あなたが毎月払っている自宅の家賃は、消費税込みなのか、消費税抜きなのかを知らない方も多いことでしょう。同じように、あなたの自宅の家賃と、会社の事務所の家賃は消費税法上の取扱は同じなのか違うのかを知らない方も多いでしょう。
今回は、ビズ部式、2ステップの消費税の課非判断フローを使って明らかにしていきます。ぜひ、参考にしてください。
【注】この記事は、公開済みの「消費税の課税・非課税・免税・不課税をわずか2ステップで見分ける方法」を具体的な取引に当てはめて、消費税の課税・非課税・免税・不課税を判定する記事です。判定方法の概要を確認したい方は、上記記事をご参照下さい。
Contents
1.結論
理由は要らないから結論だけ教えて欲しいという方も多いと思いますので、主な家賃や賃料に関する消費税の取扱の結論を先に書きたいと思います。
- 地代(土地の賃料)・・・非課税
- 社宅家賃・・・非課税
- 事務所家賃・・・課税
- 駐車料金・・・(原則)課税
次項から、どうして上記の結論になるのかを解説していきたいと思います。
2.ステップ1:取引を国内取引・国外取引・輸出取引・輸入取引に四分類する
今回、家賃や賃料の判定をするということ以外には条件がついていません。
したがって、ここでは場合分けをして考えることにします。
判定のための図を見ながら考えてみましょう。
まず、今回、判定の対象となる家賃や賃料が、国内で社宅や事務所を借りている場合には、ステップ2に進むことになります。
また、今回、家賃や賃料の判定ということで、社宅や事務所など不動産を対象とすることから、輸出や輸入は出来ませんので、こちらに該当する可能性はないと考えられます。
一方で、海外に社宅や事務所を借りるということはありえます。そちらは、国外取引ということで不課税という扱いになります。
3.ステップ2:国内取引を非課税・課税・不課税に分類する
ステップ1で国内取引と判定された場合、ステップ2で課税・非課税・不課税の判定をすることになります。
3−1.非課税取引に該当しないかを確認
まず、最初に非課税取引のフィルターを通します。
非課税取引は13個あります。これは消費税法に定められたものなので覚えるほか、ありません。
覚えられない人は、「消費税の課税・非課税・免税・不課税をわずか2ステップで見分ける方法」をブックマークしての「3.非課税取引の定義」のところで確認するようにして下さい。
家賃や賃料ということでいうと、13個の非課税取引のうち、2個に該当する可能性があります。
つまり、判定しようとしている家賃や賃料が、土地に関するものの場合や、社宅のように住宅の貸付に該当する場合には、非課税取引になるということです。
逆にいうと、土地に関係せず、社宅でもない家賃や賃料ということになると、課税取引になるのは、事務所家賃や駐車場代金くらいということになります。これらについて、次のフィルターを通してみることにしましょう。
3−2.対価性(反対給付を受けているかどうか)の確認
非課税取引のフィルターの次に通すのが、対価性というフィルターです。
しかし、家賃や賃料の場合、対価性がないということは考えられません。使うことが出来ない事務所の家賃を支払う経営者はいないでしょう。
したがって、事務所家賃や駐車場代金は課税取引という判定となります。
4.消費税法基本通達で念のための確認
2ステップ式で無事に消費税の課税・非課税・免税・不課税の判定を終えることができました。
最後に、より詳細なシチュエーションを別の消費税の判定に関する考え方が消費税法基本通達に示されている箇所がありますので、そちらの一部をご紹介して、この記事を終わりにしたいと思います。
4−1.土地の譲渡及び貸付に関連して
土地のうえに施設を設けて、その施設の利用料として賃料が発生する場合は、非課税にはなりません。建物、野球場、プール、テニスコート、駐車場などが該当します。
消費税法基本通達 第6章 非課税範囲 第1節 土地等の譲渡及び貸付関係
(土地付建物等の貸付け)
6-1-5 令第8条《土地の貸付けから除外される場合》の規定により、施設の利用に伴って土地が使用される場合のその土地を使用させる行為は土地の貸付けから除かれるから、例えば、建物、野球場、プール又はテニスコート等の施設の利用が土地の使用を伴うことになるとしても、その土地の使用は、土地の貸付けに含まれないことに留意する。
(注)
1 事業者が駐車場又は駐輪場として土地を利用させた場合において、その土地につき駐車場又は駐輪場としての用途に応じる地面 の整備又はフェンス、区画、建物の設置等をしていないとき(駐車又は駐輪に係る車両又は自転車の管理をしている場合を除く。)は、その土地の使用は、土地の貸付けに含まれる。
2 建物その他の施設の貸付け又は役務の提供(以下6-1-5において「建物の貸付け等」という。)に伴って土地を使用させた場合において、建物の貸付け等に係る対価と土地の貸付けに係る対価とに区分しているときであっても、その対価の額の合計額が当該建物の貸付け等に係る対価の額となることに留意する。
4−2.住宅の貸付に関連して
住宅も、住宅の賃料とは別の付随している設備の使用料等については課税対象となると定められています。駐車場代込みの住宅の賃料は非課税取引になりますが、これが別々に区分されている場合には、住宅部分のみが非課税で、駐車場部分は課税となります。
消費税法基本通達 第6章 非課税範囲 第13節 住宅の貸付関係
(住宅の貸付けの範囲)
6-13-1 法別表第一第13号《住宅の貸付け》に規定する「住宅の貸付け」には、庭、塀その他これらに類するもので、通 常、住宅に付随して貸し付けられると認められるもの及び家具、じゅうたん、照明設備、冷暖房設備その他これらに類するもので住宅の附属設備として、住宅と一体となって貸し付けられると認められるものは含まれる。 なお、住宅の附属設備又は通常住宅に付随する施設等と認められるものであっても、当事者間において住宅とは別 の賃貸借の目的物として、住宅の貸付けの対価とは別に使用料等を収受している場合には、当該設備又は施設の使用料等は非課税とはならない。(駐車場付き住宅の貸付け)
6-13-3 駐車場付き住宅としてその全体が住宅の貸付けとされる駐車場には、一戸建住宅に係る駐車場のほか、集合住宅に係る駐車場で入居者について1戸当たり1台分以上の駐車スペースが確保されており、かつ、自動車の保有の有無にかかわらず割り当てられる等の場合で、住宅の貸付けの対価とは別に駐車場使用料等を収受していないものが該当する。(店舗等併設住宅の取扱い)
6-13-5 住宅と店舗又は事務所等の事業用施設が併設されている建物を一括して貸し付ける場合には、住宅として貸し付けた部分のみが非課税となるのであるから留意する。
(注) この場合は、建物の貸付けに係る対価の額を住宅の貸付けに係る対価の額と事業用の施設の貸付けに係る対価の額とに合理的に区分することとなる。
山口 真導
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