設立時の本店所在地が自宅住所で良い4つの理由とメリット・デメリット

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会社を設立する際には、「本店所在地」を決めて定款に記載し登記する必要があります。

オフィスがあれば、オフィスの住所にすれば良いでしょうが、設立する段階で事務所の賃貸契約が出来ているということも希ではないでしょうか。

そうなると、自宅の住所にするしかない?となるかもしれませんが、本当にそれで良いのか!?

この記事を読んで確認してもらえたらと思います。

1.結論:設立登記は自宅の住所で問題ない

結論として、最初は自宅の住所で登記するのが良いと思います。

まずは自宅住所で会社を設立しても問題ない理由について説明していきたいと思います。

その理由とは、

  1. 登記上の住所は形式的な審査しかされない
  2. 実務上、自宅住所が使えないと会社設立が難しくなる
  3. 銀行口座を開設するのに自宅住所が一番良い
  4. 自分で会社を設立して代表取締役になれば、どのみち自宅住所は公開されてしまう。

2.自宅住所で設立しても問題ないカラクリ

多くの方が、「実際に事業を行う住所で法人を設立しなければいけないのでは?」という疑問を持たれると思います。

確かに、原則としては、実際に事業を行う場所の住所で法人を設立するべきです。しかし、実際に事業を行う場所以外で設立しても何ら問題ないのも事実なのです。

2−1.登記上の住所はどこでも形式的には問題ない

法人は会社法という法律で認められた(法)人格であり、目に見える存在ではありません。法人の本店所在地は、この目に見えない存在と連絡を取るための手段を設定するために登記事項になっているに過ぎません。

代表取締役の住所も登記事項ですので、そちらに連絡することも出来ます。しかし、そもそも会社を設立するということは、個人事業と比べて大きな規模で仕事をすることを前提として、代表取締役の自宅以外の場所に事業の拠点を持つことが想定されるので、会社の所在地を連絡先として設定することに意味があるのです。

実は、法務局は登記申請を審査する際には、その住所に事業所が本当にあるのかどうかの確認はしません。その意味では、その「住所」さえ存在していれば、仮に建物が存在していなくても登記は出来ます。よく投資詐欺のテレビニュースで、登記上の住所の場所に行ってみると何も存在していないという映像が流れることがありますが、それはこうした事情が背景にあるのです。

2−1.自宅住所で設立できないと実務上大変

逆に自宅住所で設立できないと実務上大変なことになります。

事業を起ち上げてからスグに事務所を借りたいとします。しかし、その事務所を借りる際に、借り主を会社にするためには、会社が存在していなければなりません。会社設立する前の段階とは、会社が存在していない段階です。つまり、会社を借り主として貸借契約を締結することは出来ません。

したがって、法人が設立されたら必ず貸すと決めて下さる貸し手に恵まれた場合は別として、通常の貸し手の場合には、これから借りる事務所(又は店舗)の住所で設立登記することは難しいのです。

2−2.バーチャルオフィスは銀行口座が開設出来ない?!

こうした事情をビジネスチャンスにしているのが、バーチャルオフィスです。バーチャルオフィスなら、会社設立前の時点で、会社設立後もそのオフィスを貸してくれることを約束してもらえます。

確かに、登記可能なバーチャルオフィスには郵便転送サービスが付いています。したがって、税務署や役所からの連絡も付けることが出来ます。

しかし、バーチャルオフィスには銀行口座が開設出来ない場合が多いという致命的な欠点があります。銀行口座が開設出来ないということは、金融機関から借入を受けることも難しいということです。

銀行口座が開設出来なければ、現実に事業を運営することが出来ませんし、金融機関から借入を受けられなければ事業を起ち上げることが出来ないというケースも多いと思います。ですから、バーチャルオフィスの住所を借りて会社設立するのはオススメ出来ないのです。

2−3.自宅の住所の公開はやむを得ない

バーチャルオフィスの利用目的として、自宅の住所を知られたくないということを仰る方もいますが、代表取締役でありながら、住所を書くし通すことは制度的に不可能です。

あなたが代表取締役を務める限り、登記簿にあなたの自宅住所が載ることになります。これは実印(印鑑登録済みの印鑑)が会社設立のために必要で、自宅住所が記載された印鑑証明書を添付して登記申請をしなければならないからです。

銀行口座開設の件もありますので、バーチャルオフィスを利用するのではなく、まずは自宅住所で登記しましょう。つまり、バーチャルオフィスの正しい利用方法は、設立登記は自宅住所でする一方で実際の事業をバーチャルオフィスで行う方法です。

面談や打ち合わせなどのために自宅に得意先や取引先を招くのは現実的ではありません。そういう時、バーチャルオフィスを利用するというのが正しいバーチャルオフィスの使い方ということです。

2−4.役所は登記住所と事業所が別でOKにしている

自宅住所で設立登記をしたとします。そこは登記上の住所でしかなく、実際には、別の場所に事務所や店舗を借りたとします。この場合、法人住民税を支払うべき都道府県・市区町村は自宅が存在している自治体か、それとも実際に事務所や店舗が所在する自治体か、それとも両方ともかのいずれになるでしょうか?

答えは、事務所や店舗など実際に事業を行っている事業所が所在する自治体になります。自宅で事業を行っていなければ法人住民税は係らないのです。

これは、均等割の負担が事業所の存在(実態)が課税の基準になるからです。実態に課税する税法の考え方からすると当然のことなのですが、結果的に、わたしの主張である「設立登記の住所は自宅で問題ない」にお墨付きを与えてくれていると言えるでしょう。

3.自宅住所で設立するメリット

自宅住所で設立する場合、メリットもあります。

  1. 追加のコストが発生しない。
  2. 賃料を経費にすることも出来る(但し賃貸の場合に限る)

それぞれ説明していきたいと思います。

3−1.自宅住所で設立すれば追加のコストが発生しない

事務所を借りれば、賃料の負担が発生します。バーチャルオフィスの場合、かなり安いですが、費用負担が発生するのは同様です。

自宅で登記することに追加のコストは発生しません。

したがって、自宅住所で登記することが一番コスト的にもメリットがあります。

3−2.賃料を経費にすることが出来る(但し賃貸に限る)

いま家賃を払っているなら、仕事場分の家賃は、新しく設立する会社に負担してもらいましょう。

会社を設立するまでは何の経費にもならなかった家賃の一部を法人負担にすることで、あなたの負担を減らすことになるほか、家賃の一部が法人経費になることで法人税の節税という形で恩恵を受けることが出来ます。

しかし、自己所有の自宅住所で登記する場合は注意が必要です。

あなたが法人から賃料を受けとってしまうと、あなたの個人所得(不動産所得)が発生してしまいます。あなたは当然、法人から役員報酬をもらうでしょうから、そうなるとこの不動産所得についても確定申告をして所得税を納税しなければならない可能性が高くなります。

一見、賃貸の場合も自己所有の場合も同じことになりそうですが、こうした違いがあることは理解しておく必要があります。

4.自宅住所で設立するデメリット

ここからは若干グレーなお話をすることになります。実務に役立つということがビズ部のモットーですが、決して、コンプライアンス違反を推奨するわけではありません。よく読んだうえで自己責任で自宅住所を登記上の住所として会社設立するかどうかの判断材料にして下さい。

デメリットは次の3つです。

  1. 自宅の賃貸借契約上、居住用でしか利用できないことになっている場合、契約違反になる。(最悪退去を迫られる)
  2. 住宅ローン減税を受けている持ち家の場合、理論上、少なくとも事業に利用している部分に関する住宅ローン減税が受けられなくなる
  3. 事業開設に必要な許認可が受けられない

こちらもそれぞれ詳細を説明したうえで対処法や私見をお伝えさせて頂きます。

4−1.自宅の賃貸借契約又は管理規約違反の可能性がある

現在賃貸住宅にお住まいの方はご自宅の賃貸借契約書を、自己所有のマンションに在宅の方はマンションの管理規約をご用意下さい。(自己所有の一軒家にお住まいの方には関係ない話です。)

賃貸借契約書に「居住用として利用する」あるいは「事務所用途は不可」等の記載がある場合があります。この場合、「形式的」には、賃貸借契約違反となる可能性があります。また、マンショの管理規約に「主として居住用として利用する」という規約が置かれているマンションが沢山あります。こうしたマンションの住所で登記する場合、「形式的」にはマンション規約違反となります。

しかし、こうした記載を賃貸借契約書や管理規約に行う趣旨は、マンションの一室を事業用に利用する住民が発生することにより、不特定多数の人間がマンション内に出入りすることによるマンションの保安上の問題発生を防止することにあると考えられます。

したがって、登記上の住所として利用するだけで、実際に事務所として利用し、かつ、不特定多数の人間がマンション内に立ち入るようなことがなければ、実質的には契約違反や規約違反にはならないと考えます。現実を考えれば、居住用であったとしても、不特定多数の友人・知人の出入りということはあるからです。

しかしながら、ルールはルール。ルール違反はルール違反です。こうしたことを気にする方は、自宅マンションの住所を使って法人登記するのは避けられた方が良いでしょう。

これと関連したマンション住所で登記することの弊害として、郵便ポストに法人名の記載が出来ないということがあります。その場合、確かに気の利かない郵便局員が配達をしない可能性があり得ます。しかし、多くのケースで法人に郵便物を送る場合に、宛先に法人名のみを記載するということは少なく、代表者の名前まで書くのが通例です。したがって、このことが実質的に問題になるということはないと思いますが、こちらも気にされる方は賃貸マンション住所での法人登記は避けられた方が良いでしょう。

4−2.理論上、住宅ローン減税が受けられなくなる

住宅ローン減税は、居住用の土地・建物だけを対象とした制度です。つまり、事業用の土地・建物については、住宅ローン減税にならないのが原則です。

法人登記の住所として自宅住所を用いるということは、居住用の土地・建物の一部を事業用として利用するということに他なりません。したがって、形式的には、住宅ローン減税を受けることは出来なくなるということがスジです。

しかし、形式的に法人登記簿上の住所として利用するとしても、実際に、自宅を事務所・事業所として利用しなければ、実態としては、自宅は居住用のみに利用しているということになります。あくまでも私見ではありますが、この場合には、自宅住所で登記したとしても住宅ローン減税を継続して受けられるものと考えます。

また、そもそも住宅ローンという金融商品は、借り主が居住用の土地・建物を購入する場合に限って、極めて長期間の融資を認めるという商品です。住宅ローンの借入契約には、「居住用でなくなった場合には、期限の利益を喪失する」と記載されているのが一般的です。これはすなわち、事業用に転用された場合には即全額返済せよという意味です。

しかし、住宅ローンの借入契約における事業用という考え方は、事業所として利用するというよりも、不動産賃貸への転用の防止を意図したものと考えるのが適当です。繰り返しになりますが、法人登記上の住所として自宅の住所を利用するというだけに留めているのであれば、事業所として利用している場合にも該当せず、住宅ローンを全額返済しなければならなくなるということはないと考えます。

4−3.事業に必要な許認可が受けられない

自宅を事務所にすると許認可が受けられない場合があります。この点については、次の2つの対処法があります。

  1. 法人設立後、事業所を借りて許認可を取得する
  2. 個人事業で許認可を取得し法人成りする

4−3−1.法人設立後に事業所を借りる方法

法人を設立したうえであれば、事業所や事務所、店舗の契約は容易になります。

その事業所や事務所、店舗で許認可を採れば、なんら問題なく営業することは出来るでしょう。

4−3−2.個人事業から法人成りする

まずは個人事業として許認可を取得し、その後、法人成りをするという方法があります。

個人事業で利用している事業所、事務所、店舗での継続営業であれば、法人としての許認可の取得についても、そうでない場合に比べて容易に取得することが出来ます。

5.本店所在地の記載方法

最後に、本店所在地の記載方法について説明します。

5−1.定款への本店所在地の記載方法

定款には最少行政区画まで記載すれば足ります。

具体的には、東京都千代田区平河町2丁目11番2号の住所を本店所在地として定款に記載する場合には、「東京都千代田区」と記載すれば充分という意味です。

この事例を例にすると、全住所で記載した場合、千代田区内での引越でも必ず定款変更が必要になりますが、最少行政区を定款に記載しておくに留めた場合には、千代田区内での移転であれば、定款変更の必要はありません。

ちなみに当社は、設立来13年で千代田区内で4回移転していますが、一度も定款の本店所在地を変更したことはありません。

5−2.登記申請する本店所在地の記載方法

逆に登記申請する住所は、部屋番号までキッチリ申請するべきです。なぜなら、銀行口座の開設の際などに、銀行担当者の所在確認や必要書類の送付の都合上、全情報が登記されていることが求められるからです。

2010年頃前後から、法人の口座開設のハードルは、かなり上がっています。

以前であれば、地番まで登記してあれば問題にならないことが多かったのですが、最近は部屋番号まで記載しておかないと銀行口座開設で弾かれてしまうケースが出ています。自分の住所の部屋番号までさらすのは人によっては抵抗を感じるところかと思いますが、銀行口座が開設出来ないと、実質的に営業を開始することが出来ないので、ガマンして対応するようにして下さい。

6.まとめ

タイトルのとおり、設立時の本店住所は自宅住所でOKです。この住所の状態で銀行口座開設まで終わらせましょう。その後、店舗、事業所、事務所を借りることが出来るようになったら、そちらに本店住所を移すのが良いでしょう。

形式的な自宅住所の利用であるとはいえ、色々なデメリットがあることも事実ですので、ずっと自宅住所というのは避けた方が無難だと思います。

別の場所に事業所を借りられて後も自宅住所を登記上の本店所在地にすることは出来ますが、事業が軌道に乗ってくると、色々と郵便物が届くようになってきて、家族から疎まれることになります。自然と本店住所を事業所に移したくなるとは思います。

本店住所の変更をする際には、登録免許税(3万円)がかかりますが、必要経費と割り切って対応して下さい。


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山口 真導

山口 真導

代表取締役株式会社起業ナビ
中堅・中小ベンチャー企業から上場企業まで幅広い顧客に対して主に経理アウトソーシング事業を提供している。同事業を通じて経営者目線で財務・会計・税務の問題解決ができるCFOの育成・輩出を目指している

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