ある経営者の方から「これから取締役会って何をすれば良いのですか?」という質問を受けました。会社を経営するうえで、実際どのような取締役会の運営をするべきなのでしょうか。
特に今まで取締役会を経験したことの無い方は、実際どんな事をすればいいのかとても分かりにくいと思います。
googleで調べてみると「取締役会が会社法上何をしないといけないのか」といった会社法上求められている最低限のことしか書いてないサイトばかりでした。
しかし、それだけでは足りません。会社を経営するうえで、実際どのような取締役会の運営をするべきなのでしょうか。私の経験からすると、ほとんどの取締役会が同一の流れに沿って運営されています。
ここでは、私が多くの会社の取締役会に参加した経験から、それらに共通する内容をまとめました。これを読んで頂ければ取締役会に関する知識をある程度カバーし、スムーズに取締役会が運営できるようになるはずです。ぜひ、あなたの取締役会の運営時に参考にしてください。
Contents
1.取締役会の式次第
最初に結論からいきましょう。これが取締役会の招集通知のサンプルです。
このような式次第で取締役会は開催されることになります。
以降では、どうして、このような内容を取締役会で行うのかについて、理由を掘り下げていきたいと思います。
2.取締役会の意義
そもそも取締役会は何なのかを知っておく必要があります。
取締役会とは、株主総会で選任された3名以上の取締役で構成される、会社の意思決定機関です。
2006年の会社法改正前までは、全ての株式会社に取締役会がありましたが、改正後は取締役会を設置せず、取締役1人(=代表取締役)でも会社設立出来るようになったため、取締役会のない会社も多数存在します。
しかし、将来上場を目指すということになると、当然のこととして株式の譲渡制限を行わない「公開会社」になる必要がありますので、上場準備に入った段階で取締役会の設置と監査役(監査役会)の設置は必須となります。
なお、本記事の記載は、特に断りがない限り、全て取締役会及び監査役(会)設置会社を前提として記載します。
2.取締役会でやる必要があること
取締役会でやることは次のとおりです。
3−1.取締役会の仕事
取締役会は、会社の業務に関する意思決定を行うと同時に、それに基づく、(代表)取締役の職務の執行を監督します。また、そうした関係上、代表取締役の選解任についても取締役会の専権事項となっています(会社法362条2項、3項)。
(取締役会の権限等)第三百六十二条
1 取締役会は、すべての取締役で組織する。
2 取締役会は、次に掲げる職務を行う。
一 取締役会設置会社の業務執行の決定
二 取締役の職務の執行の監督
三 代表取締役の選定及び解職
3 取締役会は、取締役の中から代表取締役を選定しなければならない。(以下、省略)
しかし、現実に考えてみると、この「業務執行の決定」や「職務の執行の監督」というと、非常に曖昧な書き方です。それぞれの会社の経営スタイルを許容するというと聞こえが良いですが、実際にやるとなると「何をすれば良いのか困るところだと思います。
上場会社や上場を目指す会社が、「業務執行の決定」や「職務の執行の監督」の具体的な手法として活用しているのが、予算実績差異分析です。先ほどご紹介した招集通知の報告事項の 「①○月度予実差異報告(○○)各管掌役員より差異報告(各役員)」がこれに該当します。なんとなく下の方に書いてあって格下のように思われるかもしれませんが、取締役会でやるべきことの中で最も重要な項目です。
予算実績差異分析については、あらためて「4.予算実績差異分析のポイント」で説明します。
3−2.取締役会の権限
会社法上、取締役会の専権事項とされているのは以下の事項です。
■会社法362条4項に定められているもの
- 重要な財産の処分及び譲り受け
- 多額の借財
- 支配人その他の重要な使用人の選任及び解任
- 支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止
- 募集社債の金額その他の社債を引き受ける者の募集に関する重要な事項として法務省令で定める事項
- 取締役の職務執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務の適正を確保するために必要なものとして、法務省令で定める体制の整備(大会社である取締役会設置会社では、法定義務)
- 定款の定めに基づく取締役、会計参与、監査役、執行役または会計監査人の会社に対する責任の免除の決定
■会社法362条以外に定められている主な取締役会決議事項
- 自己株式の取得株数、価格等の決定(会社法157条)
- 株式分割(会社法183条2項)
- 株式無償割当てに関する事項の決定(ただし、定款に別段の定めがある場合は、この限りでない)(会社法186条)
- 公開会社における新株発行の募集事項の決定(会社法201、202条)
- 一に満たない端数の株式の買取りに関する事項(会社法234条5項)
- 公開会社における新株予約権の募集事項の決定(会社法238、240、241条)
- 株主総会の招集の決定(会社法298条4項)
- 取締役による競業取引および利益相反取引の承認(会社法356、365条1項)
- 計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書の承認(会社法436条3項)
(取締役会の権限等)第三百六十二条
(省略)
4 取締役会は、次に掲げる事項その他の重要な業務執行の決定を取締役に委任することができない。
一 重要な財産の処分及び譲受け
二 多額の借財
三 支配人その他の重要な使用人の選任及び解任
四 支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止
五 第六百七十六条第一号に掲げる事項その他の社債を引き受ける者の募集に関する重要な事項として法務省令で定める事項
六 取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備
七 第四百二十六条第一項の規定による定款の定めに基づく第四百二十三条第一項の責任の免除
5 大会社である取締役会設置会社においては、取締役会は、前項第六号に掲げる事項を決定しなければならない。
3−3.取締役会の開催頻度
取締役会は3ヵ月に1回、つまり年4回開催しなければならないことが定められています(会社法363条2項)。
これはあくまでも法律的に求められる最低の要件です。実際には、予算実績差異分析を実効性のあるものにするために毎月開催するのが原則です。
1 次に掲げる取締役は、取締役会設置会社の業務を執行する。
一 代表取締役
二 代表取締役以外の取締役であって、取締役会の決議によって取締役会設置会社の業務を執行する取締役として選定されたもの
2 前項各号に掲げる取締役は、三箇月に一回以上、自己の職務の執行の状況を取締役会に報告しなければならない。
3−4.取締役会の招集権限
取締役会の招集は、各取締役が行うことができます。
ただし、取締役会を招集する取締役を定款または取締役会で定めている場合は、その取締役が招集します(会社法366条)。
取締役会を招集する者は、取締役会の1週間前に各取締役に対してその通知を行う必要があります。この招集期間は、定款で1週間未満の期間を定めた場合はその期間内で招集することも可能です(第368条)。また、取締役の全員の同意がある場合には、招集の手続きを省略することができます(第368条第2項)。
(招集権者)第三百六十六条
1 取締役会は、各取締役が招集する。ただし、取締役会を招集する取締役を定款又は取締役会で定めたときは、その取締役が招集する。
2 前項ただし書に規定する場合には、同項ただし書の規定により定められた取締役(以下この章において「招集権者」という。)以外の取締役は、招集権者に対し、取締役会の目的である事項を示して、取締役会の招集を請求することができる。
3 前項の規定による請求があった日から五日以内に、その請求があった日から二週間以内の日を取締役会の日とする取締役会の招集の通知が発せられない場合には、その請求をした取締役は、取締役会を招集することができる。(招集手続)第三百六十八条
1 取締役会を招集する者は、取締役会の日の一週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前までに、各取締役(監査役設置会社にあっては、各取締役及び各監査役)に対してその通知を発しなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、取締役会は、取締役(監査役設置会社にあっては、取締役及び監査役)の全員の同意があるときは、招集の手続を経ることなく開催することができる。
3−5.取締役会の決議のルールと特別利害関係人の取扱い
取締役会の決議は、取締役の過半数(定款の定めでこれを上回ることができます)が出席し、その過半数(定款の定めでこれを上回ることができます)で行います(第369条)。
決議に関し、特別の利害関係にある取締役は、議決に参加することができません(第369条第2項)。したがって、決議要件の出席取締役の数にもカウントされません。「特別の利害関係にある取締役」というのは、例えば、取締役の経営する会社に会社の事業を譲渡する場合における、当該取締役のように、会社と利益相反の関係にある取締役をいいます。
取締役会設置会社においては、取締役の全員が同意の意思表示を行い、監査役が当該提案について異議を述べない場合など一定の要件を満たした場合に、取締役会を開催しなくても決議が可決されたとみなす定款の定めを設けることが出来ます(会社法370条)。
(取締役会の決議)第三百六十九条
1 取締役会の決議は、議決に加わることができる取締役の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)が出席し、その過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)をもって行う。
2 前項の決議について特別の利害関係を有する取締役は、議決に加わることができない。
3 取締役会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成し、議事録が書面をもって作成されているときは、出席した取締役及び監査役は、これに署名し、又は記名押印しなければならない。
4 前項の議事録が電磁的記録をもって作成されている場合における当該電磁的記録に記録された事項については、法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置をとらなければならない。
5 取締役会の決議に参加した取締役であって第三項の議事録に異議をとどめないものは、その決議に賛成したものと推定する。(取締役会の決議の省略)第三百七十条
取締役会設置会社は、取締役が取締役会の決議の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき取締役(当該事項について議決に加わることができるものに限る。)の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたとき(監査役設置会社にあっては、監査役が当該提案について異議を述べたときを除く。)は、当該提案を可決する旨の取締役会の決議があったものとみなす旨を定款で定めることができる。
3−6.取締役会の議事録の作成と保管
取締役会を開催したら議事録を作成し、取締役会の日から10年間、書面もしくは電磁的記録により本店に備えおく必要があります(第371条)。
(議事録等)第三百七十一条
取締役会設置会社は、取締役会の日(前条の規定により取締役会の決議があったものとみなされた日を含む。)から十年間、第三百六十九条第三項の議事録又は前条の意思表示を記載し、若しくは記録した書面若しくは電磁的記録(以下この条において「議事録等」という。)をその本店に備え置かなければならない。
2 株主は、その権利を行使するため必要があるときは、株式会社の営業時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。一 前項の議事録等が書面をもって作成されているときは、当該書面の閲覧又は謄写の請求二 前項の議事録等が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求
3 監査役設置会社又は委員会設置会社における前項の規定の適用については、同項中「株式会社の営業時間内は、いつでも」とあるのは、「裁判所の許可を得て」とする。
4 取締役会設置会社の債権者は、役員又は執行役の責任を追及するため必要があるときは、裁判所の許可を得て、当該取締役会設置会社の議事録等について第二項各号に掲げる請求をすることができる。
5 前項の規定は、取締役会設置会社の親会社社員がその権利を行使するため必要があるときについて準用する。
6 裁判所は、第三項において読み替えて適用する第二項各号に掲げる請求又は第四項(前項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の請求に係る閲覧又は謄写をすることにより、当該取締役会設置会社又はその親会社若しくは子会社に著しい損害を及ぼすおそれがあると認めるときは、第三項において読み替えて適用する第二項の許可又は第四項の許可をすることができない。
4.予算実績差異分析について
「3−1.取締役会の仕事」で少しご説明したとおり、会社法がいうところの「業務執行の決定」や「職務の執行の監督」の具体的な手法として、予算実績差異分析について説明したいと思います。
取締役会においては、PDCAサイクルのうち、D以外を行います。
2−1.【P】プランニング
プランニングは、主に、予算、事業計画(以下、予算)という形で具現化されます。
「予算を決めること」は、「業務執行の決定」です。なぜなら、ここでいう予算は、「具体的なアクションプランに基づく数値計画」でなければならないからです。
「ただの数字だけの予算」は、実績との比較が、達成したか未達成かの判断にしかならないため意味がありません。しかし、こうした予算の会社の方が圧倒的に多いのが事実です。
予算の作り方だけで、とても長い記事が書けてしまいますので、ココでは簡単に書きますが、少なくとも次のようなステップを踏んで作成するようにして下さい。
まず、財務目標を立てます。仮に利益の額を目標として立てた場合、逆算して売上目標を立てることでしょう。ここで予算の作成が終わってしまうのが、よくある「ただの数字だけの予算」です。
予算作成は、ここからが本番なのです。
この売上目標を達成するために必要なアクションプランを検討します。アクションを起こすということはコストが増えるということです。当初の利益から目標売上を逆算した時に比べてコストが増えるということは、当初の目標売上より高い目標売上を設定しなければならないということです。
この結果、「何をして」「いくらの売上を上げ」「どれくらいのコストをかけて」「いくらの利益を出すか」が決まります。
つまり、取締役会において、予算を承認するということは、このうちの「何をして」ということを確定させることという意味で、「業務執行の決定」の具体的なプロセスの一つということになります。
2−2.【C】チェック
チェックの作業は、予算と実績の比較作業として行います。略して「予実(ヨジツ)」という風に呼びます。
予算と実績の差異分析を行うときに重要なのが、差異の金額の計算で終わらせないということです。
さきほど説明した「ただの数字だけの予算」でも、実績値と比較することは出来ます。しかし、この比較から出てくる差異の額には、ほとんど意味がありません。なぜなら、予算の側にアクションプランが含まれていないので、なぜ、差異が発生したのかの比較検討が出来ないからです。
つまり、予算実績差異の分析の結果は、活動量が足りないのか、アクションの内容がダメなのかの確認にする必要があり、それを可能にするためには、予算の側に具体的なアクションプランがないといけないのです。
このチェックの作業は、経理や経営企画など管理部門が統括し、「各担当部署が実施する」のが原則です。
これを管理部門だけで実施してはいけません。数字の比較が出来ても原因の判断が出来ないからです。
時々、管理部門だけで差異分析をしてそれを会議に報告し、会議の場で現業部門にひっくり返されるということを見ることがあります。それは起こるべくして起きていることです。予算と実績の差異分析は、管理部門と現業部門の仲を悪くするために行うものではありません。
あなたは、共に会社を進むべき方向へ進めていき仲間として仕事が出来るような仕組みを作らなければなりません。その為には、「予算と実績の差異分析は管理部門の仕事→管理部門だけでやれば良い」という発想をすて、管理部門は予算実績差異の主管部門として統括する立場で、現場部門のPDCAサイクルのお手伝いをするということを再確認して頂きたいと思います。
つまり、管理部門の仕事は、各担当部署から上がってきた内容が、課題の核心を突いているかどうかを客観的に判断することなのです。
差異分析の結果が 課題の核心をついていないと、次の項でご説明する改善のアクションプランが課題解決の有効な手段にならない可能性が高くなります。管理部門の役割と立ち位置には充分に注意して下さい。
このチェックの段階が、取締役の「職務の執行の監督」に該当します。
2−3.【A】アクション
このアクションの段階は、再び「業務執行の決定」をするフェーズです。
予算と実績との差異のチェックの結果、活動量が足りないという結論の場合は、活動量を増やすために必要なことを検討します。スタッフの人数が足りないのであれば増員をするか、外注するというアクションもあるでしょう。アクションの内容に問題があるということだと、別のアクションを考える必要があります。
いずれにしても取締役会の場で、改善作業について決定し他の役員に約束する必要があります。 取締役会の場で「検討します。」で終わらせてしまうと、次回の取締役会までは現在の不調な状態が継続してしまいます。
「4−2.チェック」のところで、現業部門でチェックを差異の原因分析を行うことを書きましたが、現業部門はこのチェックの作業と並行して、現業部門としてのアクションプランも決定し、管理部門にフィードバックしておく必要があります。そして、管理部門はこれが客観的に問題無い対策であれば、これを取締役会の予算実績差異の報告資料に盛り込みます。逆に改善のアクションの内容が取締役会メンバーからダメ出しが出そうな内容であれば、現業部門にその旨を伝え、「共に」アクションプランを検討した結果を取締役会に報告します。
予算実績差異分析のポイントだけ書きました。
現実には、「ただの数字だけの予算」でも、例えば「未達成だと社長に叱られる」という理由で、なんとか達成されたり、かなり近い数字になったりすることがありますので、全く意味がないとも言い切れない部分があるのは事実です。
しかし、予算実績差異分析の真のポイントは数字の差異ではなく、その差異の要因となっている事実が何なのかを突き止め改善することにあります。その為に一番大事なのは、プランの段階で「具体的なアクションプランに基づく数値計画」を持っているかどうかに尽きます。このポイントを外さないようにして欲しいと思います。
5.取締役会を進化させる
取締役会を真剣に開こうという話がでるタイミングで多いのが、ベンチャーキャピタルなどの外部株主が入り、社外取締役やオブザーバーとして取締役会に参加するようになるときです。
これら社外の役員がいる面前で、上記のチェックとアクションにまつわる喧々額額の議論をやるべきかどうかという話があります。
ここまで書いた内容でお気づきの方も多いと思いますが、予算実績差異分析を本気で実行すると、かなり激しい議論が交わされることになります。また、社内の人間関係の状況も見るからに理解できてしまいます。つまり、会社の裸を見せるような行為をするべきかどうかという判断が必要になるのです。
また、時間を区切ってやることは重要なものの、結論を出さずに中途半端に終わらせることも出来ない仕事です。そこにゲストをお招きして参加頂くというのも迷惑という話もあります。
5−1.下位の会議体として「経営会議」の導入
そこで、私は取締役会の下位の会議体を一つ作ることを提案します。この記事ではこれを「経営会議」と呼ぶことにします。
経営会議は、エンドレスにこの喧々額額の議論をする場所にします。取締役会は、経営会議の結果を報告する場所にするのです。
取締役会を長くても2時間、通常は1時間で終わるようにしたいと思います。つまり、まず取締役会の議事進行を考えて、そのうえで、経営会議でやることを詰めていきます。
なお、「法的に必要なこと」は必ずやらないといけないので、そちらは優先的に議論することになります。先ほどの招集通知で、予算実績差異分析が報告事項で後回しになっているのはそうした配慮もあるのです。
5−2.取締役会を充実させる「良い意味での形骸化」とは
経営会議の導入は、捉え方によっては、取締役会の形骸化を発生させると見ることも出来ます。
実際に、経営会議を導入することで、取締役会が本当の意味で形骸化している場面に遭遇したこともあります。しかし、取締役会では、最高意思決定機関に相応しい議論に特化するという、良い意味での形骸化を目指して頂きたいと思います。
経営会議に出席した取締役にとって取締役会は、単に経営会議の結果を報告する場所ではなく、経営会議の結果意思決定された改善に向けたアクションを社外取締役を含めた取締役会出席者全員にコミットする場所です。経営会議の場で、社外取締役に対してそのアクションプランをコミットできるのかを現業部門の長たる取締役に確認をし、それを取締役会で報告するというプロセスが、アクションプランのより確実な実行を担保するものになります。
そうした意識をもって、経営会議のやり方と取締役会のやり方とを峻別し、参加する取締役がそれを理解することで、有意義な取締役会が成立します。
6.取締役会でやるべきことのまとめ
あらためて冒頭でご紹介した招集通知を見てみましょう。
取締役会では、次の流れで議論を進めていきます。
- 法的に必要なことの決議
- 会社の内部ルールで必要なことを決議
- 報告事項
しかし、一番大事なことは、報告事項に含まれている予算実績差異分析です。これは、取締役会の職務の柱である、「業務執行の決定」と「職務執行の監督」に該当するからです。
以上で、取締役会でやるべきことは終了です。今回も長文にお付き合い頂き、ありがとうございました。
山口 真導
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