無事に会社設立が終了すると、いよいよ本格的に事業開始となります。
事業開始となれば必要なのが「お・か・ね」です。
その資金が、どこにあるかといえば、 資本金として振り込んだお金が、あなたの個人口座にあるはずです。もう引き出して使ってしまった??という方もいらっしゃるかもしれませんが、会社の帳簿に資本金を載せないわけにはいきませんので、会社はあなたに請求をしてきます。
あなたが社長だから、そんなことはしないかもしれませんが(笑)
この資本金に相当するお金を、どう取り扱い、どう会計処理するのかについて説明をしていきたいと思います。
Contents
1.「資本金」に関してやるべきこと
設立登記が完了した時点では、資本金は発起人(あなた)の個人口座に存在していると思います。
したがって、まずは法人口座を開設して、資本金を法人口座へ移動するところからスタートです。
つまり、
- 法人口座の開設
- 個人口座から法人口座への資金移動
- 会計処理
が皆さんが実施しなければならない作業です。
このうち、法人口座の開設については、「法人銀行口座を最初に2つ開設する理由と手順」に詳しく書いてありますので、そちらで確認して下さい。
この記事では、個人口座から法人口座への資金移動について説明します。
2.個人口座から法人口座への資金移動
個人口座から法人口座へ資金移動する方法は2つあります。
- 個人口座から現金を引き出して法人口座へ預金する方法
- 個人口座から法人口座へ振込によって資金移動する方法
これは資本金に限らず、口座間の資金移動をする際と同じですので、その時も、この記事を参考にして頂けたらと思います。
2−1.個人口座から現金を引き出して法人口座へ預金する方法
この方法は、銀行のネットワークを利用せず、「現金をデリバリー」する方法です。
- 個人口座から現金を引き出します。ATMか支店窓口で手続をします。
- この現金を法人口座のある銀行のATMか支店窓口で預金をします。
この方法のメリットは、銀行のネットワークを利用しないため、手数料がかからないところです。実際に引き出すATMが所属している銀行と利用する時間帯によってはATMの利用手数料がかかるかもしれませんが、振込手数料よりは安いのが普通です。
しかし、一方で、手間と時間がかかるのと、場合によっては、多額の現金を持ち歩かないといけないので盗難や紛失のリスクがあるのがデメリットです。
2−2.個人口座から法人口座へ振込によって資金移動する方法
この方法は、銀行のネットワークを使って、個人口座から法人口座へ電子的に振り込む方法です。
個人口座のATMか支店窓口又はネットバンキングで法人口座への振込手続を行います。
法人口座だからといって特別なことはありませんので、いつもの感じで振込をして下さい。
この方法のメリットは、ネットバンキングを利用すれば、時間をかけずに即座に手続が出来るところです。
一方で、銀行のネットワークを利用するので、振込手数料がかかります。3万円以上の振込の場合756円〜840円かかるのが普通です。
この振込手数料の支払い方には2つパターンがあります。
- 振込手数料は資本金と別途支払うパターン
- 振込手数料と資本金を相殺するパターン
資本金1,000,000円の資金移動で振込手数料が756円かかったとすると、
別途支払うパターンは、法人口座に資本金と同額の1,000,000円が入金されますが、相殺するパターンの場合、法人口座には999,244円しか入金されないということです。いずれも756円は振込元の銀行に振込手数料として支払うのですが、それを資金移動額に影響させるかどうかに違いがあるのです。
2−3.各種手数料は法人負担に出来ます。
2つの方法いずれであっても、発生した手数料(ATM利用料、振込手数料)は法人負担の経費として処理出来ます。
別途支払うパターンの場合は、法人口座から引き落とされる訳ではありませんので、発起人(あなた)が立替払いしたうえで、後日精算という形になります。
3.資本金の会計処理
つぎに、資本金に関する会計処理について説明します。
まず、最初に会計処理の前提となる状況について整理したいと思います。
- 会社設立日において、資本金は発起人(あなた)の個人口座に存在しています。したがって、法人からみると、自社の資金を発起人(あなた)が保有している状態ということになります。
- その後、資本金に相当する金額1,000,000円が個人口座から法人口座へ送金されてきます。この時、法人からみると発起人(あなた)が預かっていた資金が回収されたことになります。この資金移動の際に発生した手数料は法人の経費なので、法人の経費として同時に処理を行います。
それでは具体的に処理を見ていきましょう。
引き続き、資本金1,000,000円の会社設立を前提で説明していきます。
3−1.法人設立日の仕訳
法人設立日には、当然、会社の資本金は存在していなければなりません。しかし、そのお金は発起人から後日送金されてくることになります。したがって、資本金と同時に発起人に対する債権(未収入金)を認識する必要があります。
したがって、資産の増加−純資産の増加という仕訳になります。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
未収入金 | 1,000,000 | 資本金 | 1,000,000 |
3−2.発起人口座から法人口座に入金された日の仕訳
法人口座に資本金相当額が入金されることで、未収入金は消滅します。
したがって、資産の増加−資産の減少という仕訳を行います。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
預金 | 1,000,000 | 未収入金 | 1,000,000 |
資本金10,000,000円の資金移動で振込手数料が756円を相殺されて入金された場合には、未収入金の一部が手数料と相殺されることになります。
したがって、資産の増加+費用の増加ー資産の減少という仕訳を行います。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
預金 | 999,244 | 未収入金 | 1,000,000 |
支払手数料 | 756 |
なお、振込手数料を相殺せず、発起人(あなた)が立て替えた場合には、法人として発起人に対してそれそ支払う義務(債務)が発生することになります。
したがって、費用の増加ー負債の増加という仕訳を行います。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
支払手数料 | 756 | 未払金 | 756 |
3−3.資本金を会社に移す前に使い込んでしまった場合どうなるか?
ちなみに、このケースで既に30万円使ってしまって、会社には70万円しか入金出来ない場合には、未収入金が30万円残ってしまいます。これはいずれ会社に戻して頂くお金になります。戻さない限り、ずっと会社はあなたに対して債権を持ち続けることになります。
あなたが経営者でいる限り真剣に回収することはないのかもしれませんが、早く解消しておくに越したことはありません。なぜなら、こうした経営者に対する債権が残っている決算書は、金融機関の評価がとても低くなるからです。
創業融資の申し込みに行った際に、
「この未収入金を回収したら融資を受ける必要ないですよね」とか
「その分は融資の金額を減額しても大丈夫ですよね」
と言われてしまうということです。
4.資本金は使って良いのか?
最後に、「資本金を使って良いのか」という良くある質問について書かせて頂きます。
結論からお伝えすると「使って良い」です。もっというと「使うためのお金」です。
この質問は、かつて大学で会社法(昔でいう商法)を習った方に多いようです。昔は、資本三原則とかいって、資本金に強い意味を持たせていたので、その頃の残像が邪魔しているようです。
いまは、資本金1円でも会社設立が出来るようになったように、資本金自体に意味を持たせることはなくなりました。
一言でいうと「ただの数字」です。
ですから、「資本金を使って良いのか」などと心配をする必要はないのです。
安心して使って下さい。
山口 真導
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