定款の発行可能株式数を迷わず決められる公式

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株式会社を設立する際には、設立する前に、発行可能株式数を決めなければなりません。

「いきなり発行可能株式数を決めろと言われても、、、、。」

という方の方が圧倒的に多いと思いますが、それでも決めなければ、会社設立を前に進めることは出来ません。

この発行可能株式数を迷わず決めて頂く公式を紹介するのが、この記事の目的です。この記事を読み終わる3分後には、発行可能株式数は決まっているはずです。

1.設立時の発行可能株式数を計算するビズ部式公式

いきなり結論をお伝えすると、下記の公式を使って発行可能株式数の計算をして下さい。

発行可能株式数=1億円÷1株当たり株価

1−1.ビズ部式公式の根拠

この公式の根拠は次のとおりです。

国税庁の統計によると、総企業数のうち、資本金1億円以上の会社の割合は0.9%しかありません。実態として、ほとんどの企業では資本金は1億円は必要ないということです。

一方、上場会社のうち、資本金1億円以上の会社の割合は98%もあります。上場企業の総数は3,536社(証券取引所の統計より)、そのうち52社が資本金1億円未満 (上場企業サーチより)です。

したがって、発行可能株式総数は、設立時には、将来上場を目指す方も目指さない方も、会社設立時点においては、1億円÷1株当たり発行価額としておけば良いという結論を出しました。

1−2.ビズ部式公式の注意点

上場を目指さない方には関係ない話ですが、上記の公式は会社法上の「非公開会社」を前提とした話です(非公開会社については後ほど説明します。)。

上場を目指す方はご存じのとおり、上場する際には、会社法上の「公開会社」である必要があります。その場合、発行可能株式数には、いわゆる「4倍規制」というルールが適用されます。4倍規制とは発行「可能」株式数が発行「済み」株式数の4倍以下になっていなければならない、という規制です。

仮に発行可能株式数をビズ部式公式で計算した場合、資本金が2,500万円以下だと、この4倍規制の違反ということになります。そうなると多くの会社が4倍規制違反ということになります。

しかし、心配する必要はありません。いま上場している会社も、上場前は「非公開会社」です。上場直前に「公開会社」に変更して上場しています。もし、公開会社になる時点で4倍規制に問題があれば、その時に定款を変更して、発行可能株式数を調整すれば良いのです。

つまり、会社設立時は、ビズ部式公式で大丈夫、ということです。

最初に結論を書きましたが、ここからは、ビズ部式設立の裏付けとなる根拠について説明していきたいと思います。

2.発行可能株式数とは

定款に定める発行可能株式数とは、取締役会の決議によって新株が発行出来る株式数の上限数です。厳密には、既に発行している株式数もあるため、取締役会の権限で発行出来る株式数は、次の算式で計算される数になります。

実際に取締役会権限で発行できる株式数=発行可能株式数ー既発行株式数

3.発行可能株式数を定款に定める理由

発行可能株式数を定款に定める理由は2つあります。

  1. 機動的資金調達

  2. 取締役の権限乱用防止

それぞれ説明していきたいと思います。

3−1.機動的資金調達

機動的資金調達とは、資金が必要なときに、すぐに株式を発行して資金調達できるようにする、ということです。

もし、新株発行の権限が株主総会にあるとすると、資金調達をする度に株主総会を開く必要があります。株主総会を開催するためには、原則、総会の2週間以上前に全株主へ招集通知を送る必要があります。一方で取締役会であれば、人数も少ないので、株主総会に比べると遙かに迅速に開催して意思決定することが出来ます。

3−2.取締役の権限乱用防止

一方で、取締役会に権限を委譲したとはいえ、無尽蔵に新株を発行させては、会社を取締役に乗っ取られる可能性があります。例えば、現オーナーが発行済株式の100%の100株持っているケースで、ある取締役に対して10,000株の新株を発行した場合、現オーナーの持株比率は1%未満(0.99%)になってしまいます。

このような事態を防止するために、発行する株式の上限を「発行可能株式数」という風に定めているのです。

4.株式譲渡制限会社(=非公開会社)の場合

定款で株式譲渡制限が定められている、いわゆる非公開会社の場合、発行可能株式数を幾つにするかに関する制限はありません。

会社法第37条

1.発起人は、株式会社が発行することができる株式の総数(以下「発行可能株式総数」という。)を定款で定めていない場合には、株式会社の成立の時までに、その全員の同意によって、定款を変更して発行可能株式総数の定めを設けなければならない。

2.発起人は、発行可能株式総数を定款で定めている場合には、株式会社の成立の時までに、その全員の同意によって、発行可能株式総数についての定款の変更をすることができる。

3.設立時発行株式の総数は、発行可能株式総数の四分の一を下ることができない。ただし、設立しようとする株式会社が公開会社でない場合は、この限りでない。

非公開会社の場合、株式の譲渡制限があるため、仮に株式が会社にとって好ましくない第三者に取得されたとしても、会社に対する権利行使をさせないという対抗策を採ることが出来ます。つまり、取締役会が新株発行権を乱用しても乗っ取りを防止することが出来るということです。

5.公開会社(=株式譲渡制限のない会社)の場合

株式譲渡制限のない、いわゆる公開会社の場合、4倍ルールの適用があります(会社法第37条3項本文)。

公開会社の場合は、株式譲渡制限がありません。したがって、取締役会の新株発行権限の乱用を防止する手立てとして、発行可能株式数を限定的にするしか方法がありません。

機動的資金調達と権限乱用防止のバランスを考えて、現在の会社法では4倍以内という風に定められています。4倍以内であれば自由に設定出来るので、株主が判断して制限の範囲内で、発行可能株式数を設定することが出来るようになっています。

株主が持っている株式の数は議決権に直結します。

株式が無制限に発行されてしまうと、既に株式をもっている株主の議決権が相対的に少なくなってしまいます。株主に損をさせるようなことを、無暗に取締役に許すことはできないので、それを防止するために、4倍ルールというのはあります。

6.まとめ

ビズ部式公式を作成するために、ネットをリサーチしましたが、発行可能株式数について「将来の増資する予定額で決めましょう。」というものが多かったです。

それが分かれば苦労しない。というのが、これから設立する方の悩みどころのように感じました。

ビズ部式公式なら、将来どうなるのかまだ分からなくても、納得の発行可能株式数を決めることが出来ます。

あなたが上場しても上場しなくても、満足出来る定款が出来上がることをお祈りしています。

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山口 真導

山口 真導

過払い税金対策専門税理士株式会社アカウンタックス
中小企業の資金繰りを改善するソフトウェアの開発に失敗し、自社の資金繰りがつかなくなる。その時、利益より資金が大事だとようやく気づく。以来、資金繰りの悩みを節税対策と銀行対策で解決する専門家として活動。中小企業経営者のお金の問題を他人事ではなく自分事として捉え解決している。著書に、起業5年目までシリーズで「資金繰りのキホン」と「節税のキホン」がある。

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