期間が以下のように異なります。
法人:9年間
個人:3年間
繰り越しをしても上記の期間内で控除しきれなかった金額は切り捨てとなることから、繰越期間は長ければ長いほど有利です。3年間ですと下手をしますと使いきれない可能性がありますが、9年間あればまず使い切れそうですよね。そもそも、9年間赤字が消せないのであれば事業として継続できているか疑問ですが・・・
ビジネスをする前から大きな損失を被ることを考えるのは何ですが、救済的な制度として損失の繰り越しがあるんだなということを頭に入れておきましょう。
(10)所得税より低い税率が適用されることがある
所得税の最高税率は45%(所得金額4,000万円超)であり、これに住民税が10%加算されますので、個人に掛かる最高税率は55%となります。単純計算をすると、1億円稼いだら5,500万円の税金を支払わなければならないということですね。
一方、法人税は地方税を含めて最大で35%程度(中小法人の場合、30%未満となることがほとんどです)になります。1億円稼ぐと3,500万円の税金を支払うことになります。
ただし、個人に掛かる最低税率は地方税を合わせて15%ですので、その場合は所得税よりも法人税の方が高くなります。
所得税及び住民税の税率は、所得が695万円以上ですと33%、900万円以上ですと43%となりますので、この辺が損益分岐点になるでしょう。税率差だけに注目するのであれば、695万円以上の所得があれば法人税の方が有利となり、なければ不利となります。
(11)源泉徴収されない
個人で一定の事業をされている方は、その報酬額から源泉徴収が行われます。したがって、源泉徴収分だけ手取金額が減ることになります。もちろん、源泉徴収は税金の前払いですので損をしている訳ではないのですが、金額が多い場合は資金繰りに影響をもたらします。
法人成りをすれば源泉徴収はされませんので、その分だけ資金繰りが良くなることから、源泉徴収される金額が多い方の場合はかなりのメリットになると思われます。
参考)主な源泉徴収される報酬と源泉徴収税額
内容:原稿料や講演料、弁護士・税理士等の報酬・料金など
税額:100万円以下の場合 支払金額(A)×10.21%
100万円超の場合 (A‐100万円)×20.42%+102,100円
例)原稿料300万円の支払いを受ける場合の源泉徴収税額
(300万円‐100万円)×20.42%+102,100円=510,500円
(12)その他、細々としたメリット
個人事業者の場合、事業年度は1月1日~12月31日までと法律で定められています。しかし、法人の場合には好きな期間を事業年度とすることができます(最長1年間)。
ですので、繁忙期を避けて事業年度を設定することも可能です。また、ちょっとトリッキーですが、年度末に大きな利益が計上されそうな場合は、その前に事業年度を終了させて翌年度にその利益を計上するという手法も使えます(普通はやらないですけどね)。
また、慶弔金規定を設けることで、自身の慶弔金を費用とすることも可能です。福利厚生的なものも、個人事業に比べたら経費にし易いでしょう。
2.税制面以外のメリット
次に税制面以外のメリットです。税制面に比べますとそこまでインパクトはありませんが、一定の方にはかなりのメリットがあると考えられます。ぜひ、一定の方に該当するかどうか確認してみて下さい。
(1)社会的な信用が上がる
個人事業者の場合、屋号を付けることはできますが、基本は個人名で取引をすることになります。領収書に個人のフルネームが書いてあって、何とも言えない気持ちになったことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
法人であれば、個人名ではなく社名を全面に押し出していくことができますので、そういった意味で信用が上がるのは事実です。
また、「株式会社○○○ 代表取締役社長 山田太郎」といったように肩書も自由に設定することができます。最近では、CEOとかCOOと言った肩書の方が多いように感じます。肩書に弱い方は一定数いらっしゃいますので、肩書を自由に設定できることも信用が上がる1つのポイントになるでしょう。
また、一部の事業では個人事業者が参加できないものもありますし、法人としか取引しない会社もあります。法人であれば問題ないけど個人事業者だとダメというケースはゼロではありませんので、ご留意下さい。
更に言いますと、銀行からの融資を受けられる可能性も高くなるケースがありますし、従業員を募集する際は個人よりも法人の方が集まり易いです。これらも、社会的な信用が上がっているからこそ起こりうる現象と言えるでしょう。
◆法人成りによる信用メリット
①個人名を使用しない
②肩書を自由に設定できる
③個人事業者が参加できない事業がある
④法人としか取引しない企業がある
⑤融資を受けられる可能性が上がる
⑥従業員を募集しやすい
(2)事業主と専従者も社会保険に加入できる
個人事業の場合、事業主とその専従者は社会保険に加入することができません(従業員は加入することができます)。しかし、法人であれば社会保険は強制加入となりますので、事業主も専従者も社会保険に加入することができます。
社会保険に加入すると健康保険も年金も保障が多くなりますので、加入できるというだけでもある程度のメリットはあるでしょう。
※社会保険=健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険
(3)タダで助成金を貰える可能性が増える
あまり知られていないのですが、一定の事業をする場合や雇用を増やした場合などに国や地方公共団体から助成金が貰えることがあります。
助成金の種類は色々あるので一概には言えませんが、凄く簡潔に言うと「返さなくても良いお金」です。貰えるのであれば貰いたいですよね。
しかし、助成金の対象に個人事業者が含まれないものは多々あります。逆に、個人事業者しか貰えない助成金というのはほとんどありません。補助金を受けようとしている場合は、ご留意下さい。
(4)相続・離婚と言ったケースがあっても問題なし?
あまり考えたくないかも知れませんが、相続や離婚があった場合は財産分与をする必要があります。個人事業者であれば全て個人の所有になりますので、資産は財産分与の対象となりますが、法人の場合はあくまで法人所有ですので財産分与の対象となりません(その代り法人の株式や出資が財産分与の対象となります)。
あまりポジティブではありませんが、揉めないという意味では法人にしておいた方が良いと言えるでしょう。
(5)事業承継がスムーズにできる
こちらも上記(4)に似ているのですが、事業を承継する場合、個人事業者であれば事業用のものと家事用のものを分けるのは大変ですが、法人であれば株式を譲渡するだけですので便利です。
問題となるのは株価の算定ですが、きちんと決算をしていれば、そこまで苦戦することはないでしょう。ちなみに、当社でも株価算定サービスを行っていますので、ご入用の際はぜひご一報下さいませ。
(6)その他、細々としたメリット
個人事業の場合、どうしても事業とプライベートの境目があやふやになります。事業資金を使ってしまったりすることもあるでしょう。法人であれば、法人は法人、個人は個人として棲み分けをすることができますので、これも1つのメリットだと言えます。
ただし、オーナー企業の場合ですと法人は自分のものという感覚が強いですから、あまり変わらないのかも知れません。
法人成りのデメリット
ここまで、法人成りのメリットについてお話してきましたが、ここからは法人成りのデメリットについてお話します。テーゼがあればアンチテーゼがあるように、メリットがあればデメリットもあります。ぜひ、こちらも忘れずにご確認されますようお願いします。
1.税制面のデメリット
法人成りをするメリットの多くは税制面でしたが、デメリットもあります。ただ、享受できるメリットほどのデメリットではありませんので、あまり構えずに読んで頂ければ幸いです。
(1)赤字であっても地方税が発生する
個人の場合、赤字でしたら税金はゼロです。しかし、法人の場合は住民税の均等割という言わば「ショバ代」のような費用が必ず発生します。なお、均等割は都道府県や市町村によって若干異なりますが、最低額は7万円になります。
つまり、何もしなくても必ず7万円は支払わなければなりません。7万円の利益を出さなければ赤字確定ということになります。7万円が惜しい!というのであれば、法人成りはされない方が良いでしょう。
(2)税務調査が増えるかも知れない
事業者が何よりも恐れると言われる税務調査ですが、確率論的に言いますと個人事業者より法人の方が入られる可能性が高いです(単純に個人事業者よりも法人の方が規模的に大きいということもありますが)。
(3)小規模企業共済に加入できない
個人事業者は退職金がない代わりに、小規模企業共済という小規模事業者向けの制度に加入することができます。
小規模企業共済への掛け金は最大で月7万円、年間84万円まで小規模企業共済等掛金控除額として所得金額から控除することができ、さらに受け取った共済金は退職所得とすることができます。
非常に有利な規定となっていますが、法人ですと小規模企業共済に加入することができません(一定の法人であれば加入できます)。ただし、中小法人であれば中小企業退職金共済(=中退協)がありますし、費用にできる年金制度もありますので、デメリットはこれらに加入する手間程度というところでしょうか。
2.税制面以外のデメリット
(1)法人を設立するには費用が掛かる
住民税の均等割と並ぶデメリットが法人の設立費用です。法人を設立する場合、概ね以下の費用が発生します。
上記金額の他、司法書士の報酬や実印などの費用が掛かります。ただし、最近では数千円で設立代行をしてくれる会社もありますので、そこに頼めば僅かな費用で収まります。また、実印も1万円程度のもので良いかと思われます。
(2)社会保険に強制加入という恐怖
個人事業者の場合、従業員5人未満であれば社会保険の加入は任意ですが、法人の場合は強制加入となります。社会保険に入りますと、健康保険・厚生年金を従業員と折半で負担し、かつ、雇用保険(従業員負担の約6割増)と労災保険(法人が100%負担)を負担する必要が生じます。
社会保険は、給与支給額に対して15%程度のインパクトがあります。毎月の給与支給額が100万円であったとしたら、さらに15万円の負担増ということですね。
従業員を雇わない場合は問題ありませんが、従業員を多く雇うビジネスの場合、影響額をきちんと計算しておかないと酷い目に合いますのでご注意下さい。
(3)税理士や社会保険労務士の報酬が増える?
税理士事務所のHPを見ていますと、「個人事業者1万円~、法人2万円~」と言った顧問料体系のところが多いようです。なぜ形態の違いで最初から金額に差をつけているのか私にはわかりませんが(苦笑)、一般的には個人事業者より法人の方が顧問料は高くなる傾向にあるようです。
また、税務調査が入る確率が高くなると仮定しますと、税務調査の立会報酬が発生します(税理士抜きで税務調査に臨むことはお勧めできません)。
それともう1点、社会保険に加入することから社会保険労務士に掛かる費用も発生する可能性があります。
この辺は規模的な問題もありますので、絶対に増えます!という話ではありませんが、可能性として増えるかも知れないなと認識しておいて頂ければ幸いです。
さいごに
最後までお読み頂きありがとうございます。法人成りした方が得なのか?というご質問は非常によく受けるのですが、その多くは「個人事業者のままで良いのでは?」という方達です。法人成りのメリットは、ある程度の利益が出て初めて発揮されます。
あまり利益が出ていない段階ではデメリットの方が大きく働いてきてしまいますので、安易に法人化しないよう注意して下さい。
私個人としましては、概ね利益(売上ではありません)ベースで500万円以上出ているような場合か、翌年から課税事業者となる状況であり法人化すれば免税事業者になれる場合であれば、法人化を検討しても良いのではないかと思います。
◆法人成りの分岐点
所得が500万円以上or課税事業者→免税事業者となれる場合
※あくまで目安です
なお、当社では法人成りのお手伝いもしておりますので、ご入用の際はいつでもご連絡下さい。最後は宣伝でした(笑)
長文・駄文にお付き合い頂きありがとうございました。
【Q&A】
本稿は読み易さを考えて例外的な題材や用語の説明などはカットしていますが、以下にカットした内容のうち主なものをQ&A方式で記載しておきます。本編だけでは解決できなかった場合や最終チェックにご活用下さい。なお、質問があった場合はQ&Aを更新していきますので、ご質問等ある場合はお気軽にご連絡下さい。
Q1.費用・経費・必要経費
文中では、「費用」「経費」「必要経費」という言葉が出てきます。これらの差は?と思われた方もいらっしゃるかと思います。結論から言いますと、言い方が異なるだけで全て同じです。一般的には、費用や経費と言うかと思いますので、その認識で結構です。
なお、所得税法では費用・経費のことを「必要経費」と言い、法人税法では「損金」と言います。本稿では必要経費という言葉は使用していますが、損金については馴染みがないと思いますので使用していません(代わりに「費用」としています)。
Q2.免税事業者の受取消費税の取り扱い
免税事業者は消費税を納める義務がありませんので、受け取った消費税はIMPになると書きましたが、その代り、以下の2点が生じます。
① 仕入税額控除ができない
② 受取消費税分も通常の売上同様、税金の対象となる
受取消費税から上記を差し引いた分が得する分ということになります。なお、仮に受取消費税よりも①の方が多い場合は損をすることになりますので、ご注意下さい。
Q3.日当の金額について
出張に係る日当及び宿泊日当ですが、いくらでもOKという訳ではありません。税務上では「妥当な金額」とお茶を濁されていますので一概に「いくらまで!」と言うことはできません。
参考までに、私が見た限りで一番高かった会社は、日当1万円、旅費日当2万円(社長の場合)でした。この位までが妥当な金額と言えるかと思います。
なお、役職によって日当及び宿泊日当の金額を設定することができます。社長は5,000円、課長は3,000円といったように、旅費規程に記載しておきましょう。
Q4.実効税率について
「法人税の税率って一定じゃないの?」「実効税率って何?」と言った質問をよく受けます。たしかに分かり辛いですね。
2015年現在、法人税の税率は25.5%です。ただし、一定の中小法人については年800万円まで15%の税率となります。したがって、大法人であれば税率は一定ですが中小法人の場合は15%~25.5%までの税率(年800万円超の金額がいくらあるかで変動)ということになります。
また、地方税の税率は一定ではなく地方団体によって若干のズレがありますし、所得によって均等割の占める割合が異なりますので、これも税率差の要因となります。均等割7万円の会社で所得が1,000万円あると均等割の割合は0.7%ですが、所得が100万円ですと7%にもなってしまいます。
実効税率は、法人税と地方税を合算した税率になります。ですので、法人の状況によって実効税率は異なります。なお、大法人が税効果会計で使用する実効税率は、東京都の超過税率を使用した33.10%(平成27年度)が多くなっています。
Q5.事業年度について
法人の場合、事業年度は自分で決められます。極端な話1日でも良いし、10年でもOKです。ただし、事業年度終了時には確定申告をする必要があることから短く設定する法人はあまりありません。
また、法人税法では事業年度が1年超の場合は、1年ごとに区分(1年未満の端数が生じた場合は1年とされます)して確定申告をするよう要請していますので、結果として1年間とする法人が多くなっています。
Q6.株価算定について
上場株式であれば市場価格がありますが、非上場株式には時価がありません。そこで、一定の方法で株価を算定することになります。
株価算定には大きく分けますと、純資産方式・収益方式・配当還元方式・比準方式の4種類があります。なお、いずれの方法にせよ、株価算定をされる場合は専門家に依頼されることをお勧め致します。
Q7.会社設立の期間について
会社を設立するには結構時間が掛かるのでは・・・と思われている方もいらっしゃるかも知れません。しかし、実は最短1日で設立することが可能です。詳しくはこちらの記事をご参照下さい。
Q8.個人事業者の廃業手続きについて
法人成りをする場合、個人事業は廃業するのが一般的です。廃業の手続き関係は以下の記事をご確認下さい。
個人事業者が事業を廃止した場合における4つの提出書類の内容&書き方(手引付き)
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